サムスンが7月に実施した受託製造価格の引き上げでは、同じプロセスでも顧客の所在地によって上げ幅が変えられていたことが明らかになりました。加えて、値上げは8nmにも及び、Nintendo Switch 2などの製造コスト増につながる見通しです。
サムスンが4nm~8nmの製造価格を引き上げへ
サムスンの4nmプロセスは歩留まりが安定し、NVIDIAやIBM、Baiduなどの大口顧客を獲得してきました。その結果、4nmの製造枠は2027年まで埋まっており、7月には新規顧客向けの値上げも伝えられていました。
ロイターが2人の関係者の話として伝えたところによると、7月の新規発注分の値上げ幅は、4nm(SF4)が中国・米国向けで前月比10〜15%、台湾向けで5〜10%、5nm(SF5)は10〜15%とのことです。古い世代の8nmも1割弱上がっており、値上げは先端プロセスにとどまっていません。
このうち最も大きな上げ幅を受け入れているのは中国の顧客とされています。米国の規制で先端の製造装置を輸入できない中国企業は、高性能なチップを海外のファウンドリーに頼るしかなく、サムスンへの需要が特に強いためです。
一方のサムスンは、平沢(ピョンテク)工場の4nmラインがQualcommなどの顧客向けチップと自社のHBM4用ベースダイで埋まっており、2月の値上げ通知で理由として挙げていた生産能力の限界は、少なくとも4nmでは事実です。そのうえで米国顧客への供給と自社チップの枠を優先し、中国からの注文を受けきれていないとのことです。上げ幅の地域差は、この交渉力の差をそのまま映しているとみられます。
なお、サムスンのファウンドリー事業は2022年から年度の赤字が続いていましたが、6月に単月ベースで3年ぶりの黒字へ転じています。加えて、値上げや枠も埋まっていることから、BNK投資証券のLee Min-hee(イ・ミンヒ)氏は同事業が早ければ来年にも年度ベースで黒字化を達成しうるとみています。
8nmは1割弱の上昇。Nintendo Switch 2のコスト増に直結へ
Nintendo Switch 2のチップはサムスンの8nmで製造されているとされ、この製造プロセスの安さが発売時の49,980円という価格を支える一因でした。しかし、任天堂はメモリ価格の高騰や為替など市場環境の変化を理由に、5月25日から59,980円へ改定しています。
その8nmには、2月の時点で4nmとあわせて約10%の値上げが通知されていました。今回の上昇はこの通知にほぼ沿う水準で、7月の新規発注分から実際の見積もりに反映された形です。ただ、任天堂とサムスンの契約条件は非公開のため、本体の原価にいくら効くのかまでは分かりません。
任天堂は原価を下げる動きも進めており、液晶ではシャープ製への切り替え観測が浮上しています。一方、チップはNVIDIAのカスタム設計のため、液晶のように調達先を替えることも難しくなっています。加えて、Nintendo Switchなど過去世代で用いられていた、先端プロセスへ移行してダイサイズ縮小でコストを下げる手法も、先端プロセスのコスト上昇や生産枠の逼迫から難しくなっています。そのため、サムスン8nmの値上げは任天堂にとって逃げ道のないコスト増になります。
決算はソフトが利益を押し上げ。少なくとも年度内の再値上げは回避?
Nintendo Switch 2のコスト増が懸念される一方で、4〜6月期はソフト販売が利益を押し上げており、ハードの販売台数は発売月を含む前年同期比で34.4%減の382万台だった一方、ソフトを含むゲーム専用機ビジネスの売上は13.1%減にとどまりました。これにより任天堂全体の営業利益は前年同期比で約2.5倍の1,425億円へ伸びており、ハードの採算悪化をソフトが吸収しています。
そのため、任天堂としてはソフトによる吸収が効いていることに加え、ハードの普及が重要な時期でもあることから、Nintendo Switch 2を少なくとも年度内に再値上げする可能性はあまり高いとは言えません。ただ、サムスン8nmの値上げによってメモリ高騰に加えてチップ側でもコスト増を受けることは確実で、来年度以降もNintendo Switch 2が価格を維持できるかは未知数と言えます。


