コンピューター用メモリのGB単価が、2007年当時とほぼ同じ水準まで逆戻りしていることが明らかになりました。数十年にわたって続いてきた値下がりのうち、およそ20年分がこの数か月で消えた計算です。
20年分の値下がりを消したのはAI向けHBM。供給は年20%増、需要は年200%増
DRAMの価格は、製造プロセスの微細化と世代交代を重ねるたびにGB単価を切り下げ、数十年にわたりほぼ一貫して下がり続けてきました。この長期トレンドが崩れたのは2025年秋以降で、AI向けデータセンターの需要拡大を起点に、自作PC向けのDDR5も短期間で急騰しています。
こうした値動きを長期データで確かめたのが、ケベック大学TELUQのコンピューターサイエンス教授Daniel Lemire氏です。同氏が2026年8月5日にXへ投稿した比較によると、メモリのGB単価は2007年当時とほぼ同じ水準にあり、技術製品の価格が数十年前の水準に戻った例は思い当たらないとのことです。この先の値動きは誰にも予測できないとしつつ、メモリ価格が再び下がるには、これほど多くのメモリを使わない新しいAIの仕組みを見つけるか、より多くのメモリを速く生産できる方法を見つけるかのどちらかになると同氏は推測しています。
「2007年水準」の中身は海外の最安掲載価格
「2007年水準」の根拠は、スタンフォード大学の研究プロジェクトが公開している価格データです。各時点で最も安く買えるメモリの1GBあたり価格をドル建てで記録し続けているもので、メーカーと大口顧客の間の契約価格や市場全体の平均ではなく、いわば店頭の最安値の推移を追った数字です。
このデータの直近の値では、DDR5のGB単価は11.41〜13.28ドルで、DDR2が11〜15ドルで売られていた2008年とほぼ同じ水準に戻っているとされています。当時と現在の物価差を補正した場合でも、DDR3が同水準だった2011年まで戻る計算です。
メモリを減らすか増産するかの2つの出口は塞がったまま
Lemire氏が挙げた2つの出口は、どちらも短期には開かないとみられます。このうち需要側では、SK hynixのCFOが2026年4月の時点でメモリ効率化技術はむしろ需要を拡大させる方向にあるとの見解を示しています。供給側では、2027年分の供給枠は配分交渉を終えて完売しており、コンシューマー向けに回る量は要望の6〜7割にとどまります。
国内のDDR5 32GB(16GB×2)も、2026年8月8日時点の最安値は59,085円で、90日間の変化率は+0.14%とほぼ横ばいです。中央値ベースでは半年前の2月からむしろ約4.7%下がっています。安価な代替として期待されがちな中国CXMT製についても、同社はAppleからの値下げ要求を拒否しており、大手3社と同等以上の単価を提示している以上、値下がりの材料にはなりません。
ただ、この横ばいが続く保証はなく、店頭価格は大口調達価格を3〜6か月遅れて追う構造のため、7月時点で指摘された卸値の上昇分がこれから店頭価格に反映される余地も残っています。半年続く踊り場の一方で、値下がりにつながる材料は見当たりません。
DDR5メモリに加え、グラフィックカードやスマートフォンでもメモリ価格が本体価格に影響するため、購入を予定しているなら、下がるのを待つより今の価格帯で早めに確保しておく方が無難といえそうです。


