Windowsの動作が遅い原因を、性能の記録を読み込ませたAIへの質問で突き止められるツールを、Microsoftが試験公開しました。
Windowsの性能記録を読むのに要った専門知識をAIが肩代わり
Windowsには、OSやアプリの動作を細かく記録するETW(Event Tracing for Windows)という仕組みが標準で組み込まれており、出力される.etlファイルを解析ツールのWPA(Windows Performance Analyzer)で読み解けば、遅さの原因を突き止められます。ただ、どの表を開き、どの列を見て、どの時間範囲へ絞り込むかを知らなければ答えにたどり着けず、Microsoft自身も性能解析が専門知識に依存している状態だとしています。Windows 11の品質改善を今秋から一般提供する取り組みが進む一方で、個々のPCの遅さを調べる作業は、依然として一部のエンジニアの仕事でした。
この敷居を下げるため、Microsoftは2026年7月21日にETW MCP、7月30日にWPA MCPという2つの連携ツールをプレビューとして公開しました。MCP(Model Context Protocol)はAIがツールを呼び出すための共通規格で、記録の処理自体はWPAと同じTraceProcessorエンジンがローカルで行い、AIは整形された結果の解釈だけを受け持つため、生の記録をモデルへ流さずに回答を実際のデータへ紐付けられる設計です。想定利用者にはドライバー開発者やハードウェアエンジニア、性能検査を自動で回すチームが挙げられており、Windows 11を立て直す社内計画を進めるMicrosoftは、性能問題の原因究明を社内の手作業から社外の担い手へ開こうとしているとみられます。
現行プレビューでは、CPU時間を多く使うプロセスの特定、2つの記録の差分比較、処理を遅らせている経路をたどるクリティカルパス解析などに、質問だけで対応します。Microsoftが示した実行例では、端から端まで約2,500msかかる処理のうちハードウェア初期化が1,278msを占め、ディスクI/Oもネットワーク通信もゼロで、スレッドはデバイスドライバーの応答待ちで止まっていました。ソフトウェアの最適化余地ではなく、デバイスが低電力状態から復帰するまでの待ち時間が遅さの正体だったケースで、こうした切り分けを1回の質問から始められます。
入手にはサブスクリプションや実行環境などの条件あり
WPA MCPは、Microsoft Storeで配布されるプレビュー版のWPAに組み込まれており、画面上のボタンからGitHub Copilotへ質問する形で使います。現時点で対応するのはGitHub Copilotのみで有効なサブスクリプションが必要となり、他のAIアシスタントは利用できません。
一方のETW MCPはNuGetパッケージ「Microsoft.Windows.EventTracing.MCP」として配布され、実行に.NET 10 SDKが必要な代わりに、MCPへ対応したAIアシスタントであれば組み合わせを選びません。
ただし、Microsoft自身がAIの回答は実行のたびに変わり、不完全または誤りを含む場合があるとして、最終的な診断ではなく調査の出発点として扱い、元の記録と突き合わせて検証するよう求めています。また、どちらも現時点ではプレビュー段階で一般提供の時期は示されていないため、いま試すのであれば、WPAの画面で使うならGitHub Copilotの契約、ターミナルで使うなら.NET 10 SDKの用意が、それぞれ最初の条件になります。


