メモリ価格高騰を中心とするコスト上昇の影響が低価格帯のPCに集中しており、今後は業界全体で安価な構成向けと高性能向けにCPUソケットが分かれる可能性があるとの見方を、Intelの幹部が示しました。
メモリ高騰のしわ寄せは低価格帯に集中。ソケットを分ける動きが業界全体に広がる可能性
DRAMとNANDの高騰はPC本体の価格を押し上げていますが、その打撃は価格帯によって偏っており、市場では8万円以下のエントリー向けPCが2028年までに消滅するとの予測も出ています。自作市場でもDDR4が使えるRaptor Lakeへ需要が集中しているように、少しでも安く組める構成へ買い手が流れる動きが続いています。
こうした状況について、Intelでエンスージアスト向けチャネル事業を統括する副社長のRobert Hallock氏は、市場がはっきり二つに割れていると指摘しています。同氏によると、自由に使える予算が多い層は業界で起きているコスト増を吸収できる一方、それ以外の大半はコスト増を許容できないため、ローエンドとメインストリームは大きな打撃を受けているとのことです。ただ、エンスージアストやプレミアム市場はそれほど悪くなく、機器のクラスによってはプラス成長になっている可能性もあると述べています。
この二極化は決算の数字にも出ており、Intelの直近四半期ではクライアント部門の売上が前年同期比13%増となった一方、出荷台数は減少しており、平均販売価格の上昇が売上を押し上げました。Intelによると、平均販売価格上昇の大半はプレミアム製品の比率が高まったことによるもので、コスト上昇を相殺するための価格措置も一部寄与しています。CFO(最高財務責任者)のDavid Zinsner氏も決算説明会で、コスト上昇分を最終顧客へ転嫁する必要があったと説明しています。AMDも2四半期連続で、ゲーミング部門の売上減少の要因として部品コストの上昇を挙げています。
安い選択肢を残さなければ、その価格帯自体が消える
Hallock氏は、エントリーとメインストリームを圧迫しているサプライチェーンや上流のコストが近いうちに和らぐとは見ておらず、デスクトップで事業を続けるなら、どのメーカーもプレミアム用とメインストリーム用のソケットを持つことになるとの見方を示しています。これはIntelだけの話ではなく業界全体に当てはまる見方で、製品構成のどこかで妥協して実際に手が届く選択肢を用意しなければ、その選択肢は価格的に成立せず消えてしまうとのことです。
Intelはすでに二本立て。AMDはAM5一本を2029年まで維持
実際にIntelでは、DDR4を使える側として2027年上半期にLGA1700向けの追加リフレッシュが投入されると報じられている一方、DDR5前提のLGA1954ではNova Lakeが2027年1月以降にCore Ultra 400として発売されるとみられています。Hallock氏はLGA1700とLGA1954を明示していませんが、こうした製品展開は同氏が示したソケット分岐の考え方と整合する構図です。また、Nova Lakeのような製品は現在の市場においてあらゆる層に応えることはできないと、同氏自身も述べています。
一方のAMDはAM5のサポート期間を2029年まで延長すると発表しており、少なくとも現時点で新たにソケットを二分する方針は表明していません。ただ、2016年に投入されたソケットAM4向けにもRyzen 7 5800X3Dが再投入されるなど、AM4の販売も継続しており、旧ソケットと現行ソケットを併売する形で低価格帯の選択肢を残しています。
そのため、少なくとも当面は、コストを優先してDDR4を使えるLGA1700やソケットAM4を選ぶ構成と、DDR5を前提とするLGA1954やソケットAM5を選ぶ構成が併存し、価格帯によってプラットフォームが分かれる傾向が強まると考えられます。


