米国民の71%がデータセンターを自宅近くに建設することに反対していることが、Gallupの世論調査で明らかになりました。同じ調査では原子力発電所の建設に反対する割合が53%にとどまっており、データセンターは原発を18ポイント上回る反対率を記録しています。建設反対の広がりは許認可プロセスの長期化を招くため、NVIDIAやMicrosoftなどAIハイパースケーラー各社が進めるGW級データセンター計画のスケジュールにも影響が及ぶ可能性があります。
米国民の71%がデータセンター建設に反対。原発を上回る反対率に
反対率71%という数字は、Gallupが2001年に原発に関する同種の調査を始めて以降、原発反対率の最高値である63%すら8ポイント上回る水準です。AIインフラ需要を背景に安定電源としての原発再評価が進んだ結果、現在の原発反対率は53%と歴史的に低い水準まで下がっていますが、それでもなおデータセンターは原発以上に嫌われる結果となりました。安定電源として原発が再評価される一方で、その需要源であるデータセンターは原発以上の反発を受ける逆転現象が起きています。
Washington Postの報道によると、データセンター建設に対する反発は全米で強まり続けており、許認可手続きや公聴会が激しい議論の場となっています。実際に、69の自治体がモラトリアム(建設一時停止措置)を制定しており、建設を承認した議員が辞任したり、反対派により次々と落選するケースも増えています。
電気料金高騰と環境負荷が反対世論を後押し
反対運動が急拡大した最大の要因は、データセンターの増設に伴う電気料金の高騰です。米国ではデータセンター需要により卸電力価格が最大267%も上昇しており、一般家庭や中小企業の電気代を押し上げています。メリーランド州はPJM Interconnectから州外データセンター向けインフラ整備費として20億ドル(約3,200億円)の負担を求められていることを米連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提訴するなど、自治体レベルでも反発が顕在化しつつあります。電気料金以外にも、大気汚染や水資源の大量消費、騒音や低周波音による健康影響への懸念も指摘されています。
政治対立も先鋭化。AIハイパースケーラーは郊外シフトへ
反対運動の激化は、一部地域では政治家への物理的な攻撃にまで発展しています。インディアナ州ではデータセンター建設を支持した政治家の自宅に13発の銃弾が撃ち込まれ「データセンター反対」のメッセージが残される事件が発生したほか、ユタ州では9GW規模のデータセンター計画を支持した上院議員が取材中の記者の携帯端末を叩き落とす場面も報じられています。
こうした状況を受け、AIハイパースケーラー各社は市町村レベルの承認プロセスを回避するため、郡管轄の未組み込み地域(unincorporated land)にデータセンターを建設する戦略にシフトしつつあります。ホワイトハウスも大手AI企業を集めてAIインフラ整備コストを「自社負担で進める」よう約束させていますが、これは法的拘束力を持たない声明にとどまっており、住民感情の沈静化には至っていません。なお、こうした対立はTSMC Arizona工場やIntel Ohio工場など半導体製造拠点の誘致でも見られたパターンですが、データセンターは半導体製造拠点と比べて雇用創出効果が限定的なため、住民にとって誘致のメリットを実感しにくいという問題を抱えています。
日本でも千葉県印西市では駅前のデータセンター計画に対し、市長・市議会や超党派の議員が反対決議を採択しているほか、流山市では住民反対で計画が撤回、日野市では「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」が抗議集会を実施するなど、首都圏各地で反対運動が広がっており、米国に近い対立が日本でもすでに表面化しているといえそうです。

