AI GPUの中国への流出が問題になっているNVIDIAが、東南アジアでNVIDIA Cloud Partner(NCP)の認定を求める顧客に、GPUの位置を記録できるFleet Intelligenceへの登録を義務付けたとのことです。NCPになれば最新のAI GPUを優先して回してもらえるため、任意のはずの登録が事実上の条件になります。
NVIDIAが東南アジアのNCP認定にGPUの位置記録を義務付け
NVIDIAのFleet Intelligenceは、約1年前の2025年12月に登場したデータセンター向けGPUの管理ソフトで、GPUの稼働状況とあわせて、GPUが物理的にどこにあるかも記録できます。ただ、利用は任意で、利用者が自らデータセンターに導入するソフトのため、NVIDIAがすべての顧客のGPUの位置を自動で受け取れるわけではありません。
そんな中、Bloombergが関係者の話として伝えたところによると、NVIDIAは東南アジアで、自社が認定するクラウド事業者のNVIDIA Cloud Partner(NCP)になろうとするすべての顧客に、任意だったFleet Intelligenceへの登録を条件として課しているとのことです。
NCPの認定を受けると、NVIDIAのお墨付きを得られるほか、需要の大きい最新のAI GPUを優先して回してもらえるため、事業者にとって登録は断れない条件になります。ただ、すでにNCPの認定を受けている企業も登録が必要になるのか、東南アジア以外にも広げるのかは明らかになっていません。
なお、NVIDIAは今年に入り、販売を事前に承認していたアジアの買い手のリストから半数を外したほか、クラウド事業者には計算資源の半分以上を中国の顧客に貸さないよう求めています。
Supermicro共同創業者が東南アジア経由のGPUサーバー密輸の疑いで逮捕
米国は、中国企業がNVIDIAの最上位のAI GPUを許可なく買うことを禁じています。ただ、米当局は中国企業が東南アジアの密輸網を通じて数十億ドル分を手に入れたとみています。そのため、NVIDIAが買い手の危険信号を見落としたとして、不満を示しています。
3月には、Supermicroの共同創業者が、NVIDIAのGPUを積むサーバー約25億ドル(約3,900億円)分を東南アジアの仲介業者経由で中国へ流した疑いで逮捕されました。書類の偽造や中身のないサーバー筐体を使い、検査を終えたあとで本物を送っていたとされています。
シンガポールのMegaspeed Internationalは、2023年の設立から1週間でNCPの認定を受けた企業ですが、米国とシンガポールの当局から1年以上調べられています。このMegaspeedとの取引について、NVIDIAのJensen Huang CEOは最近「まったく普通」とし、同社に配備されたGPUをすべて調べて1台ずつ数えたと説明しています。
一方、東南アジアのデータセンター運営会社2社は、GPUがどこにあるかについてのNVIDIAの説明に異を唱えています。そのため、NCPの認定を位置の記録と結び付けたのは、配備したGPUの数を顧客の申告に頼らず、NVIDIA自身が記録で示せるようにするためとみられます。
GeForce RTX 5090など高性能GPUも対象になる可能性も
中国で見つかる通常版のGeForce RTX 5090は、大半が海外の店頭で一般向けに売られたカードを中国へ持ち込んだものだと、MSIが2025年10月の声明で明らかにしています。そのため、利用者が自ら導入するFleet Intelligenceでは、データセンターに登録されたGPUは追えても、こうして持ち込まれるRTX 5090の流れには届かないとみられます。
中国の業者によるRTX 5090の買い集めは、輸出規制を受けずに中国へ売れるRTX PRO 5500が中国の受注の約1%しか当面届かない間は続くとみられます。そのため、データセンター向けの締め付けが進んでも、国内のRTX 5090の品薄は和らがない見通しです。
一方、米国では、輸出規制の対象になる高性能チップに出荷前の位置確認を求めるChip Security Actが、2026年3月に下院の外交委員会を42対0で通過しています。この法案は対象にデータセンター向けだけでなく、ゲーミング向けでも高性能なRTX 5090のようなモデルは入るとみています。
そのため、今後、この法案が成立すれば、データセンター向けに転用できるRTX 5090や、2028年とされる次世代のGeForce RTX 6000シリーズの最上位モデルには、ドライバーなどで利用国の位置を推定する仕組みが投入される可能性もあります。


