Intel Arc B580 が海外で売り切れ続出。売っても赤字のため出荷量を絞っている可能性も

Intel Arc B580 が海外で売り切れ続出。売っても赤字のため出荷量を絞っている可能性も

Intelが2024年12月に発売したArc Battlemage世代のミドルレンジモデル、Arc B580はRTX 4060を超える性能でありながらも、販売価格は$249とRTX 4060を15%ほど下回る設定だったことから発売後のレビューでは軒並み高評価を獲得しています。そのため、特に手ごろな価格で購入が可能なアメリカや欧州では販売直後に売り切れるという状況が発生しているのですが、そもそもこのArc B580については出荷量が少ないほか、Intelにとって収益性があまり高い製品ではない可能性があるようです。

Arc B580はIntelのリファレンスモデルであるLimited Editionが最安値となる$249.99で販売されており、そのほかのAIB製モデルも最安値は$259.99とRTX 4060と比べて競争力のある価格で販売されていますが、発売1日が経過した段階でNeweggでは既に売り切れてしまってる状況です。また、Microcenterではオンラインショップでの販売在庫は無く、店舗受け取りのみ、BestBuyではそもそも掲載されていないなど在庫状況がすこぶる悪い様子が明らかにされています。

Moore’s Law is Deadが各量販店関係者から集めた情報によると、Arc B580については総じて出荷量が少ない様子で、GeForce RTX 3090発売時の在庫状況より悪いとのことです。一方で、顧客からの問い合わせはかなり貰えているとのことで、このままの在庫量が続けばRadeon RX 8000シリーズなどが発売された際には販売に悪影響を与える可能性が高いとのことです。

また、一部量販店ではメーカー希望小売価格（MSRP）で発売できるモデルが入荷されなかったり、既に売り切れている量販店では入荷がいつ行われるのかが明らかになっていないなどレビューなどで高評価を獲得し、販売拡大に繋がるチャンスをIntelは逃してしまっている状況になっています。

なおIntel関係者から入手した情報によると、リファレンスモデルのArc B580 Limited Editionに関してはArc Alchemist世代の半分程度の出荷量に抑えられているとのことで、その原因は売っても赤字になる価格設定にあるようで、Intelはグラフィックカードのイメージアップを狙ってかArc B580ではかなり挑戦的な価格設定を行っていると言えそうです。

低い収益性の原因はダイサイズが大きい割に安すぎるArc B580

Arc B580に搭載されているBMG-G21 GPUはTSMC 5nmで作られており、合計196億個のトランジスターを持ち、1mm2辺り7200万のトランジスターを持つことでダイサイズは272mm2程度のサイズになっています。

ただ、このダイサイズに関してはかなり巨大で、Arc B580の競合でもあるGeForce RTX 4060搭載のAD106 GPUは159mm2になっており、BMG-G21は1.7倍近いダイサイズになっています。

GPU	ダイサイズ	販売価格（北米MSRP）
Arc B580 (BMG-G21)	272mm2 (TSMC 5nm)	$249
GeForce RTX 4060 (AD106)	159mm2 (TSMC 5nm)	$299
Radeon RX 7600 (Navi33)	204mm2 (TSMC 6nm)	$269

ダイサイズの大きさは歩留まりやウェハー1枚あたりから取れる有効なチップ数に大きく影響し、ダイサイズが小さいほどコストが下がります。そのため、このArc B580に関してはより高い価格で売られているRTX 4060よりコストが高い一方で、販売価格は安く設定されているため、IntelとしてはArc B580を売っても利益がほとんど出ないか、リークの通り若干赤字になっている可能性があります。

Intelが赤字ギリギリの価格設定をしている背景としては後発メーカーであるため収益を重視するより、イメージアップを狙っている可能性や今後のコストダウンを見越してシェアを取りに行く姿勢である可能性がありますが、Intelの決算が非常に悪い中この流れをどこまで続けられるのか不明と言えます。

一方、シェアを取りに行く姿勢であれば2025年後半に登場すると言われているArc B770などハイエンドモデルでも非常に高いコストパフォーマンスにも期待できると言えますので、IntelのArc Bシリーズの今後の動向には注目が集まりそうです。