DDR5メモリの価格が年初と比べて3倍以上に跳ね上がる中、ASRockとTeamGroupが共同で新規格「HUDIMM(Half-Unbuffered Dual In-line Memory Module)」を発表しました。通常のUDIMMに対してメモリチップの搭載数を半減させる設計で、DDR5の低価格化を実現する切り札として期待されています。
HUDIMMとは? DDR5メモリの新規格と通常UDIMMとの違い
HUDIMMはASRockとTeamGroupが共同で開発し、2026年4月17日に発表されたDDR5メモリの新規格です。名称は「Half-Unbuffered DIMM」の略で、従来のUDIMM(Unbuffered DIMM)に対してメモリモジュール内部の構成を半分に簡略化することで、製造コストを抑えることを目的としています。現時点ではASRockが特許を出願中となっており、Intelの600/700/800シリーズチップセット向けにBIOS対応が提供開始されています。
HUDIMMが登場した背景
DRAM価格は2025年後半以降、AI向けデータセンター需要の急増を主因として高騰が続いており、DDR5メモリの販売価格は年初と比べて3倍以上に値上がりしています。この影響はエントリー向けの自作PCやビジネス向けPCの導入コストを押し上げ、DDR4からDDR5への移行を阻むほか、販売台数自体も大幅な減少に繋がっていました。
こうした状況を受け、DDR5を普及価格帯で維持するための手段として登場したのがHUDIMMです。IntelのPC向け事業部門の責任者、Robert Hallock氏も、同規格を普及価格帯でのDDR5維持に不可欠な技術と位置づけるコメントを寄せています。
通常のUDIMMとの構造的な違い:サブチャネル数とチップ数が半分
HUDIMMと通常のUDIMMとの最大の違いは、モジュール内部のサブチャネル構成にあります。
現行のDDR5 UDIMMは1モジュールあたり2系統の独立した32bitサブチャネル(合計64bit)を備える設計となっており、1枚挿しでも技術的にはデュアルチャネル動作となる構造です。この設計は高い帯域幅を確保できる一方で、DRAMチップの実装数が多くなるため、製造コストを押し上げる要因にもなっていました。

これに対し、HUDIMMはサブチャネル構成を1×32bitの片側のみに簡略化しています。帯域幅とモジュール容量はそれぞれ半分に縮小される一方で、実装に必要なDRAMチップの数も半減するため、部材コストと組み立てコストの両面でコスト削減効果が見込める仕組みとなっています。
UDIMM混在時は単体UDIMMを上回る性能を発揮
HUDIMMは1枚あたりの帯域幅が半減する点が懸念材料となりますが、ASRockによると通常のUDIMMとの混在構成を取ることで実効性能を確保できるとのことです。

同社が公開したテスト結果では、8GBのHUDIMM(1×32bit)と16GBのUDIMM(2×32bit)を組み合わせた24GBの非対称構成が、24GBのUDIMM 1枚構成よりも高いスループットと低いレイテンシを示したとされています。これは非対称構成であってもHUDIMM側の1サブチャネルとUDIMM側の2サブチャネルを合わせて3系統のサブチャネルが有効となり、UDIMM単体よりも多くのチャネルでメモリアクセスを行えるためです。
そのためエントリー向け用途では、高価な大容量UDIMMを1枚購入するより、安価なHUDIMMと既存のUDIMMを組み合わせる方が低コストかつ高性能となるケースがあり得ることになります。
対応はIntel環境のみ。ノートPC向けHSODIMMも展開予定
HUDIMMの現時点での課題として、対応プラットフォームがIntel環境に限定されている点が挙げられます。ASRockはIntel 600/700/800シリーズチップセット搭載マザーボード向けにBIOS対応を提供開始していますが、AMDプラットフォームでの対応については現時点で明らかにされていません。
また、ASRockはデスクトップ向けHUDIMMに加えて、ノートPCやミニPC向けSO-DIMMのチップ数半減版にあたる「HSODIMM」も展開する方針を示しており、SO-DIMM環境でも低コスト化の恩恵を受けられる見通しとなっています。
なお、ASUSも類似のアプローチを独自に検証しており、ROG Maximus Z890 Apexマザーボード上でDDR5メモリの接点の半分をテープで物理的に塞ぐことで、48GBではなく24GBとして認識させる実験を公開しています。現時点ではASUSがTeamGroupとの提携やHUDIMMへの正式対応をアナウンスしているわけではありませんが、同社がこうしたアプローチを独自に検証していることから、今後他のマザーボードメーカーが追随する可能性もありそうです。
DRAMメーカー主導ではない値下げ策という異例
通常、DRAMなどの規格はJEDECによる標準化を通じて行われますが、今回ASRock・TeamGroup・Intelの3社協業という形で独自規格が策定されるのは異例の事態と言え、メモリ不足が今後も解消しないことを示唆すると言えます。
ただ、このHUDIMMはあくまで使用チップ数を減らす設計であり、DRAMそのものの値下げを実現する技術ではありません。そのためHUDIMMが「救世主」として機能するかどうかは、マザーボードメーカーやメモリメーカーがどこまで対応を広げられるか、そしてAMD環境を含むエコシステム全体に波及するかにかかっています。仮にHUDIMM対応がIntel限定のままであれば、規格の分断によってDDR5全体の普及がかえって遅れるリスクも抱えています。
なお、HUDIMM準拠製品が店頭に並ぶまで時間を要する見通しのため、すぐに入手することはできません。しかし、今後Intel 600シリーズまで遡ってBIOSサポートが提供されることが明らかにされているため既存のIntelユーザーは安価にメモリを拡張することが可能になるほか、新たにPCを組む場合も価格を抑えて組むことが可能になるかもしれません。

