Windows 11の実験ビルドで、処理を速くするIntelの拡張命令「APX」を有効にする設定が見つかりました。ただ、APXに対応するのは2027年に発売が始まる見通しのNova Lake以降のCPUで、現行のCore UltraやRyzenには対応していません。
Windows 11の実験ビルドに、Intel APXを有効にする設定が登場
IntelのAPXは、CPUが計算中の値を置いておく汎用レジスターを、2003年に64ビットのx86 CPUが登場してから続いてきた16本から32本に倍増する拡張命令です。Nova LakeがこのAPXに対応することは、2025年11月にIntelが公開した資料で明らかになっています。
そんな中、10月23日(米国時間)にInsider向けに配信されたWindows 11のビルド29695.1001で、APXを有効にする設定が導入されていることが明らかになりました。このビルドは、最も早い段階の開発版を配るExperimental(Future Platforms)チャネルのもので、Microsoftはこのチャネルの変更を、特定のWindowsのバージョンに向けたものではないとしています。
Here is how the new "Advanced Performance Extensions (APX)" setting would appear on compatible hardware on 29695 https://t.co/o5wrhnruJH
— Xeno (@XenoPanther) October 23, 2026
Windows InsiderのXeno氏が公開した画像では、設定アプリの「開発者向け」に「Advanced Performance Extensions (APX)」の項目があり、性能を上げるためにWindowsでAPXを使うという説明が付いています。既定ではオフで、オンにすると再起動を求められます。この画面はAPXに対応するCPUを積んだPCでの表示とされ、CPUがAPXに対応していない現行のCore UltraやRyzenのPCでは、Windowsを更新してもこの設定は使えません。
APXはメモリへの読み書きを減らして高速化。利用にはアプリの再コンパイルが必要
APXでは、16本の汎用レジスターに置ききれずにいったんメモリへ書き出し、後で読み戻していた計算途中の値を、32本に増えたレジスターに置いたまま計算を続けられます。Intelの試算では、整数演算のベンチマーク(SPEC CPU 2017 Integer)で、APX向けに作ったコードは従来のコードと比べてメモリからの読み込みが10%、メモリへの書き込みが20%以上、命令の数が10%減ります。
ただ、増えたレジスターはAPXの新しい形式の命令でしか使えないため、効果を得るにはアプリをAPX向けにコンパイルし直す必要があります。Intelによると、ソースコードは書き換えなくてもよく、JavaScriptやPythonのような動的言語では、実行環境がAPXに対応すれば、アプリを作り直さなくても恩恵を受けられるとのことです。コンパイラーでは、MicrosoftのVisual C++が5月からAPXへの対応を試験的に始めています。
Nova Lakeの発売に向けたWindowsの準備か。アプリは少しずつ対応へ
アプリがAPX向けに作られていても、増えたレジスターの中身はアプリを切り替えるたびにOSが保存・復元する必要があるため、AVXやAVX-512と同じく、OSが有効にしない限りAPXは使えません。設定が見つかったFuture Platformsは、カーネルの大きな作り替えなど、リリースまで準備に時間のかかる変更を試すチャネルのため、Microsoftは2027年1〜3月とされるNova Lakeの発売に向けて、Windows側の対応を先に整え始めたとみられます。
一方、APX向けに作ったコードはAPXの命令を持たない今のCPUでは動かず、APXを使えるPCも当面はNova Lake搭載機に限られます。そのため、多くのアプリは従来版を残したままAPX版を加える形で少しずつ対応し、効果が出やすいのは実行環境の対応だけで済む動的言語の処理になると考えられます。
Nova Lakeの発売時点のベンチマークにはAPXの効果がほとんど出ず、購入後にWindowsやアプリの対応が進むにつれて、性能を発揮する場面が増えていきそうです。


