AMDが需要低迷でEPYCの生産量削減。予想が外れるとRyzenの供給量が減る?

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EPYC Genoaは、最大96コアと192スレッドを搭載し、5nmのZen 4ベースにしたCPUで高い処理性能を持つ事からサーバー・データセンター市場において高いシェアを獲得する傾向が見られていますがサーバー・データセンターの全体的な需要が低下する事でAMDはEPYC Genoaについて生産量を削減すると予測されています。

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AMDがEPYC Genoaの生産量削減へ。サーバー向け全体需要低迷もAMDのシェアは増える見通し

AMD Reportedly Cuts Down 5nm “EPYC Genoa” Wafers To 30,000 Units Due To Low Server Demand (wccftech.com)

AMDでは最大96コアを搭載するEPYC Genoaを2022年に発売し、1コア辺りの性能が高く、消費電力も従来モデルや他社に比べると低い事からサーバー・データセンター向け市場において好調な売り上げを記録しているようですが、サーバー・データセンター市場全体の需要が景気後退により低下している事でAMDはこのEPYC Genoaについて生産量削減を検討しているようです。

この情報は中国の半導体業界のアナリスト、手机晶片达人氏が自身のWeiboに投稿した内容で『AMDが2023年第2四半期の5nm Genoa CPUのウェハ供給量を3万枚に減らした』とのことです。

AMDが元々計画していたウェハ供給量自体は不明ですが、TSMC 7nmを利用していた際はAMDがZen 3全モデル向けで月間3万枚のウェハー供給を受けていたという話があります。そのため、AMDのEPYC Genoaが最大12個のCCDを搭載する事を考えると、2023年第二四半期だけでウェハー3万枚と言う数字は非常に少ない供給量と言えます。

AMDとしてはサーバー・データセンター向け製品が世界景気に敏感に反応する事から悲観的な見方をしている一方で、もし予想に反して需要が回復すればEPYC Genoaの供給は大きく制限される事にもなります。

一方で、サーバー・データセンター向けの全体需要は低迷する中でAMD製のサーバー・データセンター向け製品が選ばれている割合は増えていくようで、DigiTimes Researchによると、AMDは2023年に20%のサーバー市場シェアを獲得すると述べています。DigiTimesのアナリストによると、GenoaとBergamoを含むEPYC CPUが、2022年中に77.0%から約70.9%に低下するIntelの市場シェアに食い込むと予想しています。

ここ数年、AMDとArmはサーバーCPU市場でIntelに追いつきつつあります。データセンターのオペレーターやサーバーブランドは、IntelよりもAMDやArmの方が優れていることに気付き始めています。そのため、AMDが獲得したシェアは2022年に大きく伸びています。特にサーバー業界に焦点を当てたDIGITIMES ResearchアナリストのFrank Kung氏は、2023年にはAMDのシェアが20%を大きく超え、Armは8%になると予測しています。

AMDのCPUはコア数が多いため、サーバー環境に最適です。コア数が多いほど、より多くのサービスを提供することができます。AMDは2022年に最大96コアを搭載したEPYC Genoaを発売し、2023年には最大128コアを搭載したEPYC Bergamoを発売する予定です。一方のIntelに関しては、2023年に発売されたSapphire Rapidsは最大60コアに留まっています。

DigiTimes Research

サーバー・データセンター市場は景気に敏感な市場とも言え、利上げによる金利急騰と景気後退懸念がある中で新たな設備投資を見送る企業が増えています。そのため、これらの製品の全体需要は低迷するという見方が主流ですが、最近流行りのChatGPTなどAIによってサーバー・データセンター向けの設備投資が進むという話もあります。NVIDIAが発表した2023年2月から4月の売上高見通しでは、AI向けの需要が増えるとの見方を示しており、コンシューマー向けPCの需要減を補うだけの強い需要があることを予測しています。

そのため、今回AMDの悲観的な予測に反して、サーバー・データセンター向けの需要が維持または増えることとなれば、ウェハーが足りなくなる可能性があります。AMDとしては、機会損失または損失をカバーするために、コンシューマー向けRyzenで使われる予定のウェハーをEPYC向けに転用するという可能性があります。

AMDの収益の柱でもあるEPYCの生産量を削減するという事はそれだけサーバー・データセンター向けの需要が落ちていると考えられます。

実際に、これらの販売または採用する企業についてはここ数ヶ月で大規模なレイオフ(解雇)を進めています。例えばサーバー・データセンター向け製品を販売するDellが6650人、EPYCをデータセンターに採用するGoogleが1.2万人、Amazonが8000人、Salesforceも8000人とIT大手で立て続けに大規模なレイオフが行われています。

これらの企業では、人件費削減だけでなく、新規の設備投資も抑制されるのが確実であり、そうなればAMDの最新鋭CPUの導入などは先延ばしまたは中止される可能性が高く、AMDではこの状況に対応するためにEPYCの減産に踏み切ったと考えられます。ただ、この需要予測が外れ、第3四半期などに景気が急激に持ち直した場合、すぐにEPYCの増産とは行かず、2020年から2021年に発生したRyzen 5000の品不足の時のように、既にオーダーしているウェハーの割り当てをコンシューマー向けから収益が取れるEPYCなどに割り当てる可能性があります。そのため、もし2023年夏から秋頃にPCの新調でAMD製CPU搭載で検討している人は、AMDのデータセンター向け製品の売上高や世界景気の動向に少し関心を向けておいた方が良いかもしれません。

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この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
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