グラフィクスカード (GPU) の発火の原因と予防策を解説。特に RTX 5090 は注意が必要
NVIDIAのGeForce RTX 4090から投入されたグラフィックカード用の新電源コネクターは通称16ピンコネクターと呼ばれていますが、正式名称は『12VHPWR』または『12V-2×6』と言い従来のPCIE8ピンに比べて多くの電力を小型化されたコネクターで供給できることから基板サイズの縮小やケース内でのケーブル取り回しなどが大幅改善していると言うメリットがあります。一方で、この新コネクター投入後にグラフィックカードやケーブル側のコネクターが溶損してしまうと言う不具合が発生しているため、ここではその原因や予防策について解説していきます。
『12VHPWR』と『12V-2×6』の違い
グラフィックカードに備わっている16ピンコネクターの正式名は『12VHPWR』または『12V-2×6』と呼ばれていますが、初期に登場したのが12VHPWRで、そのあと改良が加えられたものが12V-2×6と呼ばれる規格になっています。
この16ピンコネクターは電力を供給する12ピンとケーブルの接続状況を監視する4ピン(Senseピン)で構成されていますが、12VHPWRに対して、12V-2×6ではこのSenseピンの長さが0.25mm短くなっており、コネクターを完璧に接続しない限り電力が供給されないようになっています。これが12VHPWRと12V-2×6コネクターの大きな違いになっています。
12VHPWR / 12V-2×6で発生した溶損原因
12VHPWRおよび12V-2×6で発生した溶損原因はすべて特性されていませんが、NVIDIA含めて溶損原因と考えている事象があります。
16ピンコネクターが中途半端に接続されている
NVIDIAのGeForce RTX 4090が発売された後に、新たに搭載された12VHPWRが溶損すると言う問題が数件発生し、NVIDIAは調査に乗り出しますが最終的にはテック系YoutuberのGamers Nexusが溶損の再現が出来た事案が16ピンコネクターをロックされていない中途半端な状態で差し込むと言うものです。

このように接続すると電流が不均等に流れるほか、コネクター内のピンも接触面積が極めて少なくなることから発熱がしやすく最終的にコネクターが高温となり溶損に繋がると言うものです。
GeForce RTX 4000/5000シリーズの電源設計に問題?

GeForce RTX 5090発売後にはコネクターの接続を完璧にしたとしても溶損すると言う事例が複数登場していましたが、どの原因としてRTX 4000シリーズ以降で用いられている電源設計に問題があると言う指摘があります。Actually Hardcore Overclockingがまとめた動画によると、RTX 3090など比較的消費電力が大きかったグラフィックカードでは電力供給が行われる6ピンの内、2ピン毎に電流分布が均一になるよう抵抗器が備わっていたとのことです。しかし、RTX 4090やRTX 5090では6ピンすべてがまとめて1つまたは2つのシャント抵抗器に繋がれる設計に変更されているとのことです。この変更により、例えばケーブルの損傷やコネクターとの接触不良により電流バランスが崩れた場合でも残りのケーブルに必要な電流が流れてしまい、最終的にコネクターやケーブルの溶損や発火に繋がる可能性があるようです。
500Wもの電力が流れることによる余裕の不足
GeForce RTX 4090ではコネクターを完全接続していなかったことが原因と見られており、コネクターの完全接続をするよう周知徹底が行われてからはコネクター溶損の報告は減ってきていました。
しかし、RTX 5090が発売されてからは再び発生し始めていますが、その主な原因として考えられているのがケーブルのスペックに対する余裕のなさです。GeForce RTX 5090では定格では最大575Wの電力を使うとされており、PCIe x16から75Wが供給されることを考えると500Wもの電力が16ピンコネクターに流れることになります。
そのため、高負荷時にはコネクターの温度が高くなりやすいほか、エラーに対するマージンが非常に小さいため製造上の不具合やユーザーエラーの余地がなく、溶損と言う事態が発生してしまう可能性があるようです。特に、この余裕の無さと、電流を均一化する機構を持たない電源設計が合わさることで不具合やユーザーエラーの余地はさらに無くなるなど安全率がかなり低い状況と言えます。
特に注意が必要なグラフィックカード
グラフィックカード | GeForce RTX 5090 | GeForce RTX 5080 SUPER (噂) | GeForce RTX 4090 |
---|---|---|---|
TGP (消費電力) | 575W | ~450W | 450W |
12V-2×6が溶損してしまう原因の1つとして安全マージンの低さがあると考えられていますが、特に注意が必要なのが消費電力を大量に使うグラフィックカードです。例えば最新鋭の最上位モデル、GeForce RTX 5090では575W、RTX 4090では450W、そしてまだ発売されていませんがリークで噂されているRTX 5080 SUPERも450Wとかなり高めの消費電力で動作することが予測されています。
このようなグラフィックカードを使っている場合は流れる電流値も大きく、不具合やユーザーエラーがあれば発熱や溶損と言った不具合が発生する確率が高いと言えます。一方で、RTX 5080やRTX 5070など400W以下で動作するグラフィックカードについてはこのような不具合に遭遇する確率はあまり高くないと言えます。
グラフィックカードを守るためにできる対策
GeForce RTX 5090やRTX 4090など消費電力が大きいグラフィックカードは非常に高価で自宅と財布の安全を守るためにできる対策を紹介します。
コネクターを奥までしっかりと差し込む
12V-2×6は構造上、6ピンの内、繋がっていない部分があれば必要な電流が残りの繋がっている配線に流れてしまいます。そのため、コネクターを奥までしっかり差し込みこのような接触不良を防ぐ必要があります。
また、12V-2×6コネクターを繋げた後にSSDの取り付けや取り外しなどでケーブルに触るなどした際にはコネクターの間に隙間が出来ていないか、または外れてしまっていないかなど入念に確認した方が良いです。
ケーブルの配線に注意する(根本で曲げない)
12V-2×6コネクターの根本に負荷がかかると接触不良に陥る原因になります。そのため、12V-2×6コネクターは無理に曲げないことが大事です。実際に、電源メーカーのSeasonicではコネクター部分から最低35mmはケーブルを曲げないことを推奨しているため、グラフィックカードを購入する前に寸法を測る時や、購入後のケーブルレイアウトではこの点を考慮する必要があります。
高品質な90度変換アダプターや大型PCケースを検討する
使っているPCケースやグラフィックスカードの大きさ的に12V-2×6コネクターを極度に曲げる必要がある際には、あらかじめコネクター部分が曲げられた90度変換アダプターやケーブルレイアウトに自由度がある大型なPCケースに買い替えるなども方法として考えられます。
『2025年版』各社グラフィックボードの保証期間や延長保証まとめ
なお基本的12V-2×6コネクターの溶損はメーカーの基本保証の対象となるため、もしGeForce RTX 5090などを購入する場合は保証期間が長いモデルを購入するといいかもしれないです。
コメント
コメント一覧 (6件)
Youtubeでコネクタをしっかり差し込んでもケーブル2本だけ10A以上流れて150℃になってる動画があったので、しっかり差し込めば大丈夫とは限らないですね。
コネクタやケーブルの初期不良や経年劣化の場合、しっかり差し込んでも燃える可能性があります。
確実なのは、コネクタ接続後に負荷をかけて+12Vのケーブルを一本づつクランプメーターで電流値を確認して、電流が不均一になっていないか確認することでしょうね。
クランプメーターは3000円以下で買えるので、1つは持っておいた方が良いかもしれません。
600Wもの大電力を、たった12Vの電圧(最大50A)で送ろうとしているのがそもそも間違いとしか…
> たった12Vの電圧(最大50A)で送ろうとしている
24V送電はネットのあちこちで議論されているけど、24Vで送ったら今度は12Vに降圧させるためのレギュレーターがビデオカード上に必要となり、現実問題としてあまり上手い解決法にならないところが、いとわろし。
経年劣化でリスクも高くなるからそろそろケーブル交換したいけど互換性確認が面倒すぎる。AMD環境にする為組み替え中に2年半使った4090の電源接続部を詳しく目視したけどくすみも溶解もなかった。
ただ経年劣化は目に見えないところでしてるはずだからマジで質のいいケーブル欲しい
信頼できる電源を使い、8pin変換をしない。がスタートラインな気がする。。
> 質のいいケーブル
銅線より、OFCやLC-OFCの方が音質が良いそうです。(をひをひ)