Intel懲りず。Arrow Lake-SのCPU温度は最大105℃に変更。動作クロックは最大5.7 GHzに
Intelは2022年に発売した第13世代Raptor Lakeと、2023年に発売したRaptor Lake Refreshにおいて、CPUの動作が不安定になるなどの不具合に見舞われました。この不具合の原因の一つとして、CPUが高温時にも動作クロックを上げ続けることが挙げられています。このため、CPU温度が高すぎるとシステムに負担がかかることが分かります。しかし、Intelは2024年秋以降に投入予定のArrow Lake-Sについて、CPUの最大許容温度であるTJMax値をRaptor LakeおよびRaptor Lake Refreshよりも高く設定することを検討しています。
TJMax for Arrow Lake and Panther Lake is 105C.
— Jaykihn (@jaykihn0) July 15, 2024
Lunar Lake retains the previous 100C.
TJMax値は「Temperature Junction Max」の略で、CPUが許容する最大温度を示します。Intel製CPUでは、この温度を超えないように動作クロックを制限するサーマルスロットリングが行われます。
Intelの過去のCPUでは、TJMax値は最大100℃に設定されていましたが、Jaykihn氏によるとArrow Lakeからこの値が最大105℃に変更されるとのことです。
この変更により、Arrow Lakeはより高温での動作が可能となり、パフォーマンスが向上すると言えます。ただし、Arrow Lake-Sはタイルアーキテクチャーや3D積層パッケージングのFoverosを使用して製造されるため、シンプルな構造だったRaptor Lake系に比べて高温には弱い構造です。実際に高負荷時に105℃上限まで使う設定となれば、Raptor Lakeの不具合を知っているユーザーは不安を感じるかもしれません。
高めのTJMax値を設定することで動作クロックも高くなりそうですが、Arrow Lake-Sの最上位モデルであるCore Ultra 9 285Kでは、P-Coreは最大5.7 GHz、全コア動作時は5.4 GHzに設定され、E-Coreは全コア動作時には4.7 GHz、Ring Busは4.6 GHzに設定される見込みです。
先代のRaptor Lake Refresh最上位モデルCore i9-14900K(KSは除く)は、P-Coreは最大6.0 GHz、全コア動作時は5.7 GHz、E-Coreは4.4 GHzに設定されているため、Arrow Lake-S世代のCore Ultra 9 285KではP-Coreの動作クロックは0.3〜0.4 GHz低下するものの、E-Coreは0.3 GHz向上します。
Raptor Lake系不具合の原因の一つとして疑われているRing Busの速度については、Raptor Lakeのデフォルト値4.5 GHzから4.6 GHzに設定される見通しであるため、Raptor Lakeより高いRing Bus速度が期待されます。
IntelのRaptor Lakeでは、高負荷時に100℃のTJMaxを目標にブーストし続けるため、常に高温で動作することがありました。Arrow Lakeでも電力効率より性能を重視した場合、TJMaxを目標にCPUがブーストし続け、高負荷時には105℃で動作する可能性があります。しかし、Raptor Lake系の不具合原因が明確でないため、原因次第ではこの温度が再度下げられる可能性もあります。
動作クロックは新プロセスによりArrow Lake-Sでは5%低下していますが、IPC向上によりクロック低下分を補い、性能面ではCore i9-14900Kを上回ると予想されます。
補足情報
Intel Arrow Lake-SはIntelが2024年下半期に投入を予定している次世代CPUのデスクトップ向けモデルになります。CPUはMeteor Lakeから採用されたタイルアーキテクチャーを活用し、CPU側はTSMC 3nmまたはIntel 20Aで製造され、CPUのアーキテクチャーは新規開発されたLion CoveとSkymontを搭載する事で省電力性とパフォーマンスの両立を図ると言われています。なお、デスクトップ向けではLGA1700からLGA1851に変更されるため、マザーボードの買い替えが必須となります。
製品ジャンル | メーカー | 製品名 | 発売予定時期 |
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CPU | Intel | Core Ultra 200 (Arrow Lake-S) | 2024年10月終わり |
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