新しいコンピューターを選ぶ際にCPUが重要な役割を果たす事は周知の事実ではありますが、搭載されているCPUのモデルだけ見ても初見で『Ryzen 7 5800X3D』や『Ryzen 9 7950X』など何が違うのかよくわからないと思います。そこで今回は、AMDのRyzen CPUの型番が一体何を意味しているのかを紹介していきます。
新・旧で異なるRyzenの型番形態
ここでは2017年以降に発売されたRyzenから採用されている型番について紹介をしますが、この型番は2022年後半から登場するCPUからは新しい型番の形態になる事がAMDより発表されています。
そのため、ここでは2017年から2022年前半までに登場したRyzen CPUの型番を【旧形態型番】、2022年後半以降に採用されるRyzen CPUの型番を【新形態型番】として紹介します。
旧形態のRyzen CPUの型番
まず、2022年9月27日から発売されるRyzen 7000シリーズなど2022年現在、市場に出回っているほぼすべてのAMD製CPUで採用されている旧形態の型番について解説していきます。
サンプルとして挙げるCPUはデスクトップ向けのRyzen 9 7950Xを使用します。
Ryzen 9 | 7 | 9 | 50 | X |
ブランド名 | CPUの世代 | ブランド | SKU | バリアント |
ブランド名:Ryzen 9 7950X
冒頭に来る『Ryzen 9』や『Ryzen 5』『Athlon』などの名前はCPUのブランド名を示しています。車で言うと三菱『ランサーエボリューション』や『アウトランダー』など車種に当たります。なお、ブランド名と数字の2桁目はリンクしており、Ryzen 9であれば、2桁目も基本的には9となります。
なお、AMD製CPUでは、コンシューマー向けではRyzenとAthlonの2モデルが存在しています。
ブランド名 | 2桁目 | |
RyzenはAMD製CPUの主力ブランドで、Ryzenの後に続く数字が大きいほど同じ世代の中では性能が高いモデルとなります。 | ||
Ryzen 9 | 9/8* | 最上位のフラッグシップモデル。同じCPU世代の中で最も高い性能を求めるユーザー向けで高解像度の動画編集から重いゲームなど高負荷な作業に最適なモデル。価格は最も高く10万円を超えるモデルも存在。
*ノートPC向けのみ2桁目が8となるRyzen 9が存在。 |
Ryzen 7 | 7/8** | ハイエンドモデルで、Ryzen 9ほどの性能ではないが高性能。高解像度の動画編集から重いゲームなど高負荷な作業にも対応できる。価格は5~8万円ぐらい。
**デスクトップ向けのみ2桁目が8となるRyzen 7が存在す。 |
Ryzen 5 | 5 | ミドルレンジモデルで標準的な解像度での動画編集やゲームに対応可能。価格は3~5万円で多くのユーザーにオススメできるモデル。 |
Ryzen 3 | 3 | 性能が高めのエントリーモデル。デスクトップ向けCPUであれば軽めのゲームもプレイ可能だが、最近はパーツ単品で販売される例が少ない。(主にBTO向け) |
Athlon | 1 | エントリーモデル。Microsoft Officeやブラウジング程度であれば動作はするが、重い作業には向かない。価格は1~2万円。デスクトップ向けモデルはBTO向けのみで一般販売は行われていない。 |
PCを選ぶ際に、4Kの動画編集や最新のゲームを最高設定で行いたい場合などはRyzen 9またはRyzen 7が選択肢となり、コストを抑えつつ動画編集やゲームを遊びたい場合はRyzen 5がオススメとなります。なお、Ryzen 7000シリーズではゲームで重要なシングルコア性能がRyzen 5でも高められているため、ゲーミングPCを組む予定であればRyzen 5で十分満足の行くパフォーマンスとなると考えられます。
『9月27日発売』AMD Ryzen 7000シリーズの仕様と予約在庫情報
CPU世代:Ryzen 9 7950X
モデル名の後に付与されている数字、上1桁はCPUの世代と言い表せる場合もあります。ただ、AMDはこの1桁目の命名法則が適当で、同じ数字でもCPUアーキテクチャーが異なる場合があるなど注意が必要です。
また、逆に数字が1つ上がったからCPUアーキテクチャーが刷新されるという訳では無く、同じCPUアーキテクチャーであるものの、デスクトップ向けアーキテクチャーとノートPC向けアーキテクチャーベースでこの数字が1変わる場合があります。(Ryzen 1000/2000、Ryzen 3000/4000など)
なお、このカオスな命名法則はRyzen 5000シリーズ以降はCPUアーキテクチャーが同じであればデスクトップ向けとノートPC向けで同じ数字になるように改められています。
CPU世代 | CPUアーキテクチャー | コードネーム | 発売年 |
1 | Zen | Summit Ridge(デスクトップ向けのみ) | 2017年3月 |
2 | Zen | Raven Ridge(ノートPC向けアーキテクチャーベース)* | 2018年2月 |
2 | Zen+ | Pinnacle Ridge(デスクトップ向けのみ) | 2018年4月 |
3 | Zen+ | Picaso(ノートPC向けアーキテクチャーベース)* | 2019年6月 |
3 | Zen2 | Matisse(デスクトップ向けのみ) | 2019年7月 |
4 | Zen2 | Renoir/Lucienne(ノートPC向けアーキテクチャーベース)* | 2020年7月 |
5 | Zen 3 | Vermeer(デスクトップ向け)
Cezanne(ノートPC向けベース) |
2020年10月 |
6 | Zen 3+ | Rembrandt(ノートPC向けのみ) | 2022年1月 |
7 | Zen4 | Raphael(デスクトップ向け) | 2022年9月 |
SKU:Ryzen 9 7950X
SKUとはStock Keeping Unitと呼ばれており、同じブランド内においても様々な製品が存在しています。その時にこのSKUを利用して、ブランド内での性能を区分けするのに利用できます。
一般的にはこの数字が大きいほど高性能であり、同じ世代、同じブランドのCPUでこの数字の大小を比べる事で大まかなにどちらの方が高性能であるかが判断できます。
なおこの数字は末尾に来るバリアントが同じ場合有効で、異なるバリアント間では比べられません。
例 :Ryzen 9の場合、性能はRyzen 9 7900X<Ryzen 9 7950Xとなります。
バリアント:Ryzen 9 7950X
各CPUの末尾についているアルファベットの事で、主に消費電力≒TDPで分けられています。
末尾のアルファベット | 機能・説明 |
アルファベットなし | デスクトップ向けの標準モデル。TDPは65W台 |
X3D | デスクトップ向けに3D V-Cacheを搭載するモデル。キャッシュ容量が通常モデルに対して64~128MBほど増量され、ゲーミング時のパフォーマンスが向上する。 |
X | デスクトップ向けの高性能モデル。TDPは最大175Wで大多数のモデルが105W台。 |
G | ノートPC向けアーキテクチャーをデスクトップ向けに転用したもの。ノートPC向けベースのため、内蔵グラフィックスを搭載。 |
HX | ノートPC向けでTDPが50Wを超える超高性能モデル。主に超高性能なゲーミングノートやクリエイター向けノートPCワークステーションに採用 |
HS | 薄型ノートPC向けでTDPが35W台の薄型向けの高性能モデル。主に薄型なゲーミングノートやクリエイター向けノートPCに採用 |
H | ノートPC向けでTDPが45W台の高性能モデル。主にゲーミングノートやクリエイター向けノートPCに採用 |
U | ノートPC向けでTDPが15~28Wのモデル。標準的なノートPCにはこれらが搭載されている。 |
新形態のRyzen CPUの型番
新形態のRyzen CPUの型番はデスクトップ向けのRyzen 7000シリーズ以降に登場するCPUから採用される予定で、2023年以降に発売されるノートPCなどではこの新形態型番を採用したRyzenが採用されると見られています。
なお、ここでは2023年以降に発売されるノートPC向けCPUのRyzen 5 7640Uを例に解説します。
Ryzen 5 | 7 | 6 | 4 | 0 | U |
ブランド名 | モデルイヤー(登場年) | SKU | CPUアーキテクチャー | 同一SKUの際に性能差を示す | フォームファクター・消費電力 |
ブランド名:Ryzen 5 7640U
こちらは旧形態のものと変わらず、Ryzen 9が最高性能となり、Ryzen 5はミドルレンジ、Ryzen 3がエントリーです。なお、このブランド名と数字の2桁目はリンクしており、以下の通りになっています。
数字 | SKU |
x1xx | Athlon Silver |
x2xx | Athlon Gold |
x3xx | Ryzen 3 |
x4xx | Ryzen 3 |
x5xx | Ryzen 5 |
x6xx | Ryzen 5 |
x7xx | Ryzen 7 |
x8xx | Ryzen 7/9 |
x9xx | Ryzen 9 |
モデルイヤー(登場年):Ryzen 5 7640U
1桁目はCPUのモデルイヤー(登場年)を指すようで、2023年に登場したCPUであれば7、2024年であれば8と1年毎に数字が進むようです。なおこれが発売日ベースで決まるのか、発表日ベースで決まるのかなど詳細は不明です。
CPUアーキテクチャ:Ryzen 5 7640U
CPUアーキテクチャは旧形態の際には一目でわかる状態ではありませんでしたが、新形態では型番内にCPUアーキテクチャが明記されるようになりました。
3桁目の数字 | CPUアーキテクチャ |
1 | Zen1 / Zen+ |
2 | Zen2 |
3 | Zen 3 / Zen 3+ |
4 | Zen4 |
5 | Zen 5 |
同一SKUの際に性能差を示す:Ryzen 5 7640U
4桁目に関しては1~3桁目までが同じだが、性能的に差がある場合、0または5の数字で性能の上下を表すようです。
フォームファクター・消費電力:Ryzen 5 7640U
末尾のアルファベットにはCPUが想定するフォームファクターや消費電力を表現するようです。
末尾のアルファベット | フォームファクター・消費電力 |
HX | TDP 55W+で現行のHXと同じく超高性能なノートPC向けCPU |
HS | TDP 35Wとなり、薄型ゲーミングノートやクリエイター向けノートPCを想定したCPU |
U | TDP 15~28Wの超薄型ノートPCやタブレットなどを想定したCPU |
C | TDP 15~28WでChromebook向けに機能を落としたCPU |
e | TDP 9W台のファンレスPCを想定したCPU |
新形態のRyzen型番については、現時点ではノートPC向けを焦点にAMDでは発表していますが今後2023年以降に登場するデスクトップ向けCPU、例えばZen4X3DやZen 5ではこの新しい型番が付与されるため、特にフォームファクター・消費電力を示す末尾のアルファベットに関しては旧形態に存在していた無印/X/X3Dなどが追加されると考えられます。
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