アメリカが中国向けグラボ規制をさらに強化。GeForce RTX 4090 DとNVIDIA H20が規制対象に
アメリカではAIに必要不可欠な高性能グラフィックカードについて、中国が軍事研究などに使う可能性を懸念し一定以上の性能を持つ場合は輸出が規制されています。この規制は2022年から開始され、当初はHopper H100などデータセンター向けグラフィックスカードのみを対象としていました。
しかし、NVIDIAにとって中国は重要市場であることから、規制範囲内に性能を抑えたHopper H800など投入するが、アメリカ政府がさらに規制強化、ついにはコンシューマー向けのGeForce RTX 4090も規制対象となり、NVIDIAはGeForce RTX 4090 Dを中国市場専用として投入しました。
しかし、アメリカ政府もこのNVIDIAの動きをさらに封じ込めたいのか、2024年3月末にグラフィックカードの輸出規制に関して、規制される性能についてさらに引き下げらる事が決定しました。
For all destinations, except those countries in Country Group E:1 or E:2 of Supplement No. 1 to part 740 of the EAR, no license is required (NLR) for computers with an “Adjusted Peak Performance” (“APP”) not exceeding 70 Weighted TeraFLOPS (WT) and for “electronic assemblies” described in 4A003.c that are not capable of exceeding an “Adjusted Peak Performance” (“APP”) exceeding 70 Weighted TeraFLOPS (WT) in aggregation, except certain transfers as set forth in § 746.3 (Iraq).
アメリカ合衆国商務省
この新しい規制では70TFLOPsを超える性能を持つコンピューターおよびコンピューター部品については規制対象に含めると記載されています。
この70TFLOPsに引き下げられることで規制に抵触する製品はNVIDIAが2023年末から販売されているGeForce RTX 4090 Dと2024年6月に投入が予定されているNVIDIA H20 GPUが挙げられます。
GeForce RTX 4090 Dは浮動小数点演算性能が73.54 TFLOPs、NVIDIA H20は72 TFLOPsで新たな規制案で設定されている70 TFLOPsを上回っているため、これらのグラフィックカードについては2024年4月4日より中国への輸出は規制されることになります。これによりNVIDIA H20はお蔵入りにもなります。
なお、NVIDIAのライバルであるAMDも高性能なデータセンター向けGPU、Instinct MI300Xを中国向けにカスタマイズしたInstinct MI309 GPUを準備していましたが、こちらは許可すら下りなかったと言われており、アメリカ政府もNVIDIAやAMDなどの企業に不利益を与えようと、規制を強化していく方針なのは間違いなさそうです。
NVIDIAのやり方は商売とは言え、このような規制が導入される趣旨を無視した行動であるため、アメリカ国務長官などもキレていました。ただ、それでも懲りずにRTX 4090 DやHopper H20などを投入し続けたため、規制強化と言う形になっています。この調子だとおそらくRTX 4090 D2の様な製品をNVIDIAは準備してきそうですが、そうなれば次は70から60 TFLOPsなど段階的に下げられてしまい、最終的にはRTX 4080 SUPERより上は売れないという事態になってしまいそうです。
NVIDIAは営利企業として収益を上げることも大事ですが、アメリカ企業としてアメリカの脅威となる国を利することは許されないので規制ギリギリで中国専用モデルを次々と出すというのは控えた方がよさそうですが、今後NVIDIAがどう反応するのか注目です。
Implementation of Additional Export Controls: Certain Advanced Computing Items; Supercomputer and Semiconductor End Use; Updates and Corrections; and Export Controls on Semiconductor Manufacturing Items; Corrections and Clarifications | FEDERAL REGISTER
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