TSMC 3nmが微妙なのはFinFETの限界？ 一方でサムスンはGAA 3nmでTSMCを猛追へ

TSMC 3nmが微妙なのはFinFETの限界？一方でサムスンは4nmで苦労したGAAを3nmに適用する事でTSMCを猛追へ

TSMCではここ最近発売されているスマートフォン向けSoCからPC向けのCPUやGPUにおいて採用されており、その主な理由は競合のサムスンに比べて高い歩留りと性能でした。特にTSMC 7nmや5nmなどは採用例が多く、その次世代に当たる3nmについても2023年の早い段階で量産化に成功し、この第一弾がiPhone 15 Proに内蔵されているApple A17 Pro SoCとなっています。

しかし、このiPhone 15 Proについてはベンチマークではあまり高いスコアを記録する事に失敗している他、15分程度ゲームをプレイするとサーマルスロットリングが発生するなど電力効率の面で期待を下回っている事は確かなのですが、このApple A17 Proの性能についてTSMC 3nmプロセスに問題がある可能性が指摘されています。

TSMC’s 3-nm Process Under Scrutiny Due to iPhone 15 Pro Overheating Issues – Businesskorea

業界筋によると、A17 Proについてサーマルスロットリングなど発熱関連の問題が指摘されている背景にTSMC 3nmではリーク電流の抑制に失敗している事が挙げられるとの事です。

TSMC 7nmから3nmなど先端プロセスで作られる半導体ではFinFETと呼ばれる構造が用いられており、元々はIntelが2011年に22nm世代で初めて取り入れられた構造になっています。ただ、歴史を見ると分かる通り既に導入から10年以上活用されている技術であるため、微細化に伴いリーク電流の増大が懸念されており、実際にこの3nmではFinFETの限界が露呈した可能性があるとのことです。

さらに懸念されるのが初代TSMC 3nmであるN3Bの改良型プロセスです。この改良型3nmはA17 Proで採用されているN3BをベースにN3EやN3P、N3Xへと続き、N3Eに関してはNVIDIAやAMD、MediaTek、Qualcommなど各社で採用を予定していますが、これらもA17 Proと同様に電力効率が大きく向上しない様であればコストが嵩むだけのプロセスとなり、2nmなどでサムスンなど競合プロセスの検討も行われる可能性が出てきます。

競合のサムスンについては5nmや4nmにおいてFinFETを採用していましたが、TSMCに比べて発熱が大きく主要顧客でもあったQualcommはTSMCへ移行しました。そこで、サムスンでは3nmからはFinFETより先進的なゲート構造であるGAAを3nmから採用をしており、サムスン製3nmを採用した製品はまだ存在しないため実力は不明ですが既にTSMC 3nmの55%を超える60%の歩留りを記録するなど製造面に関しては良好のようです。また、GAAについてはFinFETより優れた電流制御が可能であり、消費電力なども低減し電力効率は向上すると見られています。

今後、このサムスンの3nm GAAの立ち上がりが良好である事が確認される一方で、TSMC 3nm系プロセスで歩留りや性能面で疑念が持たれ続ければコスト面でも安い事も相まってサムスンにシェアを奪われる可能性が出てきています。また、TSMCでは2nmからGAAに切り替える事も明らかにしていますが、2nmを製造する工場の建設の遅延に加えてゲート構造を大きく変えるため予定通り開発を進める事ができるのかなど今まで先端プロセスにおいては先頭を走り続けており絶好調だったTSMCの雲行きが怪しくなり始めているようです。

今回の話は韓国発のニュースでもあるためサムスン電子の事を過大評価している可能性もありますが、サムスンではGAAをいち早く採用しているなど技術力は侮れない事は確かであります。7nmや5nmなどのプロセスではTSMCが圧倒的でサムスンは廉価版などで使う2番手的な扱いでしたが、3nmプロセス以降ではGAAも軌道に乗ってきている事からもしかしたらTSMCの3nmや2nmを脅かす存在になり得るかもしれません。どちらにせよ、現状はTSMCに集中しているため、サムスンなどに分散した方が好ましいためこの話は消費者やエンタープライズ含め恩恵を受けられるため期待したいところです。