ソニーが、据え置きゲーム機を縦置きしても横置きしても、冷却性能が変化しにくいヒートパイプ構造の特許を出願していることが判明しました。
PS6は設置方向による冷却性能の差を抑える設計へ?
この特許は、米国で2026年6月4日に公開された「US 2026/0156782 A1」で、出願人はPlayStation事業を担うソニー・インタラクティブエンタテインメントです。
特許の名称は「Electronic Device」で、縦置きや横置きなど、複数の姿勢で使用される電子機器に内蔵された発熱体の冷却能力を改善することが目的として記載されています。発明者にはPS5 Proのメカ設計を率いた人物名も含まれています。
実施形態にはゲーム機のほか、PCやサーバーなども含まれますが、筐体を縦置き・横置きの両方で使用する構成や、ゲーミングデバイスのプロセッサを冷却する構成が想定されています。そのため、据え置き型PlayStationへの利用を意識した特許と考えられます。
縦置きではヒートパイプの下側に流体が集まる
ヒートパイプは密閉筒に少量の水(作動流体の一例)を封入し、蒸発と凝縮で熱を運ぶ部品です。これは横置きでは水がパイプ全体に薄く広がりますが、縦置きだと重力により下部に水が集まり、水位が横置き時より高くなると特許本文は説明しています。

特許に示された放熱装置では、複数のヒートパイプが受熱部から2つのヒートシンクへ伸びています。このうち、FIG.3AのIV-IV部分にあたるヒートパイプ下部の断面がFIG.5AとFIG.5Bに示されています。


特許本文では、受熱部で作動流体を効率よく蒸発させるためには、液面が焼結体層58の高さを超えて、中央の蒸気通路である空洞59へ達しないことが望ましいと説明されています。
液面が中央空洞まで上昇すると、受熱部で作動流体を効率よく蒸発させにくくなり、ヒートパイプの冷却能力に影響が出る可能性があります。ただし、ヒートパイプは密閉された部品であるため、本体の置き方に応じて作動流体の封入量を変更することはできません。
そこでソニーの特許では、受熱部56の外側までヒートパイプを延ばし、先端のテーパー部54まで続く「延長部55」を設けています。
延長部の内壁にも焼結体層58が形成されているため、縦置き時にパイプ下部へ集まる作動流体を、受熱部だけでなく延長部側にも分散して保持できます。これにより、作動流体の封入量を変えることなく、受熱部付近の液面を低くし、中央空洞59へ液体が達しにくくする仕組みです。

また、FIG.6に示された別の実施形態では、延長部55を受熱部56よりも重力方向の下側へ膨らませています。作動流体を保持できる焼結体層の容量を下側に増やすことで、受熱部の液面W3をさらに低い位置へ誘導し、縦置き時でも作動流体を効率よく蒸発させられる構造となっています。
既存技術の改良だがPS6のコストダウンや性能向上につながる可能性も
ヒートパイプ自体は現行PS5でも使われており、今回の特許は冷却方式を根本的に変更するものではなく、既存のヒートパイプに延長部を設け、縦置き時の作動流体の分布を改善する構造上の改良です。
しかし、今回のようにヒートパイプが設置状況に左右されないようになればPS6など次世代機ではヒートパイプの本数やヒートシンクの大きさを最適化し、冷却装置のコストや本体サイズの削減へ振り向けることが考えられます。冷却装置の規模を維持する場合には、ファン回転数を抑えて静音性を高める、長時間負荷時の温度を安定させる、あるいはより発熱量の大きい次世代APUへ対応するといった選択肢も生まれます。


