AI需要で息を吹き返したNVIDIAだが、GPU価格高騰と供給不足が顕在化。マイニングブームの様な有様に
グラフィックカードについては2020年以降、落ち着きがない状態が続いています。2020年はコストパフォーマンスが先代に対して大きく向上したRTX 3000シリーズが発売されたものの、同時期にマイニングがブームとなりパフォーマンスが非常に高いGeForce RTX 3000シリーズは仮想通貨で一攫千金を狙うマイナーのターゲットとなり、転売ヤーも加勢するなどし、グラフィックカード価格は定価に対して3倍程度の値段で販売されるようになりました。また、このパンデミックによる各国の金融緩和によりインフレが顕著化し、半導体製造に必要な部材価格が大きく高騰し、TSMCでは製造単価を20~30%引き上げられました。
この頃、NVIDIAではGeForceなどゲーミングセグメントの売上高は大きく高騰し、NVIDIAの収益に大きく貢献していました。ただ、2022年になるとマイニングブームは終わると同時に世界景気の後退からPC需要は大きく後退し、グラフィックカード価格も安定しますが、製造単価の高騰などにより2020年以前の水準からは大きく離れた価格での販売が依然として続けられており、そんな中でNVIDIAは新しくRTX 4000シリーズを発売しますが、価格が高い割りに以前の世代で見られた大きなパフォーマンスの向上は見られず評判はあまり良いとは言えません。
そのため、2023年度のゲーミングセグメントの売上高は2022年度に比べて大きく下落している一方で、2023年から急激に知名度を伸ばし、普及し始めているChatGPTやStable Diffusionなど生成AIによってデータセンターセグメントの売上高が急騰しゲーミングセグメントの売上高急減に苦しむところを救った存在にもなっています。
しかし、そんな生成AI向けとなるデータセンター向けのグラフィックカードについて需要が急騰した事で2021年にゲーマーが体験した様な供給不足がデータセンター業界で発生しているようです。
NVIDIA製のデータセンター向けグラフィックカードについては様々な企業が注文を出しており、最近ではTikTokを開発したByteDance社がAmpere A100およびHopper H800を10万個、総額10億ドル(約1400億円)で注文を出したり、ChatGPTでお馴染みのOpenAI社もHopper H100を3万台以上注文するなど大手IT企業がNVIDIA製グラフィックカードを手に入れようと躍起になっています。また、大手以外でも中国ではAmpere A100が闇市で通常価格の2倍程度で取引がされていたり、Ampere A100やHopper H100などNVIDIAの上位データセンター向けGPUについては納期が最短でも6ヵ月と長期化するなど需要に対して供給が全く追いついていない状況が発生しています。
售价超25万 NVIDIA顶级显卡抢购到明年:台积电加急生产–快科技–科技改变未来 (mydrivers.com)
この需要と供給の乱れにより、NVIDIAのHopper H100については通常は$35,000で注文が出来ますが、現在は$50,000程度と約1.5倍にまで値上げが行われる他、納期については最短でも2024年で大口顧客ではない場合は1年以上待たされるなどマイニングブーム時に多くのゲーマーが見た光景がそのままデータセンター向けGPUでも発生しているようです。
NVIDIAではこのAI特需の波に乗るべくHopper H100についてメモリー容量が64GBおよび96GBと異なるバリエーションを追加で投入する予定している他、TSMCでAmpere A100やHopper H100の製造に必要なCoWoS製造のキャパシティーを追加で確保していますが、過去にゲーミング用GPUが不足した際にキャパシティーの確保から実際に供給が行われるまでのタイムラグを考えると、効果が見え始めるのは2023年終わり頃になると見られています。
なお、生成AIブームを受けてAMDなどNVIDIAのライバルも動きを強めており、AMDではHopper H100に対抗するために192GBのHBM3を搭載するInstinct MI300Xの他、Zen 4を内蔵したMI300Aなど購入から運用するまでのコストであるTCOを意識した製品を投入しており、NVIDIAが供給不足の隙を狙ってシェアを拡大しようとしています。ただ、NVIDIAについてはCUDAなど独自のエコシステムを構築している強さもある事から、AMDなどが追いつこうとしていますが、供給不足や納期の長期化があってもNVIDIAが引き続きデータセンター向けGPUにおいてはリードを維持するものと見られています。
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