近年、コンシューマー向けPCでは高速で小型なNVMe SSDが標準的に搭載される傾向にあり、HDDが標準搭載されている例は少ないのですが、大容量データを扱う個人やサーバー・データセンターなどにおいてはHDDはまだまだ主流と言えます。しかし、それでも2028年までにはHDDは絶滅危惧種と言えるぐらいにシェアを落とすと見られているようです。
HDDは2028年までにシェアが大きく減少へ。SSDの容量密度向上と消費電力削減による総コスト低減がカギ
ここ最近コンシューマー向けPCにおいては特にBTOやノートPCなどではNVMe SSDを標準搭載する一方で、HDDについてはオプション扱いでデスクトップ向けPCにおいても3.5inchベイを搭載しないモデルでさえも登場し始めるなど徐々にHDDはコンシューマー向けからは消えつつあります。一方で、サーバー・データセンター向けにおいては未だにHDDは主流となっています。これは、NVMe SSDの容量密度が低い一方で、HDDでは1個で最大22TBと大容量を実現しているため、特にデータセンター向けにおいては多用されており、各社はさらなる大容量化を目指して研究開発を行っています。
しかし、アメリカでオールフラッシュのストレージ事業を手掛けるPure Storage社のエンジニアリング部門副社長のShawn Resemarin氏によると2028年以降はHDDは販売されないという大胆な予測を立てているようです。
Resemarin氏によると、現時点ではHDDは消費電力がSSDに比べると高いが、容量辺りの単価が安く大容量データを扱うデータセンターでは人気がありますが、SSDの1TB辺りのコストは継続的に下がる事が予測されています。また、今後はカーボンニュートラルや物価高を背景とした電力コスト高騰と供給不足などを発端としてHDDの人気と持続可能性に陰りが見え始めると予測しています。
PCでゲームや作業をするコンシューマー向け用途においてはHDDかSSDを選ぶ基準は主に性能でありますが、ビジネスにおいてはTCO(Total Cost of Ownership)と呼ばれる購入から運用までの総コストを示す指標で収益性が計算され、この値が非常に重要となってきます。このTCOについて、全世界の電力消費量の内3%がデータセンターの運用に消費されているとのことで、この中の3分の1がHDDなど回転ディスクによる消費電力とのことです。今後、このHDDをSSDに置き換えられれば消費電力を80~90%程度削減する事が可能となりTCOの内、運用コストを大幅に削減する事が可能となるとのことです。
さらに、近年は各国で電力消費が大きく一部の国では電力使用量の割り当てが設定されており、効率の悪いプロジェクトには計画やその他の必要な許可が与えられない可能性があります。そんな中で順調にSSDの容量辺りの単価が低下していけばやがて、TCOの内、購入部分もコストを含めてもHDDを下回り始めると見られており、デHDDの需要の大部分を支えているデータセンターはHDDからSSDへ乗り換えが促進されるとのことです。
HDDビジネスは停滞気味。淘汰は確実だが2028年以降も残る可能性も高め
2028年以降はHDDは販売されないというのはフラッシュストレージを主として扱うPure Storage社の認識であり、かなりバイアスが掛かった意見と言えますが、ストレージ系の出荷台数を見るとHDDの出荷数は2022年は2021年比でほぼ半減してしまっているのは事実です。
2022年のHDD出荷台数は2021年に比べて約半減。クラウドストレージが絶不調
この出荷台数減少の原因には、世界的な景気後退懸念など外的要因も多く入っていますが、少なくともコンシューマー向けにおいては出荷台数は減少傾向が続くと見られています。
2023年時点では大容量データを扱う際にはHDDが容量辺りの単価は依然としてSSDに対して優れており、Block&Fileの調査ではHDDからフラッシュ系に移行する事を表明したハイパースケーリングデータセンターは存在していないようです。ただ、これはあくまで現時点と言う話であるため、SSDのTCOがHDDのTCOに近づき始めると一気にSSD移行が進む可能性もあるため、2028年に絶滅とまではいかないものの、一気にマイナーな存在に落ちてしまう可能性は十分考えられると言えそうです。
コメント
コメント一覧 (1件)
同容量で同価格帯にならない以上住み別けになると思われる、4TBSSDが4万円台だとHDDしか選択肢がない、せめて1万円台まで下がればゲームチェンジャーになれるのに。現状超低温冷却が必要になったPLCは普及が絶望的、QLCの耐久性も向上が見込めない、当面はHDDが生き残ると思う。