AMDでは11月に開催されたHPC向け製品の発表会にて3D V-Cache技術を採用したEPYC Milan-Xを発表しました。AMDではこの3D V-CacheについてCES2022にてRyzen CPUへの搭載も発表される予定ですが、今後GPUなど幅広い製品での採用を想定してか、3D V-Cacheと言う名称を米国特許商標庁(USPTO)に商標として申請をしているようです。
RyzenやEPYCに採用される3D V-Cache技術
AMD 3D V-Cache Trademark Hints at Future GPU Applications | Tom’s Hardware
AMDではCPUなどのダイを縦方向に重ねる3D V-Cache技術を数年前から研究しており、11月にはEPYC Milan-Xを2022年第一半期に市場投入する事を発表し、2022年1月に開催されるCES 2022ではコンシューマー向け製品であるRyzenやThreadripperの発表を行う予定となっています。
この3D V-CacheについてはRyzenやEPYCなどCPUへの搭載が続々と行われてはいますが、AMDではこの『3D V-Cache』技術を商標として米国特許商標庁に申請を行い、その申請内容ではGPUに関する記載が複数登場している事からCPUのみならずGPUへの搭載も検討しているようです。
Radeon RX 7000シリーズで3D V-Cache搭載か
11月上旬ごろにGPU関連のリークを出しているGreymon55氏は2022年に発売が予定されているRadeon RX 7000シリーズGPUにて3D Infinity Cacheと呼ばれる3D V-Cache技術を応用されるとリークしていますが、AMDが3D V-Cacheについて商標登録がされるという話は、このリークと若干つながりがあるかもしれません。
RDNA3では3D Infinity Cacheを搭載。GPUに3D V-Cache技術を応用
3D V-CacheについてはAMDがHPC向けに3D V-Cacheを搭載したEPYC Milan-Xの発表が行われた翌日の2021年11月9日に米国特許商標庁に申請が行われています。
この商標についてはAMDが提出した資料によると、CPUのみならずGPUやSoC、DRAMなど幅広い半導体部品で利用が想定されるとされています。ただ、一般的には商標は企業の知的財産権を幅広くカバーできるように可能な限り広いジャンルをカバーできるように申請が行われますが、中身について確認するとCPUに関連したものが12点に対してGPUに関連したものが23点とGPUでの採用を意識したとも言える申請内容になっています。
キャッシュでパフォーマンスを伸ばすAMD
AMDでは最近リリースするCPUやGPU製品では大容量キャッシュをパフォーマンス補強のために使う方向で利用されています。
CPUにおいてはRyzen 9 5900Xに3D V-Cacheを搭載する事でゲーミング時のパフォーマンスは10%程度向上するとComputex 2021では発表され、サーバー向けのEPYC Milan-Xでは通常版のEPYC Milanに比べてパフォーマンスが1.5倍にまで向上するとAMDは発表しています。
GPUについてはRadeon RX 6000シリーズからはGPUダイに最大256MB程度のキャッシュである『Infinity Cache』を採用し、VRAMのバス幅を大きく引き上げる事無くワットパフォーマンスの向上を図っています。実際に256bitのバス幅しか持たないRadeon RX 6800 XTは320bitのバス幅を持つRTX 3080に対してラスター性能では同等レベルのパフォーマンスを発揮しています。
この方向性は今後も続くと見られており、今後この3D V-Cacheを活かした商品群をCPUのみならずGPUに展開する戦略は十分考えられます。
AMDが3nmプロセスでTSMCからサムスン電子へ切り替えを検討中
特許や商標については、企業の知的財産権を可能な限り幅広くカバーするために実際に商品化する予定が無くても申請が行われる事が多々ありますが、3D V-Cacheについてはパフォーマンス面でメリットがあることや既に実用化されているため、GPUなど含めてAMDでリリースされている製品へ幅広く採用されると見て良さそうです。特にGPUに関しては既にInfinity Cacheに3D V-Cache技術を使うリークも出ているため、Radeon RX 7000シリーズなど近い将来リリースされるGPUでお目にかかる事が出来ると思います。