アメリカが中国製グラフィックスカードや電源ユニットなどPCパーツへの関税を復活させる可能性。GPUなどは25%以上の値上げも
アメリカではトランプ政権時代に中国製PCパーツなどに対して関税をかけることを政権末期の2020年末ごろに決定したものの、大統領選でジョー・バイデン氏が選ばれたことや、NVIDIAやAMDなど各社が政府に対してロビー活動を展開したことで関税の適用が数年間延期されていました。
しかし、この延期期限が2024年5月31日に迫る中、米国通商代表部(USTR)のスポークスパーソンがPCMagに対する問い合わせに対して「延期期限の変更はなく、質問で挙げられたGPUおよびマザーボードへの関税は適用されるでしょう」と回答したことが明らかになりました。
この関税の対象となる製品はグラフィックスカードとマザーボードのほか、PCケース、500Wを超える電源ユニット、$70を超えるマウス、$100を超えるトラックパッドなど自作PCを作るうえで必須となるパーツのほとんどが対象となっています。
この関税に対してCESを主催するConsumer Technology Association(CTA)は関税の撤廃を政府に求めていたものの、CTAによると「彼らは何も撤廃する意向はないようです。あるのは増える関税だけです」と関税撤廃に向けた交渉は失敗に終わり、アメリカ政府は予定通り関税の適用を実施する可能性が高いようです。
実際にアメリカ政府は中国製の電気自動車向けリチウムイオンバッテリーや電気自動車に対して最大100%の関税をかける事を決定しており、グラフィックスカードやマザーボードなどPCパーツに対してだけ関税適用を延期する理由は無いと言うのが現状のようです。
なお、NVIDIAはこの関税に関して新型コロナの影響により製造拠点を北米やベトナムに移転することに失敗していると述べている他、グラフィックスカードを作るZOTACは中国は依然としてグラフィックスカードを作る主要な製造拠点となっていると述べ、その理由としては上流のサプライチェーンの殆どが中国に残っているためとのことで、北米やベトナムなど関税が適用されない国へ製造拠点を移転させるのは容易ではない事を明らかにしています。
関税の適用は北米だけだが、サプライチェーン再構築が日本への影響もある可能性
今回のグラフィックスカードなどに対する関税は中国から北米に輸入される製品のみで、当然のことながら関税に関して日本で販売される製品には適用されません。
しかし、この関税が適用されることになればメーカーの多くはサプライチェーンの再構築を検討または実施を余儀なくされるのは確実です。
そのため、2024年下半期以降に登場するGeForce RTX 5000シリーズやIntelのZ890マザーボードなど新製品を中心にこれらの影響を加味した販売価格が設定されるなど現行製品に対して販売価格がさらに値上がりする可能性があります。そのため、日本を含む北米以外の地域に対しても北米の関税が影響を与える可能性がありそうです。
アメリカは中国製品に対する関税を強める姿勢を鮮明にしており、最近ではEV、EV用バッテリーの他にソーラーパネル、鉄鋼などアメリカ経済に影響を与える品目にも躊躇なく関税を適用しています。そのため、長年延期されていたグラフィックスカードなどPCパーツへの関税適用も今回ばかりは逃げられないと言えそうです。
他にも、アメリカは2024年は大統領選が迫っており、バイデン政権も保護主義的アプローチで支持を集めているトランプ氏に対抗する実績を作る必要があり、今回の関税はその実績作りには最適とも言えます。
US to Resume Trump-Era Tariffs on Graphics Cards Assembled in China | PC MAG
https://www.pcmag.com/news/us-to-resume-trump-era-tariffs-on-graphics-cards-assembled-in-china
コメント
コメント一覧 (3件)
「彼らは何も撤廃する以降はないようです
「彼らは何も撤廃する意向はないようです
ですよね
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
まあ、仕方ないんじゃない。