アメリカが中国へのGPU輸出規制をさらに強化する方針。NVIDIAが中国向けに開発したAmpere A800なども対象に
アメリカでは中国などが軍事的また商業的に利用するためにアメリカ製の高性能なグラフィックカードなどを買い集めているとして、2022年秋頃にNVIDIAのAmpere A100と同等以上の性能を持つGPUについては輸出ライセンスが必要となる要件をアメリカ商務省が明らかにしました。この動きを受けて、中国市場で多くの利益を得ているNVIDIAでは売上減少を防ぐために、輸出ライセンスに抵触しないAmpere A100の中国輸出向けのNVIDIA Ampere A800を急遽投入しました。
その結果、TikTokを運営するByteDance社はNVIDIAに対して1400億円以上を支払、Ampere A800やHopper H800を10万台程度受注され、他にも中国企業から多くの需要があり、供給が追い付かない状態になっています。
そんななかでアメリカ政府は生成AIなどで中国が技術を悪用する懸念が強まっているとして現行のGPU輸出規制をさらに強化する方針である事が明らかになりました。
US considering new restrictions on AI chip exports to China, Wall Street Journal reports | Reuters
この規制では事前にライセンスを取得していないGPUについては中国国内に拠点を置く企業などが顧客の場合、2023年7月上旬にも輸出が規制される見込みになっています。
輸出ライセンスが与えられる条件でもあるAmpere A100以下の性能と言う要件も強化されるようで、Ampere A800など性能が低いGPUについてもByteDance社が行ったように数の暴力でAI学習性能を大きく上げる事が可能であるため、Ampere A800やHopper H800の輸出についてもライセンスなしでの販売は禁止されると見られています。
なお、GPU本体の輸出以外にもアメリカ商務省ではコンピューティングパワーをクラウドベースで貸し出すサービスについても中国向けは規制する事を検討しているようです。これはGPU輸出規制を回避しつつAIのための開発が可能になるものであるため抜け穴的に利用されている事があるようです。
アメリカ商務省がこのような検討を行っている事が6/27に明らかになったことでNVIDIAの株価は3%下落、またInstinct MI200Xなどを輸出しているAMDの株価も1%、Intelについても1%程度の下落が見られました。
このアメリカ商務省の規制強化の影響を最も受けるのがNVIDIAになると見られています。特にNVIDIAでは中国マーケットを重視しており、去年規制が発表された際には突貫でAmpere A800やHopper H800など中国マーケット向けに発売するなどしています。しかし、規制強化によりこれらのGPUも安易に販売する事が困難となるためNVIDIAは収益性の高いデータセンター向けGPUで市場を1つ失う事になるため業績へのダメージは小さくないと言えそうです。
個人的にアメリカ商務省が去年発動した輸出規制の趣旨を考えるとNVIDIAが突貫でA800やH800を作り上げたのは会社として収益を上げる事だけ考えれば正しい行いだったと言えます。ただ、アメリカに本社を置く企業として、またアメリカ政府の思惑とは真逆の動きをしてしまっていたため、ここに来て締め上げられてしまったという自業自得的な状況と言えます。
この規制がどれだけの範囲に及ぶものになるのかはまだ詳細が明らかにされていないため不明ですが、ByteDance社が10万台以上のNVIDIA製GPUを購入したり、AlibabaやBaidu、TencentなどもNVIDIA製GPUを購入しようとしているため、仮にこの規制が発動されればNVIDIAのデータセンター向けGPUの収益は直近公開されたガイドラインを下回る事になると考えられます。
NVIDIAにはリスク分散のためにも是非、ゲーミングセグメントも大事にして欲しい所ですが、RTX 4000シリーズを見ているとリスク分散にはなっていないですね・・・
コメント
コメント一覧 (4件)
こう言うのを「泥縄」と言うのでは?
しかも、その気になれば金はかかるけど
GPUで代用出来るんだから、無意味なんじゃない?
事実上、nvidia狙いうちの規制だねぇ。
まぁ、ざまーみろとしか言うことがないです。
第三国経由で結局あまり意味はなさそう
まぁ真面目にグラボも作ってねって感じですかね・・・。