NATOに加盟したいウクライナとNATO加盟は絶対に阻止したいロシアの間でいつ戦争が起きてもおかしくない情勢に東欧ではなっていますが、この2国間が戦争を開始すれば再びGPUやCPUなど半導体製品の生産に影響が出る可能性があるようです。
半導体製造に必要なネオンやパラジウムの多くがウクライナとロシア産の模様
焦点:ウクライナ情勢、半導体製造に影 米が供給網の多様化模索 | ロイター
ロイター通信が米調査会社テックセットが公表したレポートに関して取り上げており、このレポートによると半導体製造に必要なネオンの90%がウクライナ産、パラジウムに関しては35%がロシア産との事。この件についてホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)が関係業界に対して両国間の間で戦争が起きた場合に備えて代替先を早急に探すよう促しているとの事です。
半導体製造に必要なレーザーにはネオンの多くはロシア&ウクライナ産
Behind this Door: Learn about EUV, Intel’s Most Precise, Complex Machine – YouTube
半導体製造にはレーザーが多様されています。Intelの紹介動画ではEUVに関して取り上げられていますが、鉄板を切断するレーザーより強力なレーザーが用いて半導体が生産されると説明がありますが、このレーザー光を作るのにはヘリウムとネオンが必要となるようです。
この中でネオンについては90%がロシアで生産され、それらをウクライナで精製して半導体製造を行う企業へ供給が行われているとの事です。そのため万が一両国間で紛争が起きればネオンの供給が不安定化する事や、供給価格が大幅に上がる可能性があるとの事です。
なお、2014年にロシアがクリミア編入に向けた動きをした際にはこのネオン価格は600%急騰したとの事で、半導体用での需要が高い中で『ウクライナ侵攻』となれば非常に大きな影響が出ると見られています。
パラジウムはメモリーの製造に利用。自動車生産にも影響?
半導体製造に必要なネオンの他に、パラジウムもロシア産のものが3割程度含まれているとの事です。
このパラジウムはメモリーやコネクター、センサー類などを繋ぐ電極の表面に使われており、もし供給不足となればDDR5メモリーモジュールからiPhoneなどコンシューマー向け家電など大きな影響が出ると見られています。ただしロシア産のものは3割程度のため、パラジウム価格高騰による販売価格値上げなどに留まるとも考えられます。
なお、このパラジウムについては自動車の排ガスを浄化する三元触媒にも利用されています。この三元触媒にはプラチナ、ロジウムそしてパラジウムが含まれており、もしパラジウムの供給が不安定化すれば自動車生産への影響やコスト高騰も避けられなくなる可能性があります。
ロシアがウクライナに侵攻となれば日本を含め西側陣営の国はロシアに対して今までにないレベルの厳しい経済制裁を科すことは確実と見られていますが、ロシアもそうなれば報復として天然ガスの供給停止や今回挙げられている希ガスや貴金属の供給停止を行うと考えられます。
半導体のサプライチェーンに関しては安全保障にも関わるため代替手段については常日頃から考えてはいると見られています。ただ、半導体需要は依然として高くパンク寸前であるため、サプライチェーン内でごくわずかであろうが今まで入っていた材料に供給問題が起きれば回りまわって様々な所に影響が出る可能性はあり得ると考えられます。特に半導体の場合、上流側ほどリードタイムが長くなっていますのでロシアがウクライナ侵攻し経済制裁が発動されても直ちに影響が出る事はないですが、数か月後に大きな影響が出る事も予測されるので、ウクライナ情勢に関しては注視しておく必要がありそうです。
もしかしたらまたGPUやCPUなどの供給が不安定化するという事態にも陥るかもしれませんので・・・