イギリスで発生中の深刻な干ばつ。政府は節水を呼び掛ける
雨が多いイメージのあるイギリスですが、近年は夏季の気温上昇により乾燥が進み、2025年は記録的な干ばつに見舞われています。イギリス政府は、ヨークシャーやチェシャーなど5地域を「干ばつ状態」に、さらにリンカンシャーやソレントなど6地域を「日照り状態」に指定しました。

そのため、政府は特に水の使用を巡って節水に繋がるガイダンスを発表しており、その中には「庭の水やりは雨水を集めて行う」「水漏れするトイレを修理する」「歯磨き中は水を止める」と言った合理的な推奨事項も多く並んでいますが、このガイダンスの最後に「データセンターの冷却に大量の水を使うため古いメールや写真を消す」と言う不可解な内容が記載されているようです
データセンターの負荷を減らすためにデータを消すようにアドバイス。しかし逆効果に?
確かにデータセンターは冷却のために大量の水を消費します。しかし、専門家によれば「古いデータの削除が節水につながる」という考えは、現実の仕組みを無視したものです。
- 水の大量消費は「計算」であり「保管」ではない:データセンターの電力消費と、それに伴う水の使用量の大部分は、CPUやGPUがAIのトレーニングやデータ処理といった「計算」を行う際に発生する熱を冷却するためのものです。そのため、一度保存されただけのメールや写真などのデータは、ストレージデバイス上でほとんど熱を発さず、多くの場合、低電力モードで待機しています。保管にかかるエネルギーと水は、計算に比べてごくわずかです。
- 「削除」という行為自体がエネルギーを消費する:ユーザーが古いデータを探し出し、削除するという行為自体が、サーバーを起動させ、データを検索し、削除処理を行うという一連の「計算」を発生させます。これは、データを静かに保管しておくよりも多くのエネルギーと、結果的により多くの冷却水を消費する可能性が高く、逆効果となります。
- データセンターは英国内にあるとは限らない:そもそも、削除しようとしているデータが、干ばつに苦しむ英国内のデータセンターに保存されているとは限りません。国外のデータセンターに保存されているデータを削除しても、英国の節水には全く貢献しません。
日本でも2025年は梅雨前線の早期消滅で一部地域に干ばつの懸念がありましたが、現時点では深刻な状況には至っていません。それでも将来的に水不足が起きる可能性はあり、もしそうなれば、データ削除よりもシャワー時間の短縮や歯磨き時の水止めといった、直接的で効果的な行動が求められます。
なお、日本でも時折的外れな提案や政策が話題になります(最近では「女子トイレの行列対策」など)。こうした現象は、どうやら国を問わず共通して見られるもののようです。
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