NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズGPUはサムスン電子の8nmプロセスが採用されていますが、そのサムスンがウェハー価格の値上げを検討している模様です。
将来に向けた研究開発の原資としてウェハー価格値上げが検討中
サムスン電子は2021年7月30日に2021年第二四半期決算を発表し、その決算発表会の中で半導体ウェハーに関する価格を改定する事を検討していると発表しました。この価格改定は主に半導体の値上げにあたり、これらの値上げを原資に韓国のピョンテク市近くにあるS5ラインの製造能力増強に充てられるとの事です。
Samsung Foundry will accelerate growth by expanding Pyeongtaek S5 Line capacity and by adjusting pricing to enable future investment cycles,”
サムスン電子では、半導体価格を調整する事で、ピョンテク市のS5ラインの能力増強を加速など将来に向けた投資を進めていきます。
Ben Suh:サムスンIR担当部門長補佐より
サムスンのS5ラインはサムスンの最先端半導体工場の一つであり、5nmや4nmなどのプロセスの半導体製造が可能となっています。また、この半導体工場ではEUV露光なども活用される予定となっていますが、このような最先端技術の採用には多額の費用投資が必要となっており、サムスンの最近の決算を見ると実際に設備投資関係の支出が増えているそうです。そのため、これらの費用を回収するためにもウェハー価格の改定が検討されているようです。
GeForce RTX 3000などサムスンを利用する半導体製品が値上げする可能性
NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズについては、サムスンの8nmプロセスを利用しており、S5ラインなど最先端半導体工場での製造が行われている訳ではありません。しかし、サムスンの決算発表にあったようにウェハー価格の調整が実施されるとすれば、このRTX 3000シリーズも無傷で居られる可能性は低くなっています。
特にここ最近は半導体需要の増加でTSMCやサムスンなど大手のファウンドリはフル稼働に近い状況になっています。実際に競合であるTSMCはAppleやAMDなど大規模顧客に対する割引を取りやめる事が報じられたりするなど、サムスン側も半導体価格の調整が容易に出来る環境が整っています。
もしこのままウェハー価格の値上げが行われるとすればダイサイズが巨大で1枚のウェハーから取れる個数が少ないGA102などハイエンドGPUなどは大きな値上げが行われる可能性があります。また、その他レンジの製品もウェハー価格上昇とハイエンドで取れる利益が少なくなることから同じように大きな値上げが行われる可能性があるとの事です。
ただし、TSMCが行うとする値上げに関しては半導体需要切迫に伴う一時的な値上がりであり、半導体需要が落ち着きを見せれば値下げする可能性があるとの事です。もしこのような事になればTSMCのライバルでもあるサムスンも顧客を維持するために同じように価格値下げの圧力に晒されるため若干価格が落ち着く可能性があります。問題はこの半導体需要の切迫は2022年頃まで続く可能性があると多くの企業の間での共通認識ですので近いうちに値下げが実現する可能性は限りなく低いという点です。
世界的な半導体不足、22年にかけ容易に続く=ステランティスCEO | ロイター
ここ最近、NVIDIA製GPUに関しては2021年5月頃のピークから大きく値下がりし、RTX 3080に関しては14万円台の価格での販売も見られるようになってきました。しかし、もしこのサムスンのウェハー価格値上げが実施されればまた20万円に迫る価格に逆戻りとなるかもしれません。
今年の後半にはRTX 3000 Superなどリフレッシュ商品も用意される予定ですが、現行のRTX 3000のリフレッシュであることから驚くほど大きな性能向上が見られるわけでは無さそうですので、もしBF2042など今年後半に発売のゲームを最高の環境で楽しみたいのであれば今のうちにRTX 3000シリーズなどを買っておくのも対策かもしれません。
2021年7月版 | 2021年~2022年 Intel/AMD/NVIDIAのGPU発売予定と詳細
最近の半導体製品は値動きの激しい株のような状況ですので購入予算は多めに確保して、買った後や昔の価格などにはあまり意識を向けないようにした方が精神衛生上良さそうです。
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