Ryzen 7 9700Xの同時マルチスレッディング(SMT)を無効化するとゲーミング性能が大幅向上することが明らかに
2024年8月8日から各国で発売されたRyzen 7 9700Xは、先代モデルに対してゲーミング時の性能が数%程度しか向上していないため、海外レビューを中心にあまり良い評価を得られていません。しかし、海外のテック系メディアTechPowerUPがAMDの同時マルチスレッディング(SMT)を無効にした状態でベンチマークを計測したところ、ゲーミング性能がCore i9-14900Kに迫るほどの性能を発揮することが明らかになりました。
TechPowerUPが合計14のタイトルで計測したゲーミングパフォーマンスでは、Ryzen 7 9700XのSMTを有効にした状態を100%とすると、SMTを無効化した場合、720p解像度で102.5%、SMT無効+PBO(Precision Boost Overdrive)状態では104.7%までパフォーマンスが向上しました。
同様に、1080p解像度でもSMT無効化のみで102.6%、SMT無効+PBO状態で104.3%に達し、SMT無効化のみでCore i7-14700KとCore i9-13900Kの間ぐらいの性能に、PBOを有効化することでCore i9-14900Kに迫るゲーミング性能を発揮できることがわかりました。
ただし、SMTを無効化すると、ゲーム以外のパフォーマンスには悪影響が出るようです。レンダリングや動画エンコードなど、CPUを多用するワークロードでは20%程度のパフォーマンス低下が見られるため、ゲーミングPCであれば無効化する価値があるかもしれませんが、ゲーム以外にレンダリングや動画編集などを行う場合、SMT無効化によるパフォーマンス減少は大きく、無効化が合理的とは言えないでしょう。
SMTを無効化することでパフォーマンスが向上する現象は、Ryzen 7 7700Xでも確認されていますが、上昇は1%程度でした。これに対して、Ryzen 7 9700Xでは3%と大きくなっています。この原因としてはマイクロコードの最適化不足や、Windowsやソフトウェア側での最適化不足が疑われています。
TechPowerUPによると、AMDはCPU動作を最適化するためにAIを用いてマイクロコードを設計していた可能性があり、この最適化がうまく機能していない可能性があります。そのため、この点は今後のマイクロコードアップデートによって、パフォーマンスが向上する可能性も考えられます。
Intelは2024年秋以降に投入予定のLunar LakeやArrow Lakeで、同時マルチスレッディングに類似するハイパースレッディングを、面積あたりの効率を向上させるために廃止することを明らかにしています。性能面でのデメリットが懸念されますが、少なくともゲーミング性能という観点では、ハイパースレッディングの廃止は有利に働く可能性があります。
AMDのRyzen 7 9700XやRyzen 5 9600Xについてはゲーミング性能に焦点を当てたベンチマークでは消費電力は下がっているものの、パフォーマンスの向上という観点ではあまり大きな進化は見られていなかったため評価としては微妙でしたが、ハイパースレッディングを無効化するとCore i9-13900KやCore i7-14700Kなど競合モデルと張り合えるだけの性能を獲得できているので、今後のマイクロコードのアップデートなどを通じてパフォーマンスがより上がるように調整などが行われることが期待されます。
We found the Missing Performance: Zen 5 Tested with SMT Disabled | TechPowerUP
https://www.techpowerup.com/review/amd-ryzen-9-9700x-performance-smt-disabled
コメント
コメント一覧 (4件)
AIで設計ってそれブルドーザーの頃に失敗したやつじゃん
その頃より精度は上がっているんだろうがやっぱり駄目だわ
9950X3D出たら、X3D CCDのみHTを切ればゲーム最強じゃね?
Pコア8個、Eコア8個で24スレッド換算かな
同一の論理設計を有するZen5とZen5Cを複数の製造プロセスに展開できた時点で物理層の設計に手を抜いていることは明らかですが、性能を見るとそれが大きなハンデになっている様子もありませんし、有りなのかなと思います。
TDPをはじめ性能面で手加減してこれならIntelが再び爆熱合戦を仕掛けて来ても余裕で返り討ちにできるでしょう。
繰り広げたZen4
SMTオフにすれば性能が上がる可能性がある。
これは他ならぬAMDのMike Clarkが言っていたことですから、まぁ正解ということでしょう。
もっとも、タスクの割り振りについては、色々と最適化の余地があるらしく、今後の改善課題でしょうね。
ちなみにRyzenとEPYCのダイを共有している関係だと思いますが、AMDはSMTを有用だと考えており、廃止は考えていないようです。