2021年6月3日に発売されたGeForce RTX 3080 TiはCUDAコアを10240基、VRAMにGDDR6X 12GBを搭載したハイエンドモデルに位置するグラフィックカードですが、どうやらVRAMをGDDR6X 20GBに強化したモデルがロシアで発売されている模様です。しかも何故かマイニングが可能な非LHRモデルになっている模様です。
ロシアでVRAMを20GB搭載したGeForce RTX 3080 Tiが出現
GeForce RTX 3080 TiではCUDAコアを10240基、VRAMにGDDR6Xを12GB搭載する仕様となっていますが、ロシアにてVRAMにGDDR6Xを20GB搭載したモデルが届いているようです。
このGeForce RTX 3080 Ti 20GB版の写真自体は8月末に投稿されていたのですが、その当時はラベルの記載内容を変えただけのフェイク疑惑もありました。しかし、ロシアのYoutuberが実際にこのGeForce RTX 3080 Ti 20GB版を手に入れ、仕様やマイニング性能の確認などをしています。
お蔵入りになったと思われる仕様と全く同じ。
RTX 3080 Tiが2021年1月に登場か。コア数とVRAM容量が大幅アップ
GeForce RTX 3080 Ti 20GB版については2020年11月頃にRadeon RX 6900 XTに対抗する事を目的に導入が計画されており、その仕様情報がkopite7kimi氏によってリークされています。当時リークされた仕様はGA102-250 GPUを搭載し、CUDAコアにはRTX 3090と同じ10496基、VRAMはGDDR6X 20GBをバス幅320bitで搭載すると言われていました。
そして、2021年1月下旬には実際に前述のスペック通りのGeForce RTX 3080 Ti 20GB版を入手した人がベンチマークを動かす動画などが掲載されるなど発売寸前の段階にまで来ていた事が分かります。しかし、2月に再びkopite7kimi氏からCUDAコアが10240基に、VRAMが12GBに減らされたRTX 3080 Tiが準備中と言うリークが出現し、これが6月に正式発売されたRTX 3080 Tiとなりました。
このようにGeForce RTX 3080 Ti 20GB版は過去に発売寸前まで来ていた製品でしたが、何かしらの事情によりお蔵入りされてしまいました。今回ロシアで発見され、発売されているGeForce RTX 3080 Ti 20GB版はこのお蔵入りにされてしまったモデルが何かしらの手違いによって販売店にまで辿り着いてしまい販売されているという状況と見られています。
LHR非搭載でマイニングが可能な模様
ロシアで発見されたGeForce RTX 3080 Ti 20GB版はすべてGIGABYTE製でAORUSとGAMINGバージョンの2種類が流通しており、Youtuberはこの中のゲーミングモデルをサンクトペテルブルクの店舗で手に入れたようです。
ドライバーは2020年12月2日にリリースされたNVIDIAの457.71で動作が可能との事です。
動画内では、様々な仮想通貨マイニングのパフォーマンスをテストしているのですが、気になるのがEthereumマイニングでのパフォーマンスです。販売されているGeForce RTX 3080 Tiでは出荷時点でマイニングに対してパフォーマンス制限をかけるLite Hash Rate (LHR)が搭載されているものの、GeForce RTX 3080 Ti 20GB版ではそのような制限は一切かけられていないようです。そのため、GeForce RTX 3080 Ti 20GB版ではEthereumマイニングパフォーマンスは約95MH/sを発揮しており、LHRが起動した状態のGeForce RTX 3080 Tiに比べて約65%高く、LHR非搭載のGeForce RTX 3080に近いパフォーマンスを発揮しています。
なお、約95MH/sと言う性能はPower Limitは80%、Core+100MHz、メモリー+1000MHzに設定された状態で実施されていたため、更なる最適化の余地はあるかもしれません。
若干気になるのが、Power Limitを80%に制限していてもEthereumのマイニング画面では消費電力が344Wであると示されているため、Power Limitを初期値の100%のままで運用すれば400W近い消費電力で動作するという事になります。
なお、動画内ではマイニングに特化した紹介になっておりゲームにおけるパフォーマンスがどの程度違うのかなどは紹介されていませんでした。このYoutuberが手に入れたGeForce RTX 3080 Ti 20GB版ですが、価格は約3000ドルで販売されていたとの事で、日本円で言うと33万円程度する事になります。
今回出現したGeForce RTX 3080 Ti 20GB版は恐らく何かしらの手違いで販売されてしまったのですが、少なくともGeForce RTX 3080 Ti 20GB版が量産されていた段階でNVIDIAが急遽方針を変えた事は確かなようです。過去には元々GeForce RTX 3080 Ti 20GB版で採用予定だったGA102-250 GPUの刻印が消された上にGeForce RTX 3090で搭載されるGA102-300の刻印が追加されたGPUが出回っていたという話もあるので、これも量産を開始したものの急遽方針を変え、損失を最小限に抑えるため、このような措置を取ったと見られています。
GeForce RTX 3080 TiになるはずだったGeForce RTX 3090が出現
NVIDIAがなぜこのような流出リスクや損失が発生するような段階でGeForce RTX 3080 Ti 20GB版をキャンセルしたのかは不明ですが、個人的には2021年末までに発売が予定されているSuperシリーズを投入する事が急遽決まったため、GeForce RTX 3080 Ti 20GB版は一旦お蔵入りとする判断が下されたのかもしれません。少なくとも製造上に問題があってキャンセルされたとかであればGeForce RTX 3090にGeForce RTX 3080 Ti 20GB版のGPUが搭載される事は考えられませんので商品戦略上の都合でキャンセルされたと推察されます。
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