Intel Raptor Lake不具合は製造過程に原因がある可能性? 不具合率は10~25%に及ぶ模様
IntelのRaptor Lake系CPUで発生している不具合についてはIntelが公式声明を6月に出していますが、その声明では不具合を調査中の旨しか明かされず、具体的な原因や対策は明かされないままとなっています。その結果、最近ではIntel内部の人間や、Intelの主要顧客であるOEM、サーバー、ゲーム開発者など各方面からリークが出始めている状況に陥っていますが、海外のYoutuberであるGamers NexusがこのRaptor Lakeの不具合についてIntelが有力視している不具合原因について情報を入手したと共に、OEMから寄せされている不具合率や影響範囲についても明らかにしています。
Gamers Nexusが関係者から入手した情報によると、不具合の影響を受けるCPUはCore i5-13600K/KFからCore i9-13900K/KF/F/T/無印含む11モデルで、すべてRaptor Coveに切り替わったB0ダイを搭載するモデルになっているようです。なお、関係者によるとRaptor Lake Refreshについてはまだ情報を得られていないようですが、同様にB0ダイを搭載するCore i5-14600K以上のモデルまたは一部のCore i5-14400/Fも影響を受けると考えられます。
また、影響を受けるチップは2023年3月から2024年4月ごろに製造されたものである可能性があるとのことです。そのため、Raptor Lakeが発売されてすぐに買ったユーザーはもしかしたら影響を受けていないかもしれませんが、この辺りはまだ不確定情報のようです。
また、複数の関係者から以下の情報を入手しているようです。
- 一連の不具合は製造工程に原因があるようで、有力なのは耐酸化コーティングの塗布が不適切で、半導体内の回路が酸化し不具合に繋がっている
- 不具合の軽減を図るために動作クロックを下げるマイクロコードを配布予定。ただ、これだけでは不具合解消にはならない。
- Intel製品を多く採用するOEMがクロック倍率を53xにすると不具合が軽減できる可能性を発見されている
- Intel製品を採用する大手OEMはRaptor Lake系CPUの在庫を処分(パージ)し始めている
- サポートする最大メモリー速度をDDR5-5600からDDR5-4800に変更予定
- Raptor Lake不具合の影響を受けた顧客の中にはヘッジファンドや銀行など巨大企業が含まれており、Intelに対して対策を行うように強い圧力をかける可能性がある
この中で最も気になるのが1番目の不具合原因が製造工程にあるという情報ですが、どうやらこれはIntelの主力OEMからの情報によるもので、情報源によると不具合が話題になり、当初疑われていた過大な電力は主因ではなく不適切な製造に伴いCPU内部の部品が酸化し、結果として高い動作クロックだと不具合が発生するというもののようです。また、この酸化が酷い場合には起動時にBSoDが発生するなどPCとして使えない状態にも陥るようです。
チップの製造時には原子レベルで膜厚を制御し、半導体をコーティングする原子層堆積法(ALD)と言う工程があるのですが、この工程で不純物、例えば酸素を含んでいてコーティング対象の銅と反応し酸化してしまったり、ALDに使うチャンバーの残留物を排出するパージ作業が不適切でチャンバー内に残留した酸素を含む不純物などが残されていたなどが挙げられるようです。
不具合率は10~25%。影響台数は大手OEMのみで数百万台に及ぶ可能性
Intel製CPUを扱う大手OEMからの情報によると、B0ダイを搭載するCPUについて不具合率は約10~25%程度で推移しているとのことです。一方で、Intelは不具合率が0.035%であるとOEMには報告するなど情報が大きく喰い違っているようです。
これに対してOEM関係者はIntelが嘘をついているのか、不具合率について正しい情報が得られていないとして情報が正しくないと判断しているようです。また、このOEMが記録した6月時点の不具合率は約10%で推移していたとのことです。
なお、IntelはOEMに対してCPU関連の不具合によりRMAされたCPUについて費用の払い戻しを始めているそうで、IntelとしてもOEMの信頼をこれ以上落とさないように金銭的な補填を始めている様です。
Ryzen 9000シリーズのレビューでRaptor Lake系は袋叩きに遭う可能性も
今回の不具合原因とは直接関係ないものの、Gamers NexusではこのRaptor Lakeの不具合について調査を進めていたものの、原因がまとまり切らない状態でも動画を作った理由として間もなく発売されるAMDのRyzen 9000シリーズのレビューが迫っているためと述べています。その理由としてはRyzen 9000シリーズの比較対象としては第14世代CPUのRaptor Lake Refreshなどが挙げられるのですが、現状動作クロックや電圧設定が変わったりする状況では正しい比較が行えない他、Intelから公式見解が無い中で信頼性と言う観点から『Intel製品はお勧めできない』と言う判断しかできないと述べています。
おそらくGamers Nexusに限らずほかのレビューでも比較対象は第14世代Raptor Lake Refreshになると考えられますが、このままIntelが今後の対策などを明確にせずRyzen 9000シリーズが発売されれば比較対象として挙げられても、注釈として『不具合がある』などネガティブに言われる可能性は高いため今後の対策含めて早急に発表することが求められます。
Intel Raptor Lake系CPUの不具合はここ最近はOEMからのリークなどが出始めるなど再炎上している状態になっていますが、この辺りはIntelのコミュニケーション不足であると言わざるを得ない状況です。今回、この不具合を取り上げたGamers Nexusは過去にGIGABYTE製電源の不具合問題やASUSの修理ボッタくり問題、Neweggの詐欺まがいな販売方法など消費者に不利益になる問題について追及する傾向があり、海外でも一定の評価を得ていると言えます。そのため、今回このYoutubeチャンネルに取り上げられたことで、Intelがこの問題について何かしら内容が伴った公式発表を行わない限りGamers Nexusをはじめほかのテック系Youtuberからこの件をネタにされてしまう可能性が高いです。
また、あと2週間でAMDのRyzen 9000シリーズが発売されるのですが、この時に登場するレビューでもRaptor Lakeの不具合は必ず言われてしまうため、これ以上のイメージダウンを避けるためにもうIntelは消費者向けにコミュニケーションを取る必要があると言えます。
Intel Needs to Say Something: Oxidation Claims, New Microcode, & Benchmark Challenges | Gamers Nexus Youtube
コメント
コメント一覧 (1件)
現時点で10~25%なら、時間経過すると劣化が更に増えるので厳しいかもしれませんね。