Intel Raptor Lake不具合の原因がリーク。eTVBが原因でCPU劣化へ。近日中にマイクロコード修正へ
Intelの第13世代Raptor Lakeおよび第14世代Raptor Lake Refreshのデスクトップ向けCPUで問題になっていたCPUの不具合についてIntelは2024年5月中頃までに声明を出すことを明らかにしていました。しかし、2024年6月中旬を超えても音沙汰ない状態が続いていますが、ドイツのIgor’s LABがIntelのRaptor Lake系CPUで発生している不具合についてその原因とIntelが考えている最終的な修正方法についてリーク情報を入手しました。
原因はeTVB (Enhanced Thermal Velocity Boost)のマイクロコード
IntelのRaptor Lake系CPUの不具合に関連した資料は『eTVBが設定動作クロックを誤る可能性』というタイトルでマザーボードメーカー各社に送付したようですが、資料自体はNDAによって保護されているため、公にはされない可能性が高いようです。ただ、このNDA資料をIgor’s LABが入手したようで、その内容について一部を明らかにしています。
根本原因はEnhanced Thermal Velocity Boost (eTVB)を司るマイクロコードアルゴリズムの設定値が誤っていたことです。社内調査の結果、この誤った設定値により高温時に動作クロックや電圧を増やしてしまい、動作の不安定化を招きます。
Intel NDA資料
Intelの第13世代Raptor Lake以降、Enhanced Thermal Velocity Boost (eTVB)という機能が導入されています。これはCPUが使える電力とCPU温度に応じてブースト時の最大クロックをさらに超える動作クロックでの動作を行い、パフォーマンスを向上させる機能になっています。ただ、このブースト機能が本来動作してはならない温度領域で動作してしまい、CPUの不安定化を招くとのことです。
高温時に高電圧に晒すことでCPU劣化も確認
Raptor Lake系CPUの不具合については不適切な設定に加え、これらが原因でCPU自体が結果しているという話もありましたが、どうやらCPUの劣化も事実のようで、Intelの資料にも記載があるようです。
故障解析の結果、13世代と14世代のKバリアントCPUでは、累積的に高温時に高電圧に曝露された結果、最小動作電圧が変動していることが示されています。この根本原因は以前のBIOS設定で高温時でもCPUにブースト動作クロックでの動作を行うために高電圧を入力することが挙げられます。なお、第12世代Alder Lakeなど過去の世代ではデフォルトの動作電圧および動作クロックが低いため、この様な問題は発生していませんでした。
Intel NDA資料
eTVBの不適切な設定値およびパフォーマンス維持のため各社マザーボードが自由に設定できた動作クロックおよび電力、電圧設定によりRaptor Lake系CPUは高温時でも高い動作クロックを維持することが可能だったようです。ただ、この高い動作クロックの維持には電圧を高める必要があり、高温時に高電圧を流すことでCPUの劣化が促進され、最小動作電圧がシフト。結果的にゲームのロードなどCPUに負荷がかかる場面でCPUが不安定になってしまうようです。
2024年7月19日までに新しいマイクロコードを追加したBIOSへの更新を要求へ
Intelはすべての顧客に対してマイクロコード0x125を反映したBIOSを2024年7月19日までに更新するように求めます。このマイクロコードにはeTVBが温度のしきい値を超えた場合に高い動作クロックでの動作を防ぐようになっています。
Intel NDA資料
Intelは上記のeTVBに関連するマイクロコードを修正したBIOSを展開予定で、各社マザーボードメーカーに対して修正したBIOSの展開とユーザーへの更新を2024年7月19日までに行うように求めているようです。
なお、この資料では不具合の原因と対策について説明が行われていますが、すでに劣化したCPUに対する処置は明言されていないようです。ただ、近いうちにIntelは公式に声明発表を行うと考えられるため、この声明の中ですでに劣化が見られるCPUへの対応策なども明らかにされると見られています。
IntelのRaptor Lake系CPUで発生している不具合はThermal Velocity Boostと呼ばれるブースト機能が原因だったようで、Raptor LakeやRaptor Lake RefreshのCore i9系に集中している理由の1つだったようです。
ただ、この発表ではTVB機能を修正することを明言しているだけで、すでに劣化したCPUについては明らかにされていません。そのため、不安定化しているCPUを所有しているユーザーへの対応についても交換や動作電圧がシフトしているのであれば専用のBIOS設定などの準備が期待されます。
Intel äußert sich intern zum “13th and 14th Generation K SKU Processor Instability Issue” und bringt endlich ein umfassendes Update der eigenen Untersuchung (Leak) | Igor’s LAB
コメント
コメント一覧 (2件)
メーカーPCやBTO等、BIOSを自分で更新出来ない人達への対策はどうするのかな、と思います。
既に保証が切れていても、製品の欠陥が明らかであれば、何らかの責任が生じるでしょう。
全製品のリコールでしょうね