AMDが Radeon RX 9060 XT 8GB版の存在意義を主張も批判に。実際はBTO向けへの配慮?

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AMDが Radeon RX 9060 XT 8GB版の存在意義を主張も批判に。実際はBTO向けへの配慮?

AMDはComputex 2025において、RDNA 4アーキテクチャを搭載するミドルレンジ向けグラフィックスカード「Radeon RX 9060 XT」を発表しました。競合のNVIDIA GeForce RTX 5060 Tiに近い性能を持ちながら約20%安価な価格帯で提供されるなど、前評判は上々です。しかし、このRX 9060 XTに用意されるVRAM 8GB版について、同社のゲーミング部門責任者がその存在意義を擁護する主張を行ったところ、厳しい指摘が相次いでいる模様です。

Radeon RX 9060 XTはミドルレンジ向けのNavi 44 GPUを搭載し、32コアのCompute Unitと128-bitのバス幅で20GbpsのGDDR6が搭載されます。ただ、このGDDR6の容量は16GB版に加え8GB版も登場していますが、この8GB版を巡っては先に登場したNVIDIAのGeForce RTX 5060 Ti 8GB版やRTX 5060で大きな批判を集める事態となっています。こうした状況を受け、メキシコのテック系情報チャンネルを運営するMichael Quesada氏がAMDに対し、なぜこれほどまでに8GB版の提供に固執するのかという疑問を投げかけました。

この疑問に対し、AMDのゲーミング部門責任者であるFrank Azor氏は「世界中の多くのプレイヤーは依然として1080p解像度でゲームをプレイしており、世界的に人気の高いゲームのほとんどはeスポーツ系タイトルです。これらの環境では8GBを超えるVRAM容量は必ずしも必要とされず、市場に需要があるからこそ製品を供給している」と主張。さらに、「8GBでは不足だと感じるユーザーのためには16GB版を用意している」と述べ、8GB版の存在意義を強調しました。

実際に、Steamのハードウェア利用状況調査においても、プレイヤー数の多い人気タイトルの上位には『Counter-Strike 2』、『Dota 2』、『Apex Legends』といった、比較的少ないVRAM容量でも動作するタイトルが並んでおり、この点においてはAzor氏の主張は一定の正当性があると考えられます。

Designed to unlock ultra-smooth gaming at 1440p, the Radeon RX 9060 XT is built for players who expect more.

AMD Introduces New Radeon Graphics Cards (AMD)

しかしながら、AMD自身はRadeon RX 9060 XTについて「1440p解像度でもスムーズなゲームプレイを実現する」と公式プレスリリースでうたっており、この点とAzor氏の主張との間に矛盾があるとの指摘も出ています。さらに、先代のRX 7600シリーズでは、16GB版を「RX 7600 XT」、8GB版を「RX 7600」とモデル名を明確に区別していたのに対し、今回はNVIDIAと同様にVRAM容量が異なるにもかかわらず同じモデル名で販売しています。この販売手法についても、消費者の混乱を招き、意図的に誤認させようとしているのではないかという疑念が持たれている状況です。

同じ名前で異なるVRAM容量にするのはBTOへの配慮?

同じグラフィックスカードのモデル名で異なる仕様の製品を用意するという手法は、NVIDIAが以前から用いてきたものであり、過去にはCUDAコア数やメモリバス幅が異なる複数のGeForce GTX 1060を市場に投入したり、最近ではVRAM容量のみが異なるバリエーションを同じモデル名でRTX 4060 TiやRTX 5060 Tiでラインアップしていたりします。

ただ、このようにモデル名の中にバリエーションを持たせるなど消費者の混乱を誘うようなことをわざわざしている理由についてHardware UnboxedはBTOのためであると主張しています。BTO PCは、パーツ単体で購入するユーザーと比較してPCに関する専門知識が深くない層もターゲットに含みます。RTX 5060 TiやRX 9060 XTの8GB版は16GB版に比べて販売価格を大幅に抑えることができるため、BTO PCの価格を低く設定し、これらの消費者層に対して「お買い得感」を演出しやすくなります。このため、NVIDIAもAMDも、一定の批判を覚悟の上で、このようなマーケティング戦略上有利な8GBモデルを市場に投入していると考えられます。

8GB版は価格次第。でも将来登場するゲームでは厳しめ?

8GBのVRAM容量についてはAMDが主張する通りeSportsタイトルなど軽めのゲームであればプレイすることは可能で、そのようなタイトルを主にプレイする人であれば安価な8GB版を買っても特に問題とはなりません。しかし、1440p解像度でのプレイや、グラフィックス設定を重視する最新タイトル、例えばUnreal Engine 5を採用したゲームや、2026年に登場すると噂される『Grand Theft Auto VI』などでは、1080p解像度であっても8GBというVRAM容量が性能のボトルネックとなる可能性は十分に考えられます。

特に、近年のゲーム開発はPCだけでなく、PlayStation 5やNintendo Switch 2といったコンソールゲーム機もターゲットとして同時並行で進められることが一般的です。これらのコンソールゲーム機は8GB以上のVRAMを搭載しているため、限られた開発期間の中で、PC版のためだけにVRAM使用量を8GB以下に厳しく最適化する動機が、ゲーム開発者側には働きにくいのが現状です。

したがって、様々なPCゲームを快適にプレイしたいというユーザーは、購入時の価格が多少高くなったとしても、将来性を見越してRadeon RX 9060 XTやRTX 5060 Tiの16GB版を選択する方が賢明と言えるでしょう。また、BTO PCを購入する際にも、単に「Radeon RX 9060 XT搭載」や「RTX 5060 Ti搭載」といった表記だけでなく、必ずVRAM容量を確認してから購入判断をすることをお勧めします。

ソース

Frank Azor | X

https://twitter.com/AzorFrank/status/1925651286998794443

AMD Introduces New Radeon Graphics Cards and Ryzen Threadripper Processors at COMPUTEX 2025 | AMD

https://www.amd.com/en/newsroom/press-releases/2025-5-20-amd-introduces-new-radeon-graphics-cards-and-ryzen.html

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この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 今さらVRAMが8gbじゃ厳しいってのは分かるんだけど。

    悲しいかなゲーミングノートじゃ、まともな選択肢ないのよ。5070laptopすら8gb。かと言って昨今のゲーミングデスクトップは、発熱も消費電力も化け物すぎる。あれでプレイすると室温が10℃上がるからね。

    夏場はヒーターつけながらクーラー回してる感覚になるわ。

  • 8GBを売るなら区別しやすい型番つけてよ、ってとこだよねぇ

  • 何で自分で物買う判断も出来ない人間に配慮しないといけないんですかね。
    通販サイト見ても8GBと16GBで容量もちゃんと明記されてる。
    それでも判断付かないような人間は自作しない方が良いです。
    GTX1060 3GB/6GBの頃から言われていた事なのに甘えすぎ。

    ノートPCは実装面積の問題があるのでAPUが高性能化する事を期待するしかないです。
    dGPUは電力と熱の問題があるので、バッテリーじゃもう無理。

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