PlayStation 5 (PS5)の値下げは困難に。プロセス微細化がコスト低減に寄与しない状況に?
PlayStationやXboxシリーズでは新世代化される度に性能が大きく向上し、価格も高くなる傾向にありますがライフサイクル後半にかけて廉価モデルの登場など最終的には先代モデルに近い価格まで落ちるケースがあります。ただ、PlayStation 5ではライフサイクル中盤の薄型モデルでは世界的に値下げは行われず、日本では円安の影響もあり値上がりと言う状況になっています。
また、ソニーのCEOである十時 裕樹氏も2024年2月14日発表の2024年3月期決算発表会にて、PS5ではPS4に比べて高性能なチップを搭載しているという背景から、ライフサイクル後半にかけてコストダウンをしていくことが困難になっているとも明らかにしています。
従来のPS4やPS3ではライフ初期に比べて、ライフ中盤から後期にかけてはコストの大部分を占めるCPUやGPUの半導体プロセスを微細化し、チップ単価の引き下げや、微細化に伴う消費電力の低減で冷却機構、電源ユニットや筐体サイズ低減でコストダウンを行い、販売価格の引き下げによる販売テコ入れを行うのが王道でした。しかし、PS5や将来的に登場するであろうPS6ではプロセス微細化にってコストダウンするという教科書通りのやり方は通用しないとリーカーは述べています。
NVIDIAやAMD関係のリークをしているKepler氏によると、トランジスター辺りのコストは現在主流のFinFETではほぼ横ばい状態が続いていましたが、3nm以降で主流となるGAAFETや1nm以下で主流となるCFETではコストが上がる可能性が高いとのことです。
また、プロセス微細化によるコスト低減効果もここ最近は目減りしてきているとのことです。
ソース:TSMC 3 nm Wafer Pricing to Reach $20,000; Next-Gen CPUs/GPUs to be More Expensive | TechPowerUp
プロセス微細化によるコスト低減効果は1枚のウェハーから取れるダイの数を増やすことで実現できるのですが、プロセス微細化はより高度な製造技術が要求されるため、ここ最近ではコストが大きく高騰する事例が増えています。例えば7nmと5nmではコストが1.6倍に跳ね上がり、5nmから3nmでは25%増えると言われています。
ただ、この跳ね上がったコスト以上に1枚のウェハーから取れるダイが増えれば良いのですが、プロセス微細化をしてもCPUやGPUに内蔵されているキャッシュに使うSRAM密度は思うように上がっていない現状もあるため結局プロセス微細化をしてもコストが上がるだけと言う事が起きています。
そのためなのか、PS5に内蔵されているAPUは初期型は7nmでしたが、モデル中盤で発表された薄型PS5でも世代とコスト面で等しい6nmのAPUが搭載されています。
Kepler氏はPS5の値下げについては困難であることを示唆するとともに、より高度な半導体製造プロセスが用いられるPS6など次世代ゲーム機では性能がほとんど上がらないか、性能が上がる代わりに価格が大きく引き上げられるかのどちらかになると締めくくっています。
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