NVIDIAでは2022年秋頃以降に次世代GPUであるAda Lovelaceアーキテクチャーを搭載するGeForce RTX 4000シリーズの発売を控えていますが、世界的なインフレや需要の先食いによる影響を懸念してNVIDIAはGeForce RTX 4000シリーズの生産数を減らす方向で検討しているようです。
NVIDIA GeForce RTX 4000シリーズ
NVIDIAでは2020年9月2日にGeForce RTX 3080などAmpereアーキテクチャーを採用したRTX 3000シリーズの発表を行いましたが、その後継モデルであるAda Lovelaceアーキテクチャーを搭載するGeForce RTX 4000シリーズが2022年秋以降に発表される事が予定されています。
このRTX 4000シリーズではTSMC 5nmを利用して製造が行われる見込みとなっており、NVIDIAでは十分な量おGPUが供給可能なように約1000億円規模を支払TSMCに行い5nmプロセスでの生産枠を押さえている事が2021年12月頃に明らかになっていました。
しかし、2022年7月時点では世界、特にアメリカでは深刻なインフレによる景気後退の懸念がくすぶり始めており、NVIDIAでは抑えたTSMCの生産枠について一部をキャンセルする事を検討しているようです。
NVIDIAはTSMC 5nm生産を一部キャンセルしたいがTSMCは拒否?
台湾のDigiTimesによると、NVIDIAではGeForce RTX 3000シリーズでサムスン電子の8nmプロセスを採用しましたが、RTX 4000シリーズからはTSMCへ戻る事を決定しており、それに際してTSMC 5nmプロセスの生産枠を確保するために1000億円規模の予約金を支払ったと言われています。
2021年当時は半導体が不足しており、TSMCの半導体はレガシー、最先端含めてパンク状態で多くの企業は数年先の需要を見越して予め先端プロセスにおいては生産枠を確保する動きがありました。
しかし、2022年に入るとNVIDIAでは大量に生産したGeForce RTX 3000シリーズがマイニング需要の蒸発や新型コロナウイルスによるPC買い換えによる先食い需要、インフレによる景気後退が顕在化したため売れ残りが深刻化。そのため、NVIDIAは予め確保したRTX 4000シリーズ用のTSMC 5nm生産枠の一部をキャンセルする事を検討しているようです。
TSMC側はNVIDIAのキャンセル要望を受け入れるつもりは無い様で、最大限の譲歩は確保したウェハーでの生産および出荷を一四半期または2023年Q1まで延期する事だけのようです。また、NVIDIAによる生産延期やキャンセルにより生じた生産枠を買い取ってくれる企業を探す責任がNVIDIA側に生じているようです。
今回、NVIDIAがTSMCから確保した生産枠の一部をキャンセルする理由は景気後退も大きな要因をしめており、AMDやAppleもTSMCに対して減産を要望している事です。そのため、NVIDIAが代わりにTSMC 5nmを生産する企業を探すのは容易では無く恐らく多額の違約金か売れる見込みのない製品を無理やり作るという事が起きる可能性があるようです。
世界、特にアメリカではロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス発生時に行った大規模な金融緩和が影響してインフレが深刻化しているようです。そのため、アメリカではPCやGPUなど高価な製品に対する需要は2022年下半期にかけて需要が減るという見方がされています。
PC関係の動向にフォーカスすると2020年から2021年にかけてステイホームや在宅勤務の拡大でPC本体やGPUなどパーツ単品は飛ぶように売れましたが、これはあくまでマイニングなど突発的な需要の他に、元々あった需要を先食いしていたにすぎず、RTX 3000シリーズが多くのユーザーに渡った事で恐らくRTX 4000シリーズについては爆発的に売れるという事はあまり現実的では無いかもしれません。
ただ、ここでNVIDIAが生産枠を急激に絞ると次は供給不足となりまた在庫不足を引き起こし、増産した時には次世代製品が控えているという悪循環に陥る可能性があるため、あまり野心的な計画にはして欲しくないのが正直な所です。
コメント
コメント一覧 (2件)
>TSMC 5nmプロセスの生産枠を確保するために1000億円規模の予約金を支払ったと言われています。
当時のリークで70億ドル、現在では100億ドルとか言われてますから桁が一つ少ないですね
NVIDIAは四半期ごとに日本円で数千億円ずつ支払っていたと噂されていますよ
NVIDIAがTSMCに支払った金額は100億円なら余裕で1兆円超えてます
>最大限の譲歩は確保したウェハーでの生産および出荷を一四半期または2023年Q1まで延期する事だけのようです。
発売時期がさらに四半期から来年頭にまで伸びるという事はきわめて重要な情報ですが、なぜこの記事内ではこの事について極力触れずに流しているのでしょう
消費者的にはむしろこっちの方が遥かに重要な出来事なのですが・・・