NVIDIAとテック系メディアとの関係が悪化。評価を操作しようとしているとレビューアーが批判

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NVIDIAとテック系メディアとの関係が悪化。評価を操作しようとしているとレビューアーが批判

NVIDIAは、GeForce RTX 5000シリーズの発表会において、RTX 5070がRTX 4090並みの性能であるとうたったり、DLSS 4によって数値を大きく見せるような比較グラフを提示したりするなど、その発表方法に以前から疑念の声が上がっていました。しかし、これまでは発売前に独立したレビューが公開されることで実際の性能が明らかになり、消費者は客観的な情報に基づいて製品の購入判断ができたため、大きな問題とはなりませんでした。

しかし、GeForce RTX 5060 Ti以降、NVIDIAは自社に都合の悪いレビューが表に出にくいように情報統制を意図したかのような動きを見せ始めました。例えば、RTX 5060 Tiでは16GB版のみをレビュアーに先行して提供し、より安価な8GB版のレビューサンプル送付を遅らせるという対応を取りました。さらに、RTX 5060においては、レビューサンプル自体はレビュアーに送付するものの、必要なドライバーの公開を発売日以降に設定することで、発売日当日のレビュー掲載を実質的に不可能にしました。その一方で、NVIDIAが指示した特定の条件下でのベンチマーク結果を公開することを条件に、一部メディアにのみドライバーを事前提供するという、レビュー内容の操作とも取れる戦略を実行していることが明らかになっています。

こうしたNVIDIAの一連のレビュー操作とも言える動きに対し、Gamers NexusやHardware Unboxedといった海外で影響力の大きいレビュアーが、NVIDIA側の問題行動を告発する動画を公開。NVIDIAの行き過ぎたメディア戦略を厳しく批判するとともに、NVIDIAによるメディアコントロールの試みに関する事例を調査するに至るなど、両者の関係は著しく悪化している模様です。

消費者がNVIDIAへの関心が高いことを狙ってYoutuberをコントロール?

Gamers Nexus (以下、GN) によると、NVIDIAはGeForce RTX 5000シリーズの目玉機能の一つであるDLSS 4「MFG4X (Multi-Frame Generation 4X)」を強くアピールするため、GNが公開するレビュー動画のベンチマーク結果にMFG4Xの数値を含めるよう、様々な圧力をかけてきたとのことです。

実際にNVIDIAとのやり取りではGNのコンテンツでも人気がある冷却機構を設計するエンジニアやレイテンシーに詳しいエンジニアとエンジニアリング視点での対談について、最近になってNVIDIA側から「MFG4Xを十分にアピールしなければ(今後の対談は)実現できない」といった趣旨の通告があったとしています。GN側もNVIDIAからの要望に従いMFG4XやDLSSについて30分を超える詳細な検証コンテンツを2本制作したとのことですが、NVIDIAはこれらの検証だけでは満足せず、各グラフィックカードのレビューにMFG4X適用時の結果を横並びで掲載されていないことに不満を示し、『MFG4Xをレビューのチャートに含めるか、さもなくばエンジニアとのインタビューへのアクセスを失うか』といった選択を迫るなど、本来独立して行われるべきレビュー記事の内容にまで介入する姿勢を見せているとGNは主張しています。

また、GNが他のメディアに対して聞き取り調査を行った結果、同様の要望や圧力を受けたと証言するメディア関係者が多数存在したとのことです。製品の取り上げ方、ベンチマークでの比較対象機種の選定、特定機能の強調などをNVIDIA側から指示されるケースもあったとされ、これらの動きは、特定の地域の広報担当者レベルの問題ではなく、NVIDIA本社主導の広報戦略として、メディアによるNVIDIA製品の取り上げ方をコントロールしようとする意図がある可能性を示唆している、とGNは分析しています。

なお、Gamers NexusとNVIDIAの関係は決定的に悪化したと見られ、GNは来るComputex 2025の期間中も他のメディア関係者への聞き取り調査を継続し、NVIDIAがメディアなどに対して圧力をかけ、自社に有利な情報が流れるように操作を試みた具体的な事例について、その圧力の内容、手法、目的などをさらに調査し公表するとしています。

NVIDIAの方針に従わないならレビューサンプルを送らない前科あり

NVIDIAのメディアに対するこうした強硬な姿勢は過去にも問題視されたことがあり、その代表的な例が、オーストラリアのテック系YouTuberであるHardware Unboxed(以下、HUB)をレビュープログラムから除外した一件です。

HUBではRTX 2000シリーズのレビューにおいてNVIDIAが導入した目玉機能であるレイトレーシングやDLSSについて「現時点では現実的に使える機能ではない」と評価し、レビューでもRTX 2000シリーズの付加価値は高いとは言えず、ベベンチマークも従来のラスタライズ性能を重視する方針を採っていました。しかし、NVIDIAはこのレビュー内容に不満を示し、NVIDIA本社から広報担当者がHUBと直接会議を申し込んできたとのことです。そして、その場でレビュー方針について不満を示し、レビュー方針の変更を迫ったとのことです。ただ、HUB側が折れなかったため最終的な対応としてNVIDIAはRTX 3060 Ti以降にレビュープログラムからの除外を明らかにしたとのことです。

ただ、NVIDIAのこの対応を巡っては他のレビューアーからも大きな批判を集めてしまい、最終的にはレビュープログラムからの除外を撤回しましたが、HUBによると影響力があるメディアに対してレビューサンプルを送らないと言った処置は批判を集めるほか、レビューサンプルを別ルートから入手することも可能であるため、NVIDIAは戦略を転換。そして、それがGeForce RTX 5060で本格的に行われた協力的なメディアにのみ事前にドライバー提供をする『プレビュー』と言う方法と指摘しています。

GeForce RTX 5060のプレビューは批判回避とステマを両立?

NVIDIAのGeForce RTX 5060では、グラフィックスカード本体はレビュアーに送付されたものの、動作に必要なドライバーは発売日以降にしか提供しないという方針が採られました。そのため、RTX 5060の発売日当日には、ほとんどのメディアがレビュー記事を掲載できませんでした。その一方で、DLSS 4 (MFG4X) の結果とRTX 3060やRTX 2060 SUPERといった旧世代カードとの比較を行う「プレビュー」記事の掲載に同意した一部メディアに対しては、NVIDIAはドライバーを事前に提供しました。HUBによると、この手法ではNVIDIAとメディアの間に直接的な金銭の授受が発生しないため、多くの国で義務付けられているスポンサー表記(広告であることの明示)が不要になるという側面があります。

しかしHUBは、この手法は金銭のやり取りこそ発生しないものの、コンテンツ制作に不可欠な情報(ドライバー)が他のメディアよりも早く提供されることで、当該メディアにとってはウェブサイトへのアクセス数や動画の視聴者数増加といった実質的な利益が期待できるため、極めてグレーであり、ステルスマーケティングに近い手法であると厳しく批判しています。

なお、NVIDIAにとってGeForce RTX 5060の発売で、GeForce RTX 5000シリーズの初期ラインナップ展開は一区切りと見られます。しかし、2025年末から2026年末にかけて登場するとされるRTX 5000 SUPERシリーズや、どこかのタイミングで発売されると噂されるRTX 5050などの今後の製品において、NVIDIAがメディアに対してどのような対応を取るのか、そしてGamers Nexusの調査によって新たな問題が明らかになるのか、引き続き注目が集まります。

ソース

NVIDIA’s Dirty Manipulation of Reviews | Gamers Nexus

https://www.youtube.com/watch?v=AiekGcwaIho

Nvidia Accused of Manipulating Gamers Nexus – Our Thoughts | Hardware Unboxed

https://www.youtube.com/watch?v=IYcD0gW0yVk

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この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
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