デスクトップやノートPCにおいてはNVIDIAのDLSSを用いてパフォーマンスを犠牲にせずゲームの解像感を向上させることが可能になっていますが、このDLSSに使われるTensor CoreのようなNVIDIAのAI機能がMediaTekが将来的に投入するSoCに統合される可能性があるようです。
MediaTekのスマホ向けSoCにNVIDIAのAI機能が統合される可能性。2024年以降に発売
スマホ向けの高性能SoCであるDimesityシリーズを開発するMediaTekは、NVIDIAと協力してArmベースのSoCにNVIDIAのRTXシリーズGPUを組み込んだChromebookの開発を進めています。この件は2021年4月頃に明らかにされました。しかし、Digitimesによれば、MediaTekではレイトレーシング機能ではなく、NVIDIAのTensor CoreなどのAI機能をスマホ向けSoCに統合する可能性があると報じられています。
MediaTek製のハイエンドSoC、Dimesity 9200は、競合のQualcomm Snapdragon 8 Gen 2などのハイエンドモデルに搭載されているAI機能と同等レベルの性能があると言われています。しかし、MediaTekはNVIDIA製のAI機能をSoC内に統合することで、AI機能を競合に対して大幅に向上させ、QualcommのSnapdragon 8が支配的なハイエンドスマホ向けSoCでの採用数を増やしたいと考えているようです。
NVIDIAのAI機能には、写真や動画撮影時に使えるものから、既にPC向けグラフィックスカードに採用されているパフォーマンスを下げずに解像感を向上させるDLSS2.0、ゲームや動画のフレームレートを倍増させるDLSS 3.0など、多岐にわたるものがありますが、MediaTekに搭載されるAI機能がどのようなものなのかは現時点では明らかになっていません。
GPUを作る企業とスマホ向けSoCを作る企業間での提携は初めてではありません。Samsungは、例えばAMDのRDNA 2アーキテクチャをハイエンドSoCで協業し、同社のハイエンドSoCのExynos 2200にRDNA 2 GPUを統合しました。しかしながら、この協力は成功とは言い難く、GPUパフォーマンスはライバルのQualcomm SnapdragonやApple Bionicと比べると高くなく、成功とは言えない出来でした。そのため、今回のMediaTekとNVIDIAの協業で生まれるSoCがどのような出来になるかは、登場するまで分かりません。MediaTekでは、NVIDIA製AI機能を統合したSoCを2024年頃までに市場投入することを目指しているとのことです。
MediaTekのSoCと言うとQualcomm Snapdragonシリーズの下位版と言う位置づけで、安価なスマートフォンに搭載される傾向が多かったです。しかし、最近では性能を大幅に上げてきている事やSnapdragon 8 Gen 1が爆熱で失敗した事が重なりフラッグシップ向けスマホでも採用数を伸ばしており、中国市場でのプレミアムスマホ市場シェアではMediaTekが2021年頃は12%のシェアだったものが、2022年には34%にまで伸ばしてきています。そんな勢いに乗ってMediaTekではNVIDIAのAI機能を取り込み、Qualcomm Snapdragonより高性能なスマホ用SoCの開発を進めていると見られています。
個人的に、スマホ向けのAI機能として主に写真や動画撮影時の処理にAIを使うのかなとも思うのですが、DLSS 3.0を使ってゲーム時はGPU負荷を減らしつつ60fpsに補正する事でバッテリー持続時間を延ばしたり、インカメ利用時にAIで目線を合わせているように補正する機能など面白そうなことは沢山出来そうですのでどのような製品が出るのか期待がかかります。
NVIDIAとしてはノートPCやデスクトップ向けでは既に市場の8割のシェアを握っているため、スマホ市場に参入するいい機会にもなりますのでこの協業の行方がどうなるのか気になる所ですね。
コメント
コメント一覧 (3件)
正 dimensity
誤 dimesity
MediaTekは、お気に入りのSoCメーカーなので気になりました。
>>NVIDIAとしてはノートPCやデスクトップ向けでは既に市場の8割のシェアを握っているため
えっ、そうなの、じゃあ、なるべくIntelかAMDのグラフィックカードを購入するようにするよ。
あまりにも1社寡占状態は看過できないからね。