NVIDIAではゲーミング用GPUであるGeForceがマイニングなどに利用できないようにマイニング性能を制限するLite Hash Rate(LHR)を搭載したGeForce RTX 3000シリーズを2021年6月頃から出荷しており2022年から発売がされている一部グラフィックスカードにおいてはLHRv3と呼ばれる最新版LHRが搭載されていますが、このLHRv3についてもNicehashによってほぼ無効化されたようです。
最近解除がされたLite Hash Rate
NVIDIA GeForce RTX 30 Lite Hash Rate (LHR) has been fully unlocked – VideoCardz.com
NVIDIAでは2021年頃から本格化したEthereumマイニングブームでゲーミング用GPUであるGeForceシリーズがマイニングなどで利用される事を防ぐためにLite Hash Rate(LHR)と呼ばれるEthereumマイニングをGPU側が検知した場合GPU性能を約50%程度に制限する機能をRTX 3090を除く、すべてのGeForce RTX 3000シリーズに2021年6月頃から投入しています。
NVIDIAのLHRマイニング性能制限を若干無効化するマイニングソフトが出現
しかし、2022年5月初旬にNicehashがこのLHRを完全に無効化するNiceHash QuickMinerをリリースしましたが、このバージョンはLHRv2まで対応という事でLHRv3を搭載するGeForce RTX 3050やRTX 3080 12GB版など2022年に発売がされたグラフィックスカードは対象外となっていましたが、このLHRv3についてもNicehashはほぼ無効化に成功したようです。
RTX 3050で30MH/sを発揮。効率は悪い
Nicehashによると、GeForce RTX 3050やRTX 3080 12GBに搭載されているLHRv3についてはLHRv2と若干、マイニング制限を行う仕組みが異なる事から無効化に時間を要しているようですが、Nicehash QickMiner v0.5.4.2.にてLHRv3に掛けられているマイニング制限の90%を解除する事に成功したとの事です。
このLHRv3解除にはNVIDIAの最新ドライバーが必須で、512.15以上をインストールする必要があるとの事です。
GPUモデル | *LHRv3制限を90%無効あしたモデル |
---|---|
RTX 3050 LHRv3 | ~ *30 MH/s |
RTX 3060 LHR or LHRv2 | ~ 50 MH/s |
RTX 3060 Ti LHRv2 | ~ 60 MH/s |
RTX 3070 LHRv2 | ~ 60 MH/s |
RTX 3070 Ti LHRv2 | ~ 81 MH/s |
RTX 3080 10GB LHRv2 | ~ 98 MH/s |
RTX 3080 12GB LHRv3 | ~ *104 MH/s |
RTX 3080 Ti LHRv2 | ~ 120 MH/s |
GeForce RTX 3050についてはLHR状態では13~18MH/s程度しかハッシュレートは出ないように設定がされていましたが、Nicehashを使う事で30MH/sにまで性能を向上させる事が出来るようです。また、RTX 3080 12GBについても40MH/s程度がLHR状態では限界でしたが、LHRを90%無効化する事で104MH/sと言う非常に高い性能を発揮できるようになるようです。
なお、GeForce RTX 3050についてはマイニング効率が高いとは言えず、RTX 3050ではマイニング時は100W程度の消費電力が必要な事から、1W辺りのハッシュレートは約0.3という事で他のメジャーなGPUのマイニング効率と比べるとかなり低いと言えます。一方でRTX 3080については12GB版のデータはありませんが、恐らくRTX 3080 10GBと似た性能になると言えるため、下位の方ですがRTX 3050よりはマシなレベルのようです。
GPUモデル | MH/s | W | PPW |
---|---|---|---|
CMP 170HX | 164 | 250 | 0.656 |
Radeon RX 6600 | 30 | 50 | 0.600 |
Radeon RX 6600 XT | 32 | 55 | 0.582 |
GPRO X060 | 29.4 | 60 | 0.490 |
Radeon VII | 93 | 200 | 0.465 |
AMD BC-160 | 69.5 | 150 | 0.463 |
GPRO X080 | 41.6 | 93 | 0.447 |
GeForce RTX 3060 Ti | 58 | 130 | 0.446 |
GeForce RTX 3070 | 58 | 130 | 0.446 |
Radeon RX 6800 | 64 | 150 | 0.427 |
Radeon RX 5700 XT | 55 | 130 | 0.423 |
GeForce RTX 3080 10GB | 91 | 230 | 0.396 |
Radeon RX 5600 XT | 40 | 110 | 0.364 |
GeForce RTX 3090 | 114 | 320 | 0.356 |
GeForce RTX 3050 | 30 | 100 | 0.300 |
マイニングブームは去ったため影響はほぼない見込み
ここ最近、アメリカの利上げによる仮想通貨市場の下落、電気代の高騰などによりグラフィックスカードでマイニングを行うという需要は大きく減ってきています。実際に、5月初旬にNicehashがLHRv2を完全無効化した後、マイニング目的にグラフィックスカードが品薄になるのではと一部では懸念されていましたが、結果的にはグラフィックスカードの買い占めなど在庫に影響が出る事態は起きず、2022年に入り始めてから下落傾向だったグラフィックスカード販売価格も低下方向に推移する状況となっていました。
恐らく、今回のLHRv3の解除についてもRTX 3050の在庫に影響を与える事は考えにくく、特に焦って買いにいくなど自作PCユーザーが何か対策に出る必要性は全くないと考えられます。
LHRv3についてもNicehashではLHRの無効化に成功していますが、正直タイミング的には遅く電気代も高い中でマイニングをするユーザーがどれだけいるのかは謎です。
Ethereumについては年内にETH 2.0への移行が計画されており、仮想通貨価格に莫大な影響があるアメリカも利上げ方向から転換する事はETH 2.0以降前には起こらない事は確です。Nicehash側では頑張ってLHRを無効化したのでしょうが、この努力がNicehashに多くの利益をもたらす事は無さそうです。
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