Minisforum MS-02の基本的な仕様について
Minisforum MS-A1は主にミニPCを製造、販売するMinisforum製のミニPCですが、普通の人が使うようなミニPCほど小さくなく、ミニデスクトップに近いモデルになっています。
CPUにはデスクトップ向けのZen 5をベースにしたRyzen 9 9955HXを搭載し、価格はOSやSSD非搭載のベアボーンキットが167,990円、64GBのDDR5と1TBのSSDとWindows 11 Proを搭載したモデルが219,990円になっています。
CPU | AMD Ryzen 9 9955HX (16コア/32スレッド 最大5.4 GHz) |
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グラフィックス | Radeon 610M (CU2コア、最大2.2 GHz) |
メモリー | DDR5 5600MT/s 16GB x 2 = 32GB |
ストレージ | PCIe Gen 4.0 x4 (NVMe SSD 1TBを搭載) アダプター使用U.2へ換装可能 拡張可能なNVMeスロット ・PCIe Gen 4.0 x4 ・PCIe Gen 4.0 x4 |
OS | Windows 11 Pro |
インターフェイス | フロント側 – USB3.2 Gen1 Type-A x 2 – USB 2.0 Type-A x1 – 3.5mm ステレオジャック リア側 – 10G SFP+ポート x2 – 2.5Gbps イーサーネットポート x2 – USB3.2 Gen 2 Type-A x 1 – USB3.2 Type-C (Alt-Mode対応) x2 – HDMI 2.1 x 1 |
拡張スロット | PCIe Gen 4 x16 (x8動作) (ロープロファイル・シングルスロット) |
ワイアレス機能 | Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.2 |
サイズ | 幅196 x 奥行き189 x 高さ48mm |
電源 | 19V ACアダプター (最大240W) |
価格 | Ryzen 9 9955HX:167,990円~ Ryzen 9 7945HX:115,990円~ |
パッケージ内容と同梱物



Minisforum MS-A2のパッケージは一般的なものになっていますが、届いた瞬間にその重さに驚きますが、それ以外は一般的に良くあるパッケージになっています。

同梱されている付属品はACアダプターの他に、長さ100cmのHDMIケーブルのほか、NVMeスロットからU.2対応SSDに変換する変換アダプターが含まれています。

同梱されるACアダプターは過去にレビューしたMS-01より大きく、容量は240Wまで対応しています。
Minisforum MS-A2のデザインと品質、拡張性について
ここではMinisforum MS-A2のデザインや品質そしてミニPCではあるものの気になる拡張性について解説します。
デザインと品質:前面と後面以外は金属製



外観はMS-01と同じく、拡張性に重点を置いた設計になっているため、大きさは一般的なミニPCと言うよりミニデスクトップに近いサイズになっています。
筐体の材質は本体の大部分を覆う側面と天板、底面はアルミ製になっており、前後のインターフェースが備わる部分はプラスチック製になっています。

インターフェースは前面には左から3.5mmジャック、USB3.1 Gen2 Type-Aを2つとUSB 2.0を1つの合計3ポートあります。

後面には左から10G SFP+ポートと 2.5Gbps イーサーネットポート、USB3.2 Gen 2 Type-Cを2つ備え、HDMI 2.1ポートを1つ、そしてUSB3.2 Gen 1 Type-Aを2ポート備えるなど非常に高い拡張性を持っています。
拡張性:SSDやメモリー、グラボなどデスクトップに近い拡張性


本体へのアクセスはツールレスで可能で、本体後ろにあるボタンを押して引っ張ると内部へのアクセスが可能になります。

分解された内部は表面にはCPUクーラーとPCIe Gen 4 x16スロットが用意されており、ここにはロープロファイルの1スロットまで対応した拡張カードを搭載することが可能になっています。そのため、NVIDIA RTX A1000などのワークステーション向けグラフィックスカードの装着が可能です。


本体底面はNVMe SSDなどを収めるエリアになっており、冷却用のファンが半分ほど覆っており1つのNVMe SSDにしかアクセスできません。しかし、このファンを取り外すと残り2つのNVMe SSDへのアクセスが可能になり、最大3つのPCIe Gen 4対応NVMe SSDを追加することが出来ます。


また、同梱のNVMe SSDからU.2へ変換するアダプターをM.2に装着することで、U.2 SSDの使用も可能になるなどミニPCとしてはかなり稀な拡張性を持っています。

なお、メモリーはDDR5-5600MT/s対応のSO-DIMMが搭載されており、これらへのアクセスは表面の冷却用ファンにある3つのネジを外したのち、ファンが外すと現れます。このSO-DIMMは48GBまで対応しているため、合計96GBのメモリー容量まで拡大することが出来ます。
ちなみに、レビューサンプルでは16GB x2で合計32GBのメモリーを搭載していますが、実際に購入できる容量は32GB x2で合計64GBからになっています。
Minisforum MS-A2の各種パフォーマンスについて
内蔵のAMD Ryzen 9 9955HXについて

今回提供されたサンプルモデルではAMD Ryzen 9 9955HX、コードネーム『Fire Range』が備えられています。
このCPUはAMDのZen 5アーキテクチャーで構成されるCPUで、デスクトップに登場しているRyzen 9 9950XをノートPC向けに流用したCPUになっています。そのため、コア数は16コア32スレッドとなり、L2キャッシュは16MB、L3キャッシュは64MB搭載し、動作クロックは最大5.4 GHzと超ハイスペックになっています。
一方で内蔵GPUはデスクトップ向けをベースにしているため、RDNA2ベースのRadeon 610Mを搭載しています。この内蔵GPUはCompute Unitを合計2基しか搭載していないため、GPUを使うアプリケーションは使用できますが、グラフィックスを多用したゲームをプレイすることは不可能なスペックになっています。
Minisforum MS-A2に搭載されている状態でのTDPは75Wに設定されており、これはRyzen 9 9955HXの設定可能なTDPの最大値になっているため、パフォーマンス重視の設定になっています。
Minisforum MS-A2のCPUパフォーマンス

MS-A2の性能はデスクトップ向けと同等のRyzen 9 9955HXを搭載していることから、非常に高い性能を実現しており、Core i9-13900に近い性能を発揮しています。一方で、先代のデスクトップ向けRyzen 9 7950Xや現行のRyzen 9 9950Xに対してはコア数などは同じですが、TDPが170Wに設定されていることから10~20%ほど劣っています。しかし、性能面ではデスクトップ向けのハイエンドCPUと同等レベルに位置しています。
PCMark 10のスコア:4Kの動画編集も可能なレベル

PCMark10においては合計4779ポイント記録されています。
各項目においてはウェブブラウジングや各アプリの起動など日常用途の快適性を表すEssentialsやWordやエクセルなどオフィス用途での性能を示すProductivityでは高いスコアを記録しているため、日常やオフィス用途での使用で不満に思うことは無いと言えます。
RAW画像や動画編集、3Dのレンダリングなどを評価するDigital Content Creationでは写真編集やレンダリングと言ったCPUパフォーマンスが重視される点では7000点以上を記録しているため、高い性能を持っています。ただ、動画編集に関してはGPU性能も重視されるため、点数が伸び悩んでおり、ゲーミングではもちろん非常に低いスコアを記録しています。
そのため、このPC単独で使用する場合はレンダリングやNASサーバーなどとしてCPU負荷が求められる場面では性能が発揮できますが、動画編集などGPU性能も求められる場面では単独使用は厳しく、拡張スロットにグラフィックカードを搭載するなどが必要になると考えられます。
Minisforum MS-A2の消費電力と長時間の負荷を与えた際の動き

Minisforum MS-A2に内蔵されるRyzen 9 9955HXはTDPが75Wに設定されていることから、Cinebench R23動作時は最初の100秒間はブースト状態となり、最大100WでCPUが動作しています。ただ、CPU温度が上昇するにつれてCPU電力は徐々に下がり、設定値の75Wでの動作に切り替わります。
動作クロックはブースト時は全コア動作時で最大4.0 GHzほど、75Wでの動作に移行すると3.5 GHzで動作しています。
また、温度を見ると徐々に上がる傾向にあるものの80℃は維持できているため、CPUの冷却能力は十分確保されていると言えます。
内蔵されているSSDの性能

内蔵されているSSDは前世代モデルのMS-01と同じく、Kingston製OM8TAP41024K1と呼ばれるPCIe Gen 4対応NVMe SSDが搭載され、容量は1TBになっています。
この製品は読み取り性能が約6100MB/s、書き込みが約5300MB/sと非常に高速な性能になっているため、日常的な使用や動画編集など重めのワークロードでもストレスを感じることが無い性能を持っています。
Minisforum MS-A2の日常での使い心地と使い勝手
PCではパフォーマンスなどが重要でもありますが、毎日使うという点で気になる使い勝手や使い心地について取り上げて行きます。
ミニPCで気になるライセンス問題は問題なし

WindowsライセンスはMinisforum MS-A2はOEM_DM Channelと記載されているライセンスのため、正規ライセンスが使われている事が確認できます。
ハイエンドデスクトップ並みのCPU性能
搭載CPUが16コアのRyzen 9 9955HXを搭載していることから、CPU性能はハイエンドデスクトップ向けCPUに近い性能になっており、レンダリングや動画エンコードなどCPU性能が左右される用途において最適です。また、CPUに負荷がかかっていてもファンノイズはあまり大きくない点も非常に優れています。
SFP+やU.2対応など刺さる人には刺さる装備

インターフェースには10Gbpsまで対応するSFP+やU.2などエンタープライズ用途でも使われるような装備を持っているため、高速なNASを構築しないなど用途が明確であれば非常に優れたミニPCであると言えます。
Minisforum MS-A2の最終評価:使いこなすにはスキルが居るミニPC
- 小型筐体ながらグラボも備えれる高い拡張性
- Ryzen 9 9955HX搭載のためデスクトップと同等性能
- 10G SFP+やU.2対応などサーバー運用を視野に入れた仕様
- 本体のファンノイズは非常に静か
- ミニPCとして価格が高め
- USB4を非搭載
- SFP+など普通の人が使わない装備が多数
Minisforum MS-A2はSFP+やU.2対応、ハイエンドデスクトップ並みのCPU性能などミニPCと言いつつもワークステーションやサーバーのような装備、性能を持っているなど一般的なミニPCとは常軌を逸する性能を持っています。特に先代のMS-01と比べるとノートPC向けのCore i9-13900Hからデスクトップ向けがベースのRyzen 9 9955HXに変更されたことによるCPU性能向上は著しく、恐らくCPU性能が足りないと感じる場面は無いと言えます。
拡張性はSFP+やU.2、PCIe Gen 4対応x16スロットを備えていたり、NVMe SSDを最大3本まで搭載できるなど優れている点も魅力です。ただ、残念な点としてはMS-01ではUSB4を搭載していましたが、MS-A2ではRyzen 9 9955HXにUSB4用コントローラーが内蔵されていないことから、USB 3.2 Gen 2に格下げされている点で、eGPUを繋いだりする際にはパフォーマンス低下が心配されます。
価格はRyzen 9 7945HXを搭載するベアボーンキットの定価が115,990円とかなり高価で、Ryzen 9 9955HX搭載になると167,990円とかなり高くなります。そのため、自宅用にサーバーを作りたい、ルーターを作りたい、ワークステーションを作りたいなどSFP+や高性能なCPU、高い拡張性が明確に活かせる人向けの製品と言え、万人受けするPCではないのは確かです。ただ、このようなニッチな製品を用意し、MS-01から続いて後継機種を出すなどMinisforumの姿勢は評価できるほか、Ryzen AI Max搭載PCやNASサーバーなどもComputex 2025では展示していたため、今後どのような製品を発売するのか注目です。
コメント
コメント一覧 (3件)
このクラスのCPUにだとどうしても小さく作りたいという必要性に迫られなければ、Micro-ATXで作った方が使い勝手が良いのよね。
(このシリーズだと予めオンボードで10GbE SFPポートが用意されているというメリットがあるが)
10G光回線の性能を引き出すために、MS-A1を使っています。ラックマウント機はファンノイズが爆音すぎるので、静かなファンノイズが大きなポイントです。だからコンパクトPCというより家庭用サーバ機という位置づけだと思います。
MS-A2では、Intel CPUの安定性問題を回避するために、Ryzenに変更したのでしょうね。その結果、USB4からダウングレードしてしまったのは残念です。
UM700にLinux入れて、小さいモニターと一緒に持ち運んでプログラミング用に使っています。
開発用に欲しいけど、この値段だと買えないかな。会社も買ってくれない。
Lowプロファイルのグラボが刺さる持ち運べるミニPCが欲しいです。