コンシューマー向けとしてRNDA2アーキテクチャーを採用したRadeon RX 6000シリーズを発表した所のAMDですが、HPC向けにCDNAアーキテクチャーを採用したAMD Instinct MI100を11月16日に発表します。
CDNAアーキテクチャーを初採用したMI100
AMDでは、コンシューマー向けとしてRDNAアーキテクチャー、HPC向けにはCDNAアーキテクチャーを開発していますが、データーセンターなどHPC向けのCDNAアーキテクチャーを搭載したAMD Instinct MI100が11月16日に発売されます。
FP32計算は34TFLOPs。メモリーには32GBのHBM2eを搭載
CDNAアーキテクチャーは、RDNAアーキテクチャーと違い、浮動小数点演算など計算に特化した構造となっており、HPC市場をターゲットとしライバルはNVIDIAのAmpere A100アクセラレーターカードになります。
仕様は、Arcturus GPUがベースとなっており、CDNAアーキテクチャーの改良版に当たります。消費電力については、最大で300Wから350Wとなり、メモリーは32GBのHBM2eを搭載します。ちなみに、この32GBものHBM2eメモリーでは、帯域幅が約1.225TB/sあるとされています。
NVIDIA Ampere A100より13%単精度浮動小数点演算が高速化
パフォーマンスでは、Radeon Instinct MI100は競合するNVIDIA Volta V100とAmpere A100と比較されています。ただし、A100との比較では存在しない300Wモデルが紹介されているため、シミュレーションでの比較となります。
この比較では、Radeon Instinct MI100はNVIDIAのAmpere A100より、13%、Volta V100に対しては約2倍以上の単精度浮動小数点演算を有するとしています。また、消費電力などコストパフォーマンス面においては、Instinct MI100がVolta V100に対しては2.4倍、Ampere A100に対しては50%ほど上回るとしています。
GPUコンピュートに最適化した『CDNA』アーキテクチャーとは?
ここまで読まれて、『CDNA』とはそもそも何か分からない方も居ると思うので少しだけ紹介します。AMDではデータセンターやシミュレーションなど産業用途で高い計算能力が必要なコンピューティング用GPU、ゲームの描写など高いグラフィックス性能が必要なGPUを1つのアーキテクチャーで賄っていました。それが、PlayStation 4 などに搭載されている『GCN』(Game Core Next)アーキテクチャーでした。しかし、当たり前ですが用途は大きく異なり両方のいいとこ取りではどうしても無駄が発生してしまいます。そこで、AMDではゲーム用には『RDNA』とRDNAと共有部分は有しながらもGPUコンピューティングに特化した『CDNA』の2つのアーキテクチャーを製作するようになります。
2020年時点で世界一のスパコン『富岳』を越える『Frontier』に搭載か
AMD Instinctシリーズは、現在アメリカで開発中のスーパーコンピューター『Frontier』と『El Capitan』に搭載される予定となっています。今回、紹介されたInstinct MI100のカスタム版が『Frontier』に搭載されるのではと考えられます。
2020年時点で日本が開発したスーパーコンピューター『富岳』が世界1位の計算能力を誇っております。その計算能力は415PFLOPSです。
一方で、2021年に稼働予定でAMD Instinctを搭載する『Frontier』は1500PFLOPS(1.5EFLOPS、エクサフロップ)と『富岳』の3倍以上となります。
AMDは最近自作PC市場で存在感を増していますが、決算資料などを確認するとこのようなHPC分野においてもシェアを伸ばしている模様です。実際に今回紹介したスーパーコンピューター『Frontier』の他に『El Capitan』でも採用される事が決定されており名実ともに評価されているようです。スーパーコンピューターの性能は『富岳』などはPFLOPS(ペタフロップ)でしたが、2021年には遂に次の単位である(エクサ)まで進むようです。このようなスーパーコンピューターは医療や自然現象の解析にも使われるため、進化すれば未知のウイルスに対するワクチン研究や地震や異常気象の解明や予測に役立つとされており人類の生活をより楽にしてくれるものと言えます。
コメント