GPUの販売価格は2021年から長らく定価の2倍付近で売られる事がデフォルトとなっていましたが、2022年1月から販売価格は下落方向に向かい始めています。この動きは2月中旬になっても継続しておりもしかしたら正常化に向かうかもしれませんが、AMD、NVIDIA共に定価販売を演出している可能性もありそうです。
2022年はGPU価格正常化に向かうのか?
GPUの販売価格については2021年は定価の最大3倍にまで膨れ上がるなど混乱に満ちていました。サプライチェーンの破綻の尾を引いて半導体不足に陥り、同時に仮想通貨Ethereumの価格高騰とそれに応じてブームとなったマイニング、転売屋の存在などが原因でしたが、2021年末からGPU販売価格の高騰の原因の一つでもあった仮想通貨の価格が大きく下落し、2021年12月中旬から2022年1月末にかけてGPUの販売価格は下落方向に向いていました。
一方で、GPU以外に目を向けると資源価格特に原油価格などは高騰し、金融緩和の影響もあってか世界各国でインフレが加速、半導体製造に必要な部材や物流費などは高騰し、TSMCなどは値上げに踏み切るという話があり先行きは怪しい状況ではありましたが、3D Centerが22年2月13日付でまとめた販売価格調査では1月末に引き続き、GPU販売価格の下落は続いているようです。
Graphics card prices in 🇩🇪🇦🇹 at Feb 13, 2022
👉 Availability is good to excellent, shortages is a thing of the past.
👉 Average price exaggeration falls 19% (in 3 weeks).
👉 Still high price level: AMD +45% over MSRP, nVidia +57% over MSRP.https://t.co/CAxk3r73h7 pic.twitter.com/8M6d1SDSZt
— 3DCenter.org (@3DCenter_org) February 14, 2022
GPU価格が2ヵ月連続で大幅下落。在庫は大きく積みあがる
3DCenterでは2021年1月から月に2回ほど、ドイツやオーストリアのパソコンパーツ販売店で売られているGPUの販売価格をまとめていますが、2021年は値動きが非常に激しく5月頃はNVIDIA製GPUは定価の3倍程度の価格で販売されるなどカオスな状況となっていました。この後、価格は一気に下がり定価の1.5倍ほどに収まるものの2021年末にかけて徐々に価格は高騰していきました。
しかし、2022年1月2日の調査では2021年8月8日調査依頼の前回調査に比べて販売価格下落が確認され、1月23日の調査では下落幅はNVIDIAで8ポイント、AMDで15ポイントの下落に拡大。
そして今回の2月13日付の調査ではNVIDIAで20ポイント、AMDで18ポイント下落と販売価格が下落がより鮮明になってきています。
価格以外にも良化している指標があり、それがGPUの在庫量です。GPUの在庫量は1月23日の段階でも3DCenterが記録を付けて以来過去最高の在庫量を示していましたが、2月13日付の調査では更に在庫量が増えている状況になっています。
GPUなどの在庫量がコロナ前の水準を超える。価格下落は近い内に起こる?
数日前にUBSの調査にてCPUやGPUなどPCパーツやコンシューマー家電の在庫量がコロナ前の水準を大幅に超えているという話が出ていましたが、GPUに関しては高値でも大量に買ってくれるEthereumマイナーの存在がEthereum価格下落で大幅に減ったと見られています。また、例え再度Ethereum価格が高騰してもEthereumマイニングは近い内に出来なくなる事や資源価格の高騰で電気代が世界各地で上がっているためマイニングをしても収益を出せない事態になっています。
そのため、現状のGPU価格で買ってくれる人は大幅に減っていると見られており、今後ウクライナ対ロシアなど地政学上のリスクで半導体不足となるリスクは若干あるものの、GPU価格は近い内に正常化に向かう可能性は価格推移を見る限りは高くなってきています。
販売価格は低下。一方でAMDとNVIDAでは定価販売を演出していた模様
販売価格については徐々に下落しており、消費者にとっては喜ばしい状況になりつつありますが、高い販売価格での批判を恐れたAMDとNVIDIAは『定価』が嘘ではない事を証明するために、定価販売を自作自演していた疑惑があるようです。
AMD’s Fake Day 1 MSRP: Paying AIBs to hide higher Pricing – YouTube
Moore’s Law is Deadによると、Radeon RX 6500 XTの販売に関してレビューなどでコストパフォーマンスが高いと言われるように一部のAIBや大手量販店に対してインセンティブを支払、発売日に入荷されている在庫に関しては北米価格の定価である200ドルで販売するという事をしていたようです。初回在庫がなくなった後は大体250ドル程度で販売が行われているとの事です。
インセンティブの支払いについては不明なものの、発売日にだけ定価に近い価格で販売されるという事は日本でも起きています。それが、1月28日に発売が開始されたNVIDIAのGeForce RTX 3050の販売時で、一部AIB製のGeForce RTX 3050に関しては39,800円と言う価格で販売が行われていました。
しかし、このモデルは初回販売限定だったようで現在はこれらモデルは『販売終了』と各サイトに記載されています。そして、現在入手できるRTX 3050は5万円以上するモデルしか存在しないという状況になっています。
AMDもNVIDIAも最近は『定価』が全く意味を持たないため、定価を付けずに販売したいのが本音のような気もしますが、急にそのような対応を行えば批判を買うのは確実です。一方で、Radeon RX 6500 XTやGeForce RTX 3050などエントリーモデルを販売価格に近い『定価』を提示してしまうとレビューなどで酷評され、販売に悪影響が出るのが目に見えています。そのため、AMDやNVIDIAでは何かしらのインセンティブをAIBや量販店に提示して初回だけ定価で販売させるという苦肉の策に出た可能性があるようです。
AMD Ryzen 9 6900HS内蔵GPUのベンチマーク出現。Cyberpunk2077は44fps
GPUの価格については引き続き下落傾向となっていますが、今後もこの動きは続くと考えられます。と言うのも、今の価格ではそもそもGPU価格が高すぎて一般的なユーザーは手を出しません。また、高値でもGPUを買っていたマイナーは仮想通貨の下落や電気代高騰で新たにGPUを買ったり、マイニングファームを開設する事は困難な情勢になっています。
卸売りや量販店でも在庫量は積みあがっているようで、年末をめどにAMDやNVIDIAが新商品を投入するため、タイミングを誤れば大量の売れない在庫を抱え込んでしまう可能性がありますので、どこかのタイミングで商品を売り払う必要に駆られるため引き続きGPU価格は下がり、やがては2019年のコロナ前の水準にまで落ち着くのではと考えられます。