QualcommがSnapdragon8+ Gen1を発表。半年でサムスンからTSMCに移行。

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多くのAndroidスマートフォンに搭載されているSoCを手掛けるQualcommでは2021年11月末に韓国のサムスン電子で製造がされるSnapdragon 8 Gen1を発表しましたが、2022年5月20日にQualcommはTSMCで製造されるSnapdragon 8+ Gen1を発表しました。この通常では考えられない速さでの製造元変更ですがサムスン社の低い歩留まりが原因だったようです。

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ハイエンドスマホ向けSoC、Snapdragon 8シリーズ

Snapdragon 8 Plus Gen 1 Goes Official With Increased Clock Speeds on All Cores, Upgraded GPU, Lower Power Consumption, More (wccftech.com)

Qualcomm社はアメリカで4Gや5Gなどの通信関連のソフトウェアや半導体の製造やスマートフォン向けSoCなどを開発している企業となります。このQualcomm社が開発しているスマートフォン向けSoCのSnapdragonシリーズは多くのAndroidスマートフォンやタブレットに搭載されており、最上位モデルはSnapdragon8シリーズ、この中で最新鋭のモデルはSnapdragon 8 Gen1と呼ばれる製品となっています。

このSnapdragon 8 Gen1は2021年11月末に発表がされ、サムスンの4nmプロセスで製造が行われ、1個前のSnapdragon 888に比べるとCPU性能は20%、電力効率は30%向上し、GPU性能も30%の向上を行いつつ、消費電力は25%低減している事が発表されました。

このSnapdragon 8 Gen1は2022年Q1から出荷を開始し、2022年中には多くのスマートフォンに搭載されると見られていましたが・・・

約半年後の2022年5月20日、Qualcommは製造をサムスンからTSMC 4nmに移行したSnapdragon 8+ Gen1を発表しました。

TSMCにするだけで、動作クロック向上も消費電力が下がったSnapdragon 8+ Gen1

TSMC 4nmで製造がされるSnapdragon 8+ Gen1の多くの仕様や機能についてはサムスンで製造されていたSnapdragon 8 Gen1と全く同じになっています。しかし、動作クロックや電力効率については大きな改善があるようです。

Qualcommによると、Snapdragon 8+ Gen1のCPUについては構成がSnapdragon 8 Gen1と同じ1+3+4コア構成となっていますが、動作クロックについては3.0 GHzから3.2 GHzへ向上。GPUについてもAnreno 730と呼ばれるGPUを引き続き採用するものの。動作クロックは10%向上する事が謳われています。

元々、Snapdragon 8 Gen1では消費電力と発熱が大きいというスマートフォンにとっては致命的な短所がありましたが、QualcommによるとSnapdragon 8+ Gen1ではGPUとCPUの電力効率は30%と大きく向上しているとの事です。

Qualcommが最も懸念したのは歩留り。サムスンでは35%、TSMCでは初期生産段階で70%超え

Samsung’s 4nm Yields for Qualcomm’s Snapdragon 8 Gen 1 Were at an Abysmal 35 Percent; TSMC Has Produced Better Results (wccftech.com)

Qualcommがたった半年でサムスンで製造されるSnapdragon 8 Gen1をフェードアウトさせ、TSMCで製造されるSnapdragon 8+ Gen1を導入する背景には4nmの割りに低い電力効率と言う点もあったと見られますが、最大の要因はサムスン4nmの歩留りと見られています。

韓国での報道によると、サムスンの4nmプロセスでは歩留りが約35%だったとの事です。サムスンでは歩留りが低くても製造委託先が払う金額は動作品の数だけのため、歩留りの低さがQualcomm側に直接金銭的被害を与える訳ではないのですが、Snapdragon 8シリーズは多くのスマートフォンに供給される主力製品であり、歩留まり35%では供給不足を引き起こす事が確実視されていました。

そのため、Snapdragon 8 Gen1が発表された1か月後の2021年12月頃にはQualcommがSnapdragon 8 Gen1をTSMCで製造する事を検討しているとの報道がDigitimesより出現。2022年2月にはTSMCでサンプル品の製造が開始されている事とサンプル品段階で既に歩留りが70%を超えるというリークが出現するなどTSMCでの製造がほぼ確実視されていました。

そして2022年5月20日、Snapdragon 8+Gen1が発表され、Qualcomm社が抑えたものの、空き枠が生じるサムスン4nmでは同時発表されたミドルレンジ向けSoCであるSnapdragon 7 Gen1が製造される事となるようです。こちらについてはCPU性能やGPU性能がSnapdragon 8 Gen1に比べると低いため歩留まりは多少良化すると見られています。

サムスン製の半導体については自作PC系パーツですと、NVIDIAのGeForce RTX 3000シリーズを採用していました。しかし、RTX 3000シリーズ発売当初は品薄の原因がサムスンの歩留りに問題があると何度もリークが出現、最終的にはTSMCへ移行する説も出ていましたが、QualcommのSnapdragon 8については歩留り問題にキレて本当に移行してしまったようです。

今回、Snapdragon 8+ Gen1が製造されるTSMC 4nmについては、NVIDIA製GPUやApple M2が製造される予定のため、生産枠の空きが殆どないという状況の中、Qualcommが生産に漕ぎ着けた点、追加で払ったコストはかなり大きなものであると予測されます。

これだけ悪い評判のあるサムスンの半導体ですが、AMDがTSMCの枠が抑えられない事からサムスン3nmを採用する最初の顧客になるのでは無いかと言う報道が21年11月頃に台湾のDigitimesから出現しています。

AMDが3nmプロセスでTSMCからサムスン電子へ切り替えを検討中

もしこれが本当であれば供給体制やRyzenやRadeonの売りである電力効率に悪い影響を与える気しかしないので不安しかない状況です・・・

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この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
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