TDP40Wまで対応するノートPC向けファンレス機構がまもなく登場へ
ノートPC向けのクーラーというと高性能なCPUを搭載したモデルではファンを用いた冷却が必須で、薄型化や静粛性を重視するためにファンレス化をした場合には消費電力を抑えた性能を犠牲にする必要があります。しかし、Ventivaという企業が高さ僅か12mmの機構で空気の流れを作る「Ionic Cooling Engine」という技術を発表し、CES2025では実際にこの技術を搭載した製品が登場する見込みのようです。
Ventivaの「Ionic Cooling Engine (ICE)」は縦型のフィンの手前にワイヤーを複数配置し、このワイヤーに電気を流しここを流れる酸素や窒素などのイオン化を促します。このイオン化により酸素や窒素は失った電子を補うために流れを作り、これが空気の流れとなりCPUなどの冷却に必要なエアフローを生み出す仕組みになっています。
ファンレスながらエアフローを生み出す機構としてはFrore AirJetと呼ばれる微小な振動を用いたものが2024年はじめに発表されていますが、この仕組みの大きなデメリットとしてエアフローを生み出すのに必要な電力が大きいことです。例えば通常のノートPCに搭載されるファンでは1Wの電力で1.3~1.5 CFMのエアフローを生み出し、TDP10Wまで冷却が可能です。一方で、Frore AirJetは1Wで0.21CFMしかエアフローを生み出せず、5Wまでしか冷却がでいません。
ただ、今回新たに登場するVentiva ICEでが1Wで1.0CFMとファンには及ばないものの近い性能を持っており、9Wまで冷却ができるなどノートPC向けにも十分使用できる性能を持っているとのことです。
実際に、VentivaのCEOであるCarl Schlachte氏によると当初は15Wクラスまでしか冷却できなかったものの、現時点では25W程度のTDPを持つCPUを冷やせるだけの性能を有しているとのことで、AMDのStrix PointやIntelのLunar LakeやArrow Lake-Uなどにも対応することができます。また、実際にCES 2025でもこのICEを搭載したノートPCが発表される見込みになっています。
なお、今後このICEはさらに冷却性能の向上が見込まれており、40W程度の冷却まで対応するとのことです。40Wまでの冷却に対応する場合、Intel Arrow Lake-Hなど高性能ノートPCまでカバーすることが可能になるなど薄型かつファンレスなノートPCでも高い性能を持つことが可能になりそうです。
ただ、技術的な課題もあるようで、このICEはファンのように高い静圧を発揮でいないため既存のノートPCに搭載されているファンをICEに置き換えただけでは性能は発揮できず、ICEを本体外側に面する部分に置きつつ、CPUなどの熱源とICEを接触される必要があるなどノートPCの筐体設計を大幅に変える必要があります。そのため、初期段階ではコストが高いとみられ、CES 2025で発表されるモデルもハイエンドモデルを中心にラインアップされると考えられます。ただ、この課題をうまく解決することができればノートPCの商品性に直結する薄型化にも大きく貢献するため普及も進むものと考えられます。
Ventiva Unveils Fan-less Cooling for High-performance, Ultra-thin Laptop
Designs | Vantiva
https://ventiva.com/wp-content/uploads/2024/12/20241218_Ventiva-40W-Demo-PR.pdf
The IMPOSSIBLE Laptop Fan… | Dave2D
コメント
コメント一覧 (1件)
周辺部品の劣化や湿度の影響が心配。
恐らくオゾンも発生するので、オゾン劣化の悪影響がどうなるやら。
排気周りの樹脂やゴム部品、周辺機器がどうなるのか。
あと、埃も電極に吸い寄せられるのでクリーニングが必要になるはずだが、メンテをどうするのか。
掃除機やエアブローで雑にメンテしても大丈夫な頑丈さがないと出荷時は良くても……になりえる。
エアフィルターを装着すると静圧が低いので大幅に能力が落ちるだろうし。
という技術的課題はクリアされてるのか気になります。