IntelではCPUの速さをユーザーにわかりやすく示すために、Core i3、Core i5、Core i7などiのあとに続く数字でそのCPUの性能を示していました。そのため、多少でもPCについて知識がある人であればCore i5とCore i7を比べれば「Core i7のほうが高性能」と答えるかもしれませんが、Alder Lake-P搭載ラップトップの場合、Core i5のほうが高性能という場合があるようです。
TDP28W、ラップトップ主力CPUのAlder Lake-P
Intelでは初代Core iシリーズであるNehalemを発売して以来、消費者にCPUの性能をわかりやすく示すためにCore i3、Core i5、Core i7とiのあとに続く数字が大きいほど高性能というモデル名を採用していました。そのため、多少PCを知っている人であればCPUだけ見ればどちらのPCのほうが高性能か大まかに把握することが可能でした。
そんなIntelでは2022年1月に開催されたCES2022にてラップトップ向けCoreシリーズの最新モデルであるAlder Lake-H/P/Uを発表しました。このなかでAlder Lake-PについてはTDPが28W台になるということから、多くのラップトップに搭載がされるCPUとなっていますが、NotebookCheckが複数のAlder Lake-P搭載ラップトップをレビューのためにベンチマークにかけた所、通常であれば性能はCore i5よりCore i7のほうが高くなるはずですが、Alder Lake-Pの場合はCore i7よりCore i5のほうが性能が高い場合があるとのことです。
Core i5がCore i7を超える性能に?
Core i5 beats Core i7: Alder Lake-P creates problems for manufacturers and customers
Notebookcheckでは主に14inchのラップトップでCore i7とCore i5を搭載するモデルをそれぞれ2台づつ用意してCinebench R15ベンチマークを行っています。
Core i7を搭載するラップトップはLenovo Thinkpad X1 Yoga G7とLenovo Yoga 9i 14の2台でPower Limit(PL)は前者がベースとなるPL1が28W、ブースト時であるPL2が64W、後者はPL1が38W、PL2が64Wに設定されています。
Core i5搭載ラップトップではLenovo Yoga Slim 7 Pro 14 G7とSamsung Galaxy Book 2 Pro 13の2台が用意され、CPUの設定としては前者がPL1 50W、PL2 64W、後者がPL1 20W、PL2 40Wとなっています。
なお、Core i7-1270PやCore i7-1260P、Core i5-1240Pの仕様は以下の表の通りになっています。
CPU | P-Core | P-Core Base/Boost | E-Core | E-Core Base/Boost | L3キャッシュ | TDP/MTP |
Core i7-1270P | 4コア/8スレッド | Base 1.60 GHz
Boost 3.50 GHz |
8コア/8スレッド | Base 1.60 GHz
Boost 3.50 GHz |
18MB | 28W/64W |
Core i7-1260P | 4コア/8スレッド | Base 1.50 GHz
Boost 3.40 GHz |
8コア/8スレッド | Base 1.50 GHz
Boost 3.40 GHz |
18MB | 28W/64W |
Core i5-1240P | 4コア/8スレッド | Base 1.20 GHz
Boost 3.30 GHz |
8コア/8スレッド | Base 1.20 GHz
Boost 3.30 GHz |
12MB | 28W/64W |
Core i7-1270P、1260PとCore i5-1240Pの間ではコア数と構成は同じで、違いとしては動作クロックやL3キャッシュ容量が若干異なる程度にとどまっています。
Cinebench R15を複数回連続で動かすベンチマークにおいては、最も高いスコアを記録したのはPL1が50W、PL2が64WとなっているCore i5-1240P搭載のLenovo Yoga Slim 7 Pro 14となっています。上位のCPUであるはずのCore i7-1260Pを搭載するLenovo Yoga 9i 14に比べると最大ブースト時のスコア(1回目のベンチマーク結果)はCore i5が1.5%、平均2.5% Core i7を上回るスコアを記録しています。また、PL1が28W、PL2が64WのLenovo Thinkpad X1 Yoga G7についてはCore i5-1240P搭載のLenovo Yoga Slim 7 Pro 14に比べると1回目のベンチマークでも8%、平均では23%も下回る結果となっています。
ラップトップ購入の際はメーカー設定のTDP(PL1/2)まで調べる必要あり?
今回のNotebookCheckが行ったベンチマークで主に14inchラップトップで比較が行われていましたが、ベンチマーク結果には大きな差がありました。結果順は各CPUに設定されているPL1(ベースとなるTDP)が高い順に並んでおり、Core i7を超えていたLenovo Yoga Slim 7 ProはPL1の値は50Wと他のモデルより圧倒的に高いPL1値が設定されていました。
メーカーのホームページだけではCPUに設定されているPL1やPL2の値は掲載されていません。そのため、ほとんどのユーザーは『Core i7-1270P』CPUのモデルのみで判断することとなりますが、もし可能であればラップトップを比較検討する際はレビューサイトなどでCPUのモデルの他に、そのCPUのPL1やPL2の値についても確認したほうが良いかもしれません。
最近のラップトップに搭載されるCPUはメーカー各社がTDPの値を冷却やバッテリー持続時間の観点で調整が可能となっており、これによりメーカー側はラップトップを開発する際により高い自由度を手に入れる事が可能となりました。しかし、その結果、同じTDP帯の製品でもメーカーが設定したTDPの値が異なることで、Core i7よりCore i5が性能面で上回るなどユーザー側からするとわかりにくい状態となっています。
IntelがTDP値を厳格に制限すればユーザーにとってはわかりやすくなる反面、製品の自由度は下がることとなるので、この問題をすぐに解決することは難しそうですが、せめてメーカー側は製品のホームページにPL1やPL2の設定値を記載するなどユーザーができるだけ知れるようにはしてほしい所です。
コメント
コメント一覧 (4件)
Core i5-1260Pとは一体?
ごちゃごちゃになっていましたが修正しました。
ご指摘ありがとうございます。
GPUとかもTGP次第で逆転が普通に起こりうるのに今更?
前世代もそうでしたよ