NVIDIAは2022年2月16日に2021年Q4決算を発表しました。この中でデータセンターおよびGeForceなどを販売するゲーム部門では市場予測を上回る好調な売上高を記録していますが、マイニングGPUとして2021年から投入されたCMPについてはQ3に比べて売上高が77%も落ちているようです。
NVIDIAが2021年通期決算と2021年Q4決算を発表
NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2022 | NVIDIA Newsroom
NVIDIAでは2022年2月16日に2022年通期決算と2022年Q4決算を発表しました。決算発表の内容としては全体としては非常に好調でデータセンター部門では前年同期比で71%増の32億6000万ドル、ゲーム部門は前年同期比で37%増の34億2000万ドルを記録したとの事です。
このデータセンター部門とゲーム部門の売上はアナリスト予測の32億ドルと33.6億ドルを上回る値を出しており、全体での売上高は前年同月比で53%増の76億4300万ドルを記録、純利益は前年同月比の2.1倍の30億300万ドルを記録するなど売上高、純利益共に過去最高の値を記録しました。
ただ、大好調のデータセンター部門とゲーム部門とは対照的に、去年4月頃には2022年Q1時には1.5億ドル近い売上を出すと好調ぶりをアピールしていたマイニング専用GPU、CMPの売上が2022年Q4決算にて大幅な売上高低下になっているようです。
CMPシリーズの売上高が前期より77%下落。
NVIDIAが発表した決算資料によると、マイニング専用GPUであるCMPシリーズに関しては2022年Q4では2400万ドルの売上高を記録したとの事ですが、2022年Q3では1億500万ドルの売上を記録していたことから前四半期との比較では売上高が77%も減少したと決算資料にて報告がされています。
NVIDIA CMPシリーズについては2022年Q1での売上高は1億5500万ドル、Q2の売上高は2億6600万ドル、Q3では1億500万ドルで安定して1億ドルを超える売上高を維持していました。
この急激な売り上げ減少の背景には、Ethereum価格の下落やEIP-1559によるマイニング量の減少、そして2022年中頃にマイニングが不可能なProof of Steakへの移行が計画されているなどマイニング用機材を買っても投資額を償却できるほどのリターンが期待できない他、マイニングファームに対する当局の規制や電気代などエネルギー価格高騰と言う要因もあると考えられます。
どちらにせよ、CMPシリーズの売上高の大幅な下落はGPUを利用したマイニングが終焉に向かっているという見方をする事が出来そうです。
マイニング需要蒸発でゲーミング用GPUの売上高にも大きな懸念
マイニング用GPUであるCMPの売上が大きく落ちている現状に対してアナリストからは懸念材料として見られているようです。サミット・インサイトグループのアナリストによると『ゲーミング用GPUの売上高の多くにはマイニング用途での売上が含まれており、仮想通貨マイニングの需要が低迷すれば影響を受ける』と分析しており、今後CMPの売上高低下に留まらず、ゲーミング用GPUを売るゲーム部門の売上高の減少にも繋がるのでは無い懸念があるようです。
ゲーミング用のGPUについては欧州での在庫量は2021年初めから集計を取る中で過去最高の在庫量を記録し、UBSによる調査ではGPU限定ではないですが、多くのPC用パーツの在庫量がコロナ前の水準を大幅に超える在庫量に積みあがっていると分析が出ています。
ゲーミング用GPUが仮想通貨のマイニングに利用されたのは今回が初めてでは無く、2017年末から2018年初頭にかけても同様にハイエンドGPUが高値で取引されるという事態になっていました。しかし、2018年中頃から仮想通貨の価格が大きく値を下げた際には、マイニングに使われた大量のGPUが中古市場に流出した事や、GPU価格の値下がりが遅かった事から、GPUの売上高が大幅低下。
NVIDIAの2018Q3決算時には滞留在庫引当金が拡大し、業績は市場予測を下回る状況となり株価が16%も下がる事態が起きました。NVIDIAのファンCEOはこの現象を仮想通貨による二日酔いが思ったほど長引いたともコメントしていました。
2022年現在の状況は2018年当時と比べると、マイニング制限がゲーミング用GPUには搭載されていたり、マイニング専用GPUであるCMPが発売されているなど状況は異なるものの、それでもゲーミング用GPUが今後中古市場に出回る可能性は高く、同時に新品GPUについては価格が全く落ちていません。一方で、2022年末までには新製品が投入が予定されているため、2018年当時ほどは決算に悪影響を出すとは考えられませんが、滞留在庫引当金の拡大やゲーミング用GPUの売上高減少など決して安泰と言う状況ではないのは確かなようです。
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NVIDIAでは2018年の教訓からマイニング制限であるLite Hash RateをGeForce RTX 3000シリーズには搭載すると同時に、マイニング以外の用途には一切使えないCMPシリーズを投入しています。これにより、マイニングに使われたGPUが中古市場に出回るのを防ごうと考えていたようです。ただ、中古GPUもNVIDIAの売上高に悪影響与える存在ではありますが、もう一つの原因は販売価格の正常化に時間がかかった事です。
当時も2022年現在と同様にGPU価格は大きく高騰しましたが、価格正常化までにはかなりの時間を要し、消費者は『価格が下がってから買おう』と考える人が多く、その結果在庫量の増加や売上減少に繋がったようです。2018年も2022年もNVIDIAにとって災難なのが、GPUの新世代化が行われる年であり、この状況も消費者の買い控えを生むため、ゲーム部門の売上はRTX 4000シリーズによる売上が反映されるQ4まで芳しくない状況となるかもしれませんね。ただし、データセンター向け需要は伸びているので全体の売上高はカバー出来るかもしれません。
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