世界的に半導体不足に陥っている事は自動車の減産やグラフィックカードの蒸発などで感じている人も多いかもしれませんが、この半導体不足は最悪の場合では2022年まで続く可能性があるとの事です。
2020年は半導体需要が高まる要因が複数重なった年
Chip Shortages to Persist For at Least Another Year: Analysts | Tom’s Hardware
近年、半導体を搭載しない製品は無いに等しい状態になっており、半導体に対する需要は常に高い状況が続いています。そんな中で、半導体のレベルは上がってきており、より小さな半導体に多くの回路を詰め込むようになり、製造する難易度も高くなってきています。
そんな中で、2020年はその半導体需要を大幅に引き上げる原因が複数ありました。
一つ目が新型コロナウイルスによるステイホーム需要です。これにより、パソコンや家電(テレビ、ゲーム機、スマート家電など)を買い求める人が例年以上に増えました。
二つ目が製造キャパシティーの問題です。既存の半導体製造キャパシティーは2019年の需要をギリギリカバーできる程度であったのですが、2020年のパンデミックによって需要が大幅に増えてしまいキャパシティーオーバーとなってしまいました。ちなみに、Intelでは2018年に製造キャパシティーオーバーが発生し、増産に対応できるようにしたのですが、TSMCなど他のメーカーでは何も対策がされなかった模様です。
そして最後に三つ目がアメリカと中国の貿易戦争です。この貿易戦争である時期を境に多額の関税がかけられる事が確実だった事から多くの企業が在庫の買い溜めを行いました。この動きにより半導体に関係するサプライチェーンに大きな負荷をかけてしまう結果となってしまいました。
需要に対して供給が30%下回っている状況。本当の地獄は春先から?
2020年以降に起きた半導体需要の急増やサプライチェーンへの過大な負荷によって、半導体の供給が追いついていない状況になっています。J.P Morganの試算によると、現在の半導体需要に対して半導体の供給量は10~30%程度下回っている状況との事です。この供給量が需要を満たすまでに改善するには最低でも3~4四半期の時間が必要となり、消費者の手元に届くようになるにはもう更に1~2四半期程度の時間が必要になるとの事です。よって、この半導体不足な状態が正常に戻るには少なくとも1年以上はかかるとの事です。
また、Susquehanna Internationalのアナリストによると半導体需要は世界各国で始まっているワクチンの供給や感染者数の減少によりロックダウン解除など、経済活動が再開される春先から更に悪化する可能性を指摘しています。
増産までの道のりは長い
TSMCやGlobal Foundriesなど半導体製造を請け負う主力のファウンドリでは増産に向けた計画を発表しています。ただ、ASML社の半導体露光機など半導体製造の要と言える機械の製造には数か月以上有すると見られています。また、この機械が作られても設備の搬入や品質試験など非常に多くの時間がかかると見られており、実際に増産が開始されるのは今から1年程度かかる可能性が高いです。
既に需要に対して供給が30%程度下回っている状況を考えると、多くのバックオーダーが発生しています。そのため、どれだけ楽観的に考えても今後数か月に渡って半導体不足の状況と言うのは続くと見られています。
一方で、AppleやAMD、NVIDIAなどのファブレスメーカーは新しいCPUやGPUを搭載する製品を次々と投入すると見られており、新製品についてリリースはされるものの手には入らないという状況がしばらく続く見込みと言えます。
この記事の基は証券アナリストによるレポートがベースとなっているようですが、増産するにしても確かに多くの時間がかかると同時に、既に半導体不足でバックオーダーを抱えているため正常化するには年単位の時間がかかるという点は理解できます。
ただ、5Gで半導体需要が大きく上向く事はコロナが深刻化する前の2020年初旬から言われており、コロナが深刻化した後も半導体需要は安定している事が2020年中旬には判明しているため、TSMCでは2020年8月に他社工場の買取など需要の増加に対応した動きはしていました。
そのため、2022年までこの状況が続くとは考えられず続いても夏頃までなのでは無いかと思っています。
何はともあれ、NVIDIA GeForce RTX 3060が6万円で販売されるような状況からは早く脱して欲しいです。
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