AMDはCES2022にてRadeon RX 6500 XTやZen 3Dを搭載するRyzen 7 5800X3DやZen4アーキテクチャを搭載するZen4の一部情報が解禁されましたが、この3つの製品についてAMDのゲーミング部門長のFrank Azor氏がHotHardwareからのインタビューで様々な情報を語っています。
エントリー向けのRadeon RX 6500 XTやZen 3DとZen4について発表をしたAMD
AMDではRadeon RX 6000シリーズとしては初めてのエントリー向けGPUとなるRadeon RX 6500 XTや3D V-Cache技術を採用したZen 3Dを搭載するRyzen 7 5800X3D、そして2022年後半までにTSMC 5nmプロセスを採用するZen4アーキテクチャー搭載のRyzen 7000シリーズを発売予定である事をCES2022にて明らかにしましたが、そこでは語られなかった詳細についてHotHardwareがAMDのゲーミング部門長のFrank Azor氏にインタビューを行っています。
Ryzen And Radeon CES 2022 Deep Dive With AMD Gaming Chief Frank Azor! – YouTube
Radeon RX 6500 XTは最も入手しやすいグラフィックスカードとなる
まず、最初に語られた商品はエントリー向けとして導入されるグラフィックスカードであるRadeon RX 6500 XTについてです。
Radeon RX 6500 XTについては、AMDとしてはGPUが非常に高い中で、非常に高い競争力を持つ価格帯での提供を目指して開発が行われていました。と言うのも、過去2年間のGPUについては価格が高く、最も安い商品でも300ドル台が当たり前でした。そのため、AMDとしては目標を200ドル以下での販売を念頭に開発を進めてきました。
ただし、最近ではメモリー価格が高騰しており、従来通り8GBのまま搭載すれば200ドル以下の価格での販売は不可能だったとの事。そこで、AMDでは8GBと4GBでFSRやRSRなども含めてどれほどパフォーマンスが異なるのかを調査しました。その結果、1080pで中から高画質設定のレベルであれば、4GBがコストパフォーマンスの両面から考えると適切な容量となると考えました。
また、VRAM容量を4GBとする事でEthereumなどマイニング目的での使用は困難にする事でよりゲーマーなどグラフィックスカードを必要とする人に渡るという副次的な効果も狙っています。
ここ最近登場するグラフィックスカードについては、高い価格や入手性の悪さから批判の対象となる事が多かったですが、Radeon RX 6500 XTについては価格や入手性の面では大きく改善されており、多くの人の期待に応える事が出来る商品になっていると言えますが、実際の発売でどうなるのか様子を見ていきたいです。
Radeon RX 6600などはミドルレンジモデルと言いつつも、価格は5万円を超える商品が殆どで、マイニング目的での購入も多かったのか入手性は非常に悪いという状態となっていました。そんな中でRadeon RX 6500 XTではVRAMを4GBにする事で価格を抑えつつ、マイニング目的での購入を防ぎ、販売価格や入手性の改善に努めるようです。2022年においてGPUに4GBと言うと少々、心細い気もしますがAMDとしてはFSRやRSRなどの技術を使えば1080pでのゲーミングが主なターゲットであるエリアであれば十分なパフォーマンスが期待できると考えているようです。
3D V-CacheにRyzen 7 5800Xを選んだ理由はTDPと動作クロック
AMDでは3D V-Cache技術を搭載するRyzen 5000シリーズとして、8コア16スレッドを搭載するRyzen 7 5800XをベースとしたRyzen 7 5800X3Dの発表を行いましたが、そもそもなぜ1種類だけなのか、またなぜアッパーミドルのRyzen 7 5800Xが選ばれたのかなどについて語られています。
3D V-Cacheについては、TDPに対する制限やコスト面について考慮すべき点があります。そのため、AMDとしては8コアを搭載するRyzen 7 5800Xが最も適切なCPUと考えています。現時点では、ゲームなどでは8コア以上のCPUを求めるゲームは非常に少なく、コア数を増やすメリットについてはあまり無いのが現状です。そのため、3D V-CacheをRyzen 7 5800Xに搭載する事で、1コア辺りの性能を引き上げる事が可能となり、ゲーミング時の性能向上をターゲットとした3D V-Cache搭載製品としてはRyzen 7 5800Xが最も適切であるとしてラインアップをしています。
基本的に、3D V-Cacheは魔法の技術では無く、何かを搭載する事で何かを失うには変わり在りません。それは、コスト面の話も含まれ、消費電力や発熱面でも同様です。そのため、3D V-Cacheを搭載するRyzen 7 5800X3Dでは動作クロックが犠牲となっています。ただ、それ以上に3D V-Cacheによるパフォーマンスの伸びが期待できるものとなっています。
3D V-Cacheについて、他のRyzenシリーズへの展開がなぜ行われないかと言う点については、3D V-Cacheについては新しい技術であり、どれだけのユーザーに受け入れられるか未知数な所があります。そのため、ユーザーの動向などを踏まえ、今後の商品計画に盛り込むことを考えています。
3D V-Cacheを搭載する製品としてはRyzen 7 5800X3Dのみと言う商品展開になっていますが、これは3D V-Cacheを搭載する事で消費電力や発熱面、そしてコスト面の事を考えた結果のようです。恐らくRyzen 9 5900X3Dなども技術的には可能だったものの、TDPは105Wに収める必要があるため、コア数が増えても1コア辺りのパフォーマンスを制限する必要が出てくるなどシングルコア性能が重視されるゲーミング時のパフォーマンスに限って言えばメリットが無いため、このような展開になったようです。
なお、3D V-CacheについてはZen4でも同様の技術を使ったものが採用されると噂されていますので今後の商品展開には既に盛り込まれていると言えそうです。
Zen4で採用されるソケットAM5はAM4並みの長寿になる予定
AMDではZen4アーキテクチャー搭載するRyzen 7000シリーズから長年利用していたソケットAM4からの互換性を完全に捨て、ソケットAM5へ刷新が行われますが、このソケットAM5に関する話も語られています。
ソケットAM4について、振り返ると他社とは大きく異なりCPU4世代、年数で言うと5から6年に渡り利用されてきました。このような事例は他のx86系CPUではありませんでした。
このように長い期間、同じソケットを利用するためには将来的なロードマップを精査した上でソケットの設計が行われます。そのため、ソケットAM5に関してはZen4で採用される技術以上の事も実現できるように、将来を見越した設計が行われています。
ソケットがどれぐらいの寿命になるか約束はできないものの、ソケットAM4で実現した通り4~5年程度互換性を持てるようにソケットAM5の設計は行われています。
ちなみに、Zen4とソケットAM5をCES2022で発表した理由については、これからRyzen 5000やX3Dを購入する人に対して別の新しい製品も来ている事をお知らせする意味があります。もし知らない場合、Ryzen 5000シリーズを買った半年後に、世代が大きく変わるとなればユーザーへの不利益が大きくなるため今回は事前に発表しています。
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Intelでは1年から2年程度でソケットデザインを変更するため、その都度マザーボードの買い替えが必要となりますが、AMDの場合BIOSで対応が行われていればCPUの載せ替えのみで済み、コスト面では優位であるとAMDは考えているようです。そのため、ソケットAM5もAM4と同じように長い間使えるような設計が行われているとの事です。
なお、インタビューではソケットAM5の発表を半年以上も前に行う理由としては、ユーザーに半年後に古くなると分かっていて製品を売るのはユーザーへの不利益が大きいと話していましたが、この判断は好感度が上がる対応と言えますね。