AMDでは2022年末までに新GPUアーキテクチャーであるRDNA3アーキテクチャーを採用したグラフィックカードを投入する予定です。このRDNA3ではRyzenなどで採用される3D V-Cache技術を採用し、ダイの上にキャッシュなど別用途のダイを重ねる事が可能となりますが、AMDが提出した特許によると何かしらのアクセラレーターが搭載される可能性がありそうです。
RDNA3に搭載される3D V-Cacheはキャッシュのみではない模様
AMDでは2022年に3D V-Cacheと呼ばれるダイの上に更にダイを重ねる事で、キャッシュ容量を大きく増大させる技術をCPUのRyzenやEPYC、Threadripperなどで採用する事が決定しています。そして、その技術をGPUに応用して2022年末頃に発売が予定されている次世代GPU、RDNA3アーキテクチャーにも大容量キャッシュを搭載させる可能性が過去にリークとして出現しています。
RDNA3では3D Infinity Cacheを搭載。GPUに3D V-Cache技術を応用
そんな、RDNA3と3D V-Cacheですが、最近公開されたAMDの特許によるとこの3D V-Cache技術をさらに応用して、キャッシュのみならず機械学習用のアクセラレーターも載せてしまう計画があるようです。
3Dスタッキング技術でGPU上にInfinity Cacheと機械学習用アクセラレーターを搭載か
STACKED DIES FOR MACHINE LEARNING ACCELERATOR (freepatentsonline.com)
AMDでは次世代グラフィックスアーキテクチャーであるRDNA3にてMCM機構を採用し、さらには3D V-Cache技術も採用されるというリークが出ていますが、AMDが2020年5月29日にアメリカ特許庁に申請した特許情報が2021年12月に公開がされました。
この特許情報では、Accelerated Processors Die(APD)と呼ばれる機械学習関係を担うアクセラレーターに関する記載が出現するのですが、特徴的なのがこのAPDには機械学習用ダイとメモリーダイが一つのダイとして搭載されている点です。
AMDの特許によると、このAPDの中にはキャッシュなどを担うメモリーの他、機械学習用アクセラレーターやコントローラーなどが含まれており、メモリーに関しては機械学習用アクセラレーターが直接アクセスが可能なように設計されているとの事。また、メモリーの割り当ては機械学習用アクセラレーターか通常のキャッシュに割り当てるかなどは自由に設定が可能なように出来ているようです。
機械学習用アクセラレーターはNVIDIAのTensor Coreに対する対抗策?
NVIDIA製グラフィックスカードではDLSSと呼ばれる機械学習を利用し、ゲーミング時の画質向上を行う機能が搭載されています。これにはTensor Coreと呼ばれる機械学習専用アクセラレーターを利用していますが、AMD製のグラフィックスカードにはNVIDIAのような機械学習専用のアクセラレーターは搭載されておらず機械学習を利用したゲーミング時の画質を向上させる機能は現時点では搭載されていません。
そのため、AMDとしては機械学習用のアクセラレータを搭載し、DLSSのような機能を搭載する事をRDNA3世代から目論んでいると見られ居ます。ただ、機械学習用のアクセラレータを搭載するにはダイ上にその処理を担わせる部分を搭載する必要があり、ダイサイズの肥大化が避けられません。
そこで、AMDとしては3D V-Cache技術を応用したダイ・スタッキング(ダイを積み重ねる)技術を利用してGPUダイの上にキャッシュと機械学習用アクセラレーターを搭載し、ダイサイズの肥大化を抑えようとしている可能性があります。
このようにダイの肥大化を抑えると共に、GPU用のダイとキャッシュ・機械学習用アクセラレーターを別のダイとして製造する事で歩留りを向上させることが可能になると見られています。
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今回公開された特許は2021年12月に公開はされているものの、申請自体は2020年5月に行われているため、2022年に発売が予定されているRDNA3にこの技術が採用される可能性は十分あると考えられます。特にNVIDIAではDLSSを活用したゲームなどを徐々に拡充させており、IntelもXeSSと呼ばれる機械学習を利用した画質向上機能の提供が予定されています。そのため、AMDとしてもDLSSに似た技術をRDNA3のタイミングで投入する必要がありますので、今回出現した特許が実際にRDNA3でも採用される可能性は高いと個人的には思っています。