AMDでは3D V-Cacheと呼ばれるCCDの上にキャッシュ領域を重ねる技術で、大幅なキャッシュ容量の拡大が期待できる技術ですが、そんな3D V-Cacheを搭載したサーバー向けCPU、EPYC Milan-Xの仕様が判明しました。
3D V-Cache搭載はMilanが先行か。4モデルで登場予定
AMDではComputex 2021にて3D V-Cacheテクノロジーについて発表を行いました。この技術では、L3 Cacheの更に次レベルCacheをCCDの上に重ねて搭載。Ryzen 9 5900Xを利用したプロトタイプでは各CCDに96MB(L3 32MB + 3D V-Cache 64MB)、CPU合計で192MBのラストレベルCacheを搭載することで平均して約15%のゲーミングパフォーマンス向上が見られたとのことです。
そんな3D V-Cacheですが、過去のリークにてサーバー向け製品であるEPYC Milanをベースに3D V-Cacheを搭載したEPYC Milan-XをAMDが準備している事をリーク情報で定評があるExecuFix氏やPatrick Schur氏が取り上げていますが今回、EPYC Milan-Xの詳細仕様に関する情報が出現しました。
Milan-X aka Milan-X(3D). Genesis IO-die with stacked chiplets
I love lasagna 😋 https://t.co/O2FrGxyd8P
— ExecutableFix (@ExecuFix) May 25, 2021
なお、EPYCで出現するとなると今後Ryzen Threadripperなどにも展開されそうですが、今回の情報では無いものの過去に2022年下半期にリリースを目標に開発が進められていることが伝えられています。
次世代Ryzen Threadripper X3Dなどの情報が出現
4モデルが登場。L3キャッシュ容量は768MB
Milan-X (GN-B2) has 768MB L3$ per CPU. Let’s confirm the specs 🧵
7773X (64 cores)
2.2GHz base, 3.5GHz boost
768MB L3, 280W TDP— ExecutableFix (@ExecuFix) September 16, 2021
EPYC Milan-Xに関する仕様をリークしたのはMilan-Xの存在をリークしていたExecuFix氏で合計4モデルに関して仕様が判明しています。
- EPYC 7773X 64 Core (100-000000504)
- EPYC 7573X 32 Core (100-000000506)
- EPYC 7473X 24 Core (100-000000507)
- EPYC 7373X 16 Core (100-000000508)
まず、64コアモデルとなるEPYC 7773Xでは、ベースはEPYC 7763と見られており64コア128スレッド搭載し、TDPは280Wとなります。動作クロックは2.2GHzがベースでブースト時は最大3.5GHzで動作します。
また、32コアモデルではベース2.80GHz、ブースト3.60GHzでこちらも最大TDPは280W、24コアモデルがベース2.80GHz、ブースト3.70GHzでTDP240W、16コアモデルではベースが3.05GHz、ブーストが3.80GHzで動作し、TDPは240Wとなります。
ここまでの仕様は既存のEPYC Milanの仕様とほとんど同じですが、キャッシュ容量については3D V-Cacheを搭載することによって大きく変ります。
3D V-Cacheでは各CCD上に64MBのL3キャッシュが搭載されます。そのため、CCDを8基搭載する上記4モデルでは合計512MBのL3キャッシュが搭載され、更に各CCDに内蔵されているL3キャッシュが32MB x CCD 8基で256MBが搭載されています。CPU全体ではCCD上とCCD内部のL3キャッシュを合わせると合計768MBの容量を備えている事になります。
なお、AMDによると1レイヤー64MBの3D V-Cacheは最大で8レイヤーにまで重ねる事が可能としており、理論的には各CCD上に512MB、内蔵するL3キャッシュを合わせると各CCDで544MB搭載する事が出来るとの事です。ただ、近々出現するEPYC Milan-Xでは3D V-Cacheは1レイヤーのみ搭載されるため、各CCD上に追加されるのは64MB、内蔵するL3キャッシュを合わせると各CCDで96MBに抑えられています。
最上位のEPYC 7773Xは100万円越え。値上げ幅は1.01倍から3倍まで幅広い
この4モデルに関する価格情報は8月末頃にエンタープライズ向けの製品を扱うサイトに販売価格が掲載されています。そこでは、最上位の64コアEPYC 7773Xが$10476.99、日本円で約115万円、32コアEPYC 7573Xが$6654.99、日本円で約73万円、24コアEPYC 7473Xが$4643.99、日本円で約51万円、16コアEPYC 7373Xが$5595.99、日本円で約62万円となっています。
通常のCPUを搭載するモデルとの価格差としては、64コアモデルではEPYC 7773XとL3以外の仕様が近いEPYC 7763に対しては約10%程度の値上げに留まっておりこの価格が正しければキャッシュが大幅に増えた割には価格上昇があまりされていない印象です。ただ、他のモデルは全く違う傾向で、32コアのEPYC 7573XはL3以外の仕様が近いEPYC 7543に対しては1.5倍、24コアEPYC 7473XはEPYC 7443に対して約2倍、16コアEPYC 7373XはEPYC 7343に対して3倍と言う価格になっています。
CPUモデル | コア数/スレッド数 | ベースクロック | ブーストクロック | CCD数 | CCD上 V-Cache容量 |
CCD内蔵 L3キャッシュ |
L3 Cache (V-Cache + L3 Cache) |
L2キャッシュ | TDP | 販売価格 (米ドル) |
日本円 $1=110円 |
AMD EPYC 7773X | 64 / 128 | 2.2 GHz | 3.500 GHz | 8 | 64 MB | 32MB | 512 + 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
280W | $10,476.99 | ¥1,152,469 |
AMD EPYC 7763 | 64 / 128 | 2.45 GHz | 3.500 GHz | 8 | 非搭載 | 32MB | 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
280W | $9,424.99 | ¥1,036,749 |
AMD EPYC 7573X | 32 / 64 | 2.80 GHz | 3.600 GHz | 8 | 64 MB | 32MB | 512 + 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
280W | $6,654.99 | ¥732,049 |
AMD EPYC 7543 | 32 / 64 | 2.80 GHz | 3.700 GHz | 8 | 非搭載 | 32MB | 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
225W | $4,291.99 | ¥472,119 |
AMD EPYC 7473X | 24 / 48 | 2.80 GHz | 3.700 GHz | 8 | 64 MB | 32MB | 512 + 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
240W | $4,643.99 | ¥510,839 |
AMD EPYC 7443 | 24 / 48 | 2.85 GHz | 4.000 GHz | 4 | 非搭載 | 32MB | 128 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
200W | $2,293.99 | ¥252,339 |
AMD EPYC 7373X | 16 / 32 | 3.05 GHz | 3.800 GHz | 8 | 64 MB | 32MB | 512 + 256 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
240W | $5,595.99 | ¥615,559 |
AMD EPYC 7343 | 16 / 32 | 3.20 GHz | 3.900 GHz | 4 | 非搭載 | 32MB | 128 MB | 32 MB (各コアに512KB) |
190W | $1,784.99 | ¥196,349 |
3D V-CacheではCCDあたりで追加で64MBのL3キャッシュを追加できると既に発表はされていたものの、いざCCD8基を搭載するEPYCにこれを適用すると衝撃的なキャッシュ容量になりますね。この3D V-Cacheがどれほど高速なのか、またソフトウェア的にどれほど最適化が進むかによってZen4 EPYCでHBMを採用するかしないかに繋がると考えられるのでどのようなパフォーマンスが発揮できるのか気になる所です。
AMDがZen 4 EPYC『Genoa』にHBM採用を検討している模様
このEPYCは値段が非常に高く一般ユーザーには手が届きませんが、既にAMDではRyzen 5900Xに3D V-Cacheを搭載した試作CPUを製作していたり、3D V-Cacheを搭載するための接続ポイントも用意されています。そのため、もしかしたらCES2022辺りでIntelのAlder Lake-Sに対抗する事を目的に3D V-Cache搭載 Ryzen 5000シリーズが出るかもしれません。
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