AMDではエントリー向けマザーボードであるA620を2023年3月31日に発表し、対応するCPUの消費電力量や拡張性など詳細が明らかになりましたが、今回このA620について詳細仕様などを解説します。
AMDのRyzen 7000シリーズ対応エントリーマザーボード『A620』の詳細仕様を解説
AMDのRyzen 7000シリーズに対応するマザーボードとして現在はX670とB650の2モデルを販売していますが、これらのモデルでは価格が比較的高価で、B650の最廉価モデルでも2万円半ばでの販売が最安値となっています。そのため、AMDではCPUでRyzen 5 7600など価格を抑えた製品を投入してはいるものの、Intel製CPUやAMDのRyzen 5000シリーズに比べて売れ行きは芳しくない状態となっています。
そんな、AMDですがこの状況を変えるために最大の弱点だったマザーボードを大幅に抑えたエントリー向けマザーボード『A620』を2023年3月31日に発表し、その詳細が明らかになりましたので各機能やすでに販売されている上位モデルのB650やX670との違いを解説していきます。
A620では基本的にTDP65WのCPUまでを完全サポート。120WのRyzen 7000X3Dなどはパフォーマンスが落ちる可能性
AMDのX670やB650ではTDP 170Wに設定されているRyzen 9シリーズまで完全サポートしています。これにより高性能なCPUを搭載することが可能であるため、将来登場する高性能なCPUなどへの換装するなど将来に渡って長く使うことが可能になります。
一方で、この高いTDPに対応するためにマザーボードの基板や電力供給を司るVRMなどのコストが嵩むことでX670やB650マザーボードはIntel製マザーボードより高価なモデルが多くなっています。
そのため、AMDのA620では65WのTDPを持つCPUまでを完全対応とし、ピーク電力消費量が88WのRyzen 5 7600やRyzen 7 7700などに完全対応する様になっています。
この様な制約はIntelのミドルレンジマザーボードであるB660シリーズなどでも導入が行われていますが、ミドルレンジやエントリー向けマザーボードでハイエンドのRyzen 9などを組み合わせる例はあまり無いと言えますのでこの制約は合理的と言えそうです。
ただ、残念ながらRyzen 7 7800X3DなどゲーミングPCに最適なCPUを使用する場合、TDPが120Wで設定されているためA620を使用する場合パフォーマンスが大きく制限される可能性があります。
この様なCPUを使いたいユーザーの要望も考慮して一部のメーカーが発売するA620ではより多くのVRMを搭載することでTDP 105Wや120W、さらには170Wのモデルまでサポートする場合もありますが、この様なモデルではコストを押し上げる要因であるVRMを多く搭載しているため、価格はB650に近いものになる可能性があります。
拡張性はX670やB650に比べて制約多め。一方でほとんどのユーザーに必要な装備類は搭載。
A620はB650の下位モデルということで、価格が抑えられている一方で機能的な制約は多くなっています。例えば、USB関連に関してはB650の1つのUSB 20Gbpsと6つの10Gbpsポートがありますが、A620には2つのUSB 10Gbpsと2つの5GbpsポートとUSBの最大速度とポート数が大きく減らされています。
PCIe系に関してもA620ではPCIe Gen 4に対応するレーンではグラフィックスカード用にx16レーンが1つと、NVMe SSD用のx4が1つとなっています。B650に比べると特に大きく見劣るのがNVMe SSD用M.2がPCIe Gen 4対応スロットが1つだけという点といえます。ただ、PCIe Gen 3に対応するM.2スロットはマザーボードによっては1つ多く搭載する場合があります。
機能面ではA620では手動オーバークロックに対応していません。そのため、電圧や動作クロックを変更したり、自動オーバークロックであるPrecision Boost Overdrive(PBO)を使用することはできません。また、一部のA520ボードでは非公式のBCLKオーバークロックが可能でしたが、A620では可能かどうかは不明です。
CPU側のオーバークロックには非対応となっていますが、EXPOプロファイルを介してDDR5-6000までのメモリオーバークロックに対応しています。ただ、手動でのメモリチューニングが許可されるかどうかは不明です。
A620マザーボードでは、AMDのX670やB650マザーボードにも使用されているPromontory 21(PROM21)チップセットを使用しています。AM5プラットフォームのチップセットではCPUのチップレットのようなアプローチを採用しており、ハイエンドのX670マザーボードでは2つのPROM21チップが使用されることがありますが、A620はB650と同じく1つしか搭載されていません。
AMDではPROM21チップセットをミドルレンジのB650とA620の両方で使用することで開発費や新たな設備発注などを抑制したと見られていますが、B650やX670を想定して作られたPROM21ではA620で使うには余分な機能も多く、付け捨て状態となっているためA620向けにコストダウンを図ったPROM22が開発中と言われています。このPROM22を搭載するマザーボードがいつ登場するかは不明ですが、AMDではA620についてはエントリー向けを牽引する存在として価格を更に下がるための下準備を行うなど力を入れていくものと見られています。
なお、このA620マザーボードはASRock、ASUS、Gigabyte、MSI、Biostarなどから発売されますが、現時点で日本でいつ販売されるのか、また各モデルの価格については不明となっています。
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