10月28日から予約が開始されたAlder Lake-Sについてですが、MSIのライブストリームにてこのAlder Lake-Sに関する様々な情報が語られました。その中にはダイ写真や最適な冷却方法、DDR5メモリーなど多岐に渡っています。
MSIによるAlder Lake-Sの解説
Intelの第12世代CPUであるAlder Lake-Sについては、10月28日にIntel Innovationにて公式発表が行われ、同日から一部店舗では11月4日の発売に向けた予約などが開始されています。一方で、このAlder Lake-Sについては11月4日までレビューなどは解禁されておらず、あまり詳細が分かっていませんでしたが、MSIがAlder Lake-Sについて様々な解説を行うライブストリームがAlder Lake-Sの発表を受けて配信されていました。
2種類のAlder Lake-Sダイ写真が掲載
デスクトップ向け製品となるAlder Lake-Sでは2種類のCPUダイが用意される予定となっています。
主にハイエンドモデルに利用される最大P-Core 8基、E-Core8基を搭載できるCOダイと主にミドルレンジモデルでの利用が想定されているP-Core 6基のみ搭載したH0ダイの2つが用意されますが、この2つのCPUのヒートスプレッターを取り外し、ダイのみを写した写真が掲載されています。
比較用として11世代CPUであるRocket Lake-Sも並べられていますが、それぞれダイの面積はRocket Lake-Sが276mm2となっている一方で、Alder Lake-SのC0ダイでは215.25、H0では162.75に縮小されています。この小型化はRocket Lake-Sまでは14nmプロセスで製造されていた一方で、Alder Lake-Sでは10nmにまで縮小されたため実現できた進化と言えます。これによりトランジスター密度は大きく向上したものの、放熱できる面積が減ったため熱を逃がす事の難易度が上がります。そこで、IntelではAlder Lake-SからCPUダイの薄型化を行うとともに、ダイとヒートスプレッターの間の熱伝送を行うソルダリングも薄型化を実施し、効率的に熱伝送が出来る構造に改められているようです。
CPUクーラーの向きに要注意
Alder Lake-Sでは、発熱が大きいP-Coreを如何に効率よく冷やせるかが性能維持のカギのようで、MSIのライブストリームではCPUクーラーを搭載する際の注意点が語られています。
Alder Lake-SではCPUの種類によって発熱が最も発生するホットスポットの位置が異なるようです。C0ダイではCPUのほぼ中心に対して、H0ダイではC0ダイより若干オフセットした位置がホットスポットとなるようです。
*画像ではH0とC0の表記が入れ違えています。
そのため、CPUクーラーについては材質やヒートパイプの方向などに注意を払う必要があるとの事です。
CPUクーラーの材質について銅製のベースを搭載したCPUクーラーが推奨されており、アルミ製ベースに銅製ヒートパイプが繋がれたモデルは推奨されないとの事です。
CPUクーラーを搭載する方向としては、ヒートパイプがCPUの長辺側と平行になる方向に搭載する事が推奨されているとの事です。交わる形で搭載してしまうと、最も熱伝送が良いヒートパイプ部分からホットスポットが外れてしまう可能性があるほか、ヒートパイプがCPUダイの大部分を覆う事が出来なくなる可能性があり、推奨されないとの事です。
なお、MSIによるとLGA1700マウントが提供される既存のCPUクーラーについてはAlder Lake-Sで高いパフォーマンスを発揮できる事を確認しているとの事ですので、CPUの中央部分が浮いてしまうという事態は発生しないと見られています。
DDR5メモリーの放熱と電源との相性問題
Alder Lake-Sから初めてDDR5が搭載されますが、このDDR5ではDDR4からの大きな変更点としてPMICと呼ばれる電源用チップが搭載されています。これは従来までは電源から供給される5V電源をマザーボードでメモリー用に電圧を降圧していたものが、電源から直接メモリーに5Vのまま供給され、PMICで降圧をした後、各メモリーモジュールに必要な電圧を供給するという仕組みに改められています。
DDR5メモリとは?DDR4との違いや価格、販売情報について紹介
そのため、このPMICと言う部品は熱を持ちやすい特性となっているため、メモリーのオーバークロックなどでDDR5既定の1.1V以上の電圧を供給する場合はヒートシンクが必要となるようです。
また、メモリーへの電源供給に変更が加えられたため、電源ユニットとメモリーとの相性が問題になるケースがあるかもしれないとの事です。
MSIからのアドバイスとしては、DDR5では電源ユニットの5Vレーンからマザーボードを経由して直接DDR5のメモリー上に搭載されているPMICへ供給されます。そのため、この5Vレーンが不安定であればPMICが適切な電源をメモリーモジュールに供給ができなくなり、システムクラッシュなどを引き起こす可能性があるとの事です。
なお、MSIのライブストリームではMSI製電源であれば5Vの安定性が重視されて作られているという宣伝がされています。(まぁ普通は大手が作っている電源ユニットってそこまで不安定じゃないと思いますが。GIGABYTEを除く・・・)
DDR5の価格についても言及。DDR4並みの価格になるのは2023年第3四半期
ライブストリームではDDR5の価格についても少し触れられており、Alder Lake-S発売時点ではDDR5メモリーは同一容量のDDR4メモリーに比べて約30~50%ほどの高い価格で販売がされる予定との事です。一方で、DDR5メモリーがDDR4並みの価格に落ち着くのは2023年第3四半期頃からでは無いかと予測しているようです。
MSI製Z690マザーボードの価格についても言及。DDR5対応の最安値は$229から
最後に、MSIのライブストリームではAlder Lake-Sに対応するZ690マザーボードのラインアップと価格が紹介されています。メインはDDR5搭載モデルで12機種、DDR4搭載モデルは4機種発売されます。
モデル | 価格 | 日本円(1ドル=120円)予想 |
---|---|---|
MSI MEG Z690 GODLIKE | 未定 | 未定 |
MSI MEG Z690 ACE | $699.00 | ¥83,880 |
MSI MEG Z690 Unify-X | $619.00 | ¥74,280 |
MSI MEG Z690 Unify | $589.00 | ¥70,680 |
MSI MPG Z690 Carbon EK | 未定 | 未定 |
MSI MPG Z690 Carbon WiFi | $469.99 | ¥56,399 |
MSI MPG Z690 Force WiFi | $429.99 | ¥51,599 |
MSI MPG Z690 Edge WiFi | $349.00 | ¥41,880 |
MSI MAG Z690 Tomahawk | $309.00 | ¥37,080 |
MSI MAG Z690 Torpedo | $289.00 | ¥34,680 |
MSI PRO Z690-A WiFi | $249.99 | ¥29,999 |
MSI PRO Z690-A | $229.99 | ¥27,599 |
MSI MPG Z690 Edge WiFi DDR4 | $329.00 | ¥39,480 |
MSI MAG Z690 Tomahawk DDR4 | $299.00 | ¥35,880 |
MSI PRO Z690-A WiFi DDR4 | $239.99 | ¥28,799 |
MSI PRO Z690-A DDR4 | $219.99 | ¥26,399 |
レビューが解禁される前に、Alder Lake-Sの殻割り写真が見られるとは思っても居ませんでしたが14nmから10nm化を行ったことで8コアだったRocket Lake-SからはAlder Lake-Sは20%程度も縮小しているので明確にプロセス微細化の効果は活きています。ただ、ホットスポットの位置やヒートパイプの方向などでパフォーマンスが変わるとの事ですので、既存のCPUクーラーやケースを流用する方はCPUクーラーの方向を変えてもケース内の他の部品と干渉しないか考えておいた方が良さそうですね。
それよりも若干気になったのが、DDR5の予想です。2023年第3四半期までDDR4並みの価格には下がらないとの事ですのでかなり高い状態が続くようですね・・・PMICなど追加のチップを搭載している所がコスト引き下げを阻害する要因となっているかもしれませんが、せめてもの救いが今の時点でDDR5はDDR4に比べて30~50%程度のプレミア価格となっているため、高いもののGPUの価格みたいな激しい値上げにはなっていない事です。
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