半導体に不可欠なABFが夏頃から供給改善へ。GPU出荷量も増加へ

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GPUについては2022年に入ってから販売価格が下落するなど、価格、入手性共に最悪だった2021年に対して変化の兆しが見えてきていますが、どうやらGPUなど半導体に必要不可欠な素材の供給量が2022年夏頃から大幅に改善する可能性が高まっています。

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AIB各社が2022年はGPU出荷量が前年比10%以上増の予定

2021年は世界各地でGPUが枯渇し、マイナーや転売屋など用途問わず、GPUへの需要が大幅に増えました。一方で供給面では新型コロナウイルスによるサプライチェーンの破綻で供給状況が悪化し、店頭やeBayなどフリマ系のサイトでは定価の3倍以上の値段で販売がされるという悪夢のような状況になっていました。

しかし、この状況は長くは続かず、2021年後半からはEthereum価格の下落やNVIDIAがマイニング性能に制限を付与したLite Hash Rateモデルへの置き換えなどでマイニング需要は減少し、供給面でも徐々に安定の兆しが見えてきたことから価格は定価の2倍程度に落ち着きました。

2022年のGPU出荷は21年比で10%以上増。22年半ばから在庫と価格は改善へ

このように、徐々にGPUの状況はいい方向に進んでいますが、2022年はASUS、MSI、ASRock、GIGABYTEなど主要なAIBはGPUの出荷量について2020年以上の出荷量を記録した2021年比で10%以上も高い出荷量を予定しているとの事ですが、半導体に重要な「ある」素材に関して安定した調達の目処が立ったことからこのような計画を立てられているようです。

半導体などの製造に不可欠な『ABF』の供給増へ

多くの半導体で絶縁体として用いられている味の素が製造する「Ajinomoto Build-up Film(ABF)」ですが、2021年には供給以上の需要があり、TSMCに製造を委託しているNVIDIAやAMDのみならず、QualcommやApple、Samsungなども大きな影響を受けていました。

そんな、ABFですが、Digitimesによると2022年夏ごろには供給が大きく改善される見込みとの事です。

Strong graphics card sales to buoy ASRock, TUL (digitimes.com)

ASRockやTUL(Power Color)の関係者によると、2022年の収益計画について引き続きGPUなどの売れ行きが高い水準を維持する見込みとなっているのですが、肝心な供給についても大きく改善が見込まれているとの事です。その一つがABF素材であり、この素材の供給能力改善によって2022年2月以降、GPUの出荷量は改善に向かうとの事です。

また、ABFの供給能力は2022年半ば以降、大幅に改善が見込まれており、GPU出荷量の更なる改善が2022年半ばより計画されているとの事です。

ABFのサプライヤーは増産中。ただ、悲観的な報道も

Taiwan ABF substrate makers eyeing new profits with new capacities (digitimes.com)

ABF基板やパッケージングを行うサプライヤーについては台湾のUnimicron社や南亜(ナンヤー)社などがありますが、これらのメーカーでは2020年と2021年にかけてABF基板の供給が追い付かなかったことから、新しい工場の建設を開始、その第一号が2022年から2023年にかけて完成すると見られています。恐らく、2022年半ばからABFの大幅な改善が見られるのはこのような背景があるものと見られています。

Obscure Taiwan company’s rise shows profit, pain of chip crunch, Technology – THE BUSINESS TIMES

ただし、良い話だけではないようです。シンガポールのBusiness TimesによるとこのABF素材の供給が需要に対して満足するようになるには、早くても2025年ぐらいになるのでは無いかと関係者談が書かれています。

恐らく、TSMCなど市場で強い力を持っている企業に関しては、ABFを高値で買い取ったり、サプライヤーへの支援を行うなどして安定した供給を確約してもらえていると見られています。そのため、2022年半ばと言う比較的早い段階からABFの供給が増えていますが、供給自体に余裕がある訳では無いとも言えそうです。そのため、2022年は半導体工場やそのサプライヤーの工場が出火したり、自然災害に見舞われない限り何とかなりそうですが、何か一つ問題が起きれば供給不足と言う状態に陥るギリギリな状態を脱してはいないと見られています。

 

NVIDIA Hopper GH100のダイサイズは1000mm2。MCM不採用で名称変更の可能性も

 

GPUについては2021年比で出荷量を10%増にする事を各社AIBは計画していましたが、その裏にはABFの供給改善などを基に立てられた計画だったのかもしれません。他にもボトルネックとなる部品や材料などはあるかもしれませんが、少なくとも主要な素材調達の目途は立ち始めており、GPUやCPUなどの半導体製品の供給状況に関しては正常化に一歩近づいてきている事が確実です。

この調子で2022年末まで耐えてくれれば、RTX 4000シリーズやRadeon RX 7000シリーズは比較的簡単に手に入るようになっているかもしれませんね。

とは言っても、新型コロナ、ウクライナ問題、原油高問題など、半導体には一見関係が無さそうで回りまわって喰らいそうなイベントが多数控えていますので一筋縄でいかなさそうですがね。

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この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
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