TSMCでは2021年末頃に3nmプロセスでの試作生産を開始しする予定となっています。そのため、AppleやAMD、Intel、NVIDIAなどの各社は2022年末から2023年末にかけて3nmプロセスを採用した製品の発売を計画していたようですが、このTSMC 3nmの開発が難航しているようでAMDに関しては5nmの次には4nmを採用する方向で計画を変えたようです。またTSMCのライバルであるサムスンもピンチのようです。
3nmの時代はまだ来ない模様
TSMC 3nm Yield Problems May Derail AMD’s CPU Plans | Tom’s Hardware
台湾のDigitimesによるとTSMCやサムスン電子では3nmプロセスの製造に向けた研究開発を進めておりTSMCに関しては2021年末に3nmの試験製造を開始し、2022年中には3nmを採用した製品の市場投入が予定されています。しかし、この3nmを巡ってTSMCそしてサムスン側では製造上の不具合に見舞われており、これらの製造プロセスを採用した製品に関して計画の変更を迫られているようです。
TSMC、サムスン共に3nmプロセスの歩留まりが悪い模様
TSMCの3nmに関しては2021年11月頃にiPhone 14では4nmが採用されるという話と関連してTSMC 3nmの開発が難航している事が原因という情報が出ていますがこれに対してTSMCは3nmの開発は順調に進んでおり、2022年後半には量産が開始されると度々発表をしています。
ただ、DigitimesによるとTSMCの3nmについては2022年後半までに生産が開始できるように準備を進めているものの、歩留まりが想定以上に低い事から生産能力に大きな制限がかかっているとの事です。そのため、対策として今年後半から生産開始されるN3の他にコストを下げたバージョンのN3Eを2023年頃、N3Bと呼ばれるプロセスを一部顧客に提供する事を計画しているようです。
しかし、これらのバージョン追加を行っても歩留りの大幅改善の目途は立っておらずTSMCとしては3nmの受注に関して制限を設ける可能性が出ているようです。
AMDの商品計画にも影響。Zen 5 CPUやRDNA 4 GPUではリスク回避でTSMC 4nmを採用?
Things don’t seem to be going well for TSMC 3nm, I think Zen5 and RDNA 4 are likely to switch to 4nm🤔
— Greymon55 (@greymon55) February 21, 2022
AMDでは2022年後半に投入を予定しているZen4アーキテクチャーを採用したRyzen 7000 CPUやRDNA 3アーキテクチャーを採用したRadeon RX 7000シリーズではTSMC 6nmまたは5nmプロセスを採用する事が決定しています。
そして、その次の世代であり、2023年頃に登場が予定されているZen 5アーキテクチャーやRDNA 4アーキテクチャーを採用した製品ではTSMC 3nmが採用されるのでは無いかと見られていましたが、Greaymon55氏によるとTSMC 3nmの歩留りや生産能力面で不安があるためAMDではZen 5やRDNA 4などの次々世代アーキテクチャーではTSMC 4nmに変更をする可能性が高いとの事です。
半導体の微細化は最終ラウンド。サムスン電子もドロップアウトか?
TSMCの話に関連して、Digitimesでは同じく5nmや3nmの開発を進めているサムスン電子についても話が出ていますが、サムスンに関しては7nm以降の開発状況は芳しくない様で、4nm EUVプロセスで製造され、Galaxy S22シリーズに採用されているExynos 2200プロセッサも性能が期待されたほど高くない状況となっています。また、同じくサムスン4nmで製造されているSnapdragon 8 Gen1についても消費電力や発熱の多さからTSMC 4nmに移管される噂さえ出てしまっています。
一方でTSMCに関しては3nmプロセスの生産能力に問題があったとしても2023年頃には多くの製品の量産が可能になると見られており、AppleやAMDのみならずMediaTek、Supermicroや元々サムスン8nmを採用していたNVIDIAもTSMCでの製造に切り替える予定のため、3nm以下のプロセス開発において必要な巨額投資を回収する事はサムスンには難しく、近い内にTSMCのみが最先端プロセスでは生き残ると見られているようです。
NVIDIAがサイバー攻撃に対して報復攻撃をする。では無くただの遠隔ロックだった模様。
TSMC 3nmについては開発遅延の噂が何度か出ており、TSMCの最先端プロセスをいち早く採用するApple製品でも、TSMC 4nmが採用されるという噂が出ています。そのため、この歩留り問題の話はそこそこ信憑性がある話のように感じます。この先、3nmより先端プロセスとなると研究開発費が膨大になりそうですが、どうなるのか気になりますね・・・
AMDのZen 5やRDNA 4に関しては例えTSMC 3nmを採用したとしても、生産能力が低くく、キャパシティーのほとんどは真っ先にAMDより大口顧客であるAppleやIntelが優先される事が目に見えているため、より安定的に生産が出来る見込みが高いTSMC 4nmに留まっておくのは戦略的には正しいかもしれませんね。
ただ、Intelは既にGPUなどでTSMCの3nmを契約しており、Radeon RX 8000など4nmで製造されるRDNA 4は苦しい戦いになるかもしれないですね。幸いなことにCPUについては2023年や2024年も自社工場で製造という事でIntel 4(7nm相当)のためプロセス面ではアドバンテージはありそうです。
コメント
コメント一覧 (1件)
1Xnm世代では、トランジスタのスイッチングよりも、むしろ配線側の抵抗増大やエレクトロマイグレーションの問題の方が大きいと言われています。5nmまでは、IBMの開発した特殊な銅配線で何とか乗り切れたようですが、3nmはそのあたりが大きな問題になっているのではないでしょうか?