Core i9-12900KがGIGABYTE製AORUSマザーボードを利用して8GHzのオーバークロックを達成したという話がありましたが、CPUやCPU-Zのバグを利用した記録だった可能性が高く、CPU-Zの開発者によって記録自体が無効化された模様です。
Core i9-12900Kの8.0GHz記録は無効化へ
CPU-Zのオーバークロック記録にてCore i9-12900KがLN2オーバークロックで8.0GHzを達成し、正規のデータとしてバリデートがされたデータがGIGABYTEのAORUSスペインのTwitter上で宣伝が行われていました。
Core i9-12900Kが8.0GHzへのオーバークロックを達成した模様
Z690 AORUS rompe los récords de overclocking de Dual 8 GHz en i9-12900K CPU / DDR5 Memory🚀#Z690 #Z690TACHYON #Intel pic.twitter.com/2Ov3bIEFae
— Aorus (ES) (@aorus_es) November 3, 2021
ただ、このオーバークロックの記録についてCPU-Zの開発者でもあるDoc TB氏によるとこのデータはAlder Lake-S CPUのバグを利用した記録である可能性が高く、データ自体をReject(無効記録)とした事が明らかになりました。
Follow up. We decided to reject this entry from the CPU-Z Validator due to the extremely high probability of a bugged report. ⤵️ https://t.co/sdX9Lem3ZJ
— Doc TB (@d0cTB) November 9, 2021
CPUのエラッタで高すぎる動作クロックが観測される状況に。現在は対策済み
CPU-Zの開発者でもあるDoc TBによると、Alder Lakeについて9月頃からLN2を利用したオーバークロックの記録が出現し始めたとの事です。ただ、その後すぐに8GHzから12GHzなどあまりにも高すぎる動作クロックが記録されたデータが流れ始めたとの事です。この記録はCPU Ratioを入力してもCPU本体の動作には反映されない一方で、入力された値が正規の値として読みだされてしまうエラッタを利用した者との事です。
このエラッタは既に発表まで日数が無い時期に見つかり、99.9%のユーザーには影響がないエラッタですがIntelではこのエラッタの発生有無を検出するフラグであるFLL_OC_MODEを追加し、CPU-Zでもこのフラグ検出が行われるようになりました。
これにより、無効なデータはValidateしない措置が取られるようになり、7.5GHzから7.6GHz程度のオーバークロック記録が何度も記録されるようになりました。しかし、そんな中で突然例の8GHzを記録したデータが出現したとの事です。
CPU-Z側では0.4GHzも上回るデータが突如として現れた事から不自然と考え、データを精査したものFLL_OC_MODEなど正しいフラグが記録されていたとの事です。ただ、CPU-Zの開発者側としてはBIOSのソースコードを持っている場合、このフラグ記録を改ざんする事も可能であるとの事です。
ただ、残念ながらこの問題への対処法はCPU-Z側では打てる策が無いとの事です。
Intel側としては本当にFLL_OC_MODEフラグが適切なのか検出する方法を見つけたのですが、この対処法の問題点としては不正が行われていた場合、CPU自体がハードロックし、再起動が強要される状況になるとの事です。この仕様をCPU-Zに導入すればオーバークロック記録が不正なのかどうかより高い精度で検出できるものの、システムをクラッシュさせている事からWindows Defenderから不正なソフトとして判別されてしまう可能性があるとの事です。
Almost everyone reported that 8 GHz overclocking on Alder Lake, supported by screenshots from the CPU-Z Validator. Well, here is why it’s very unlikely that this CPU really reached 8 GHz. ⤵️
PS: I’m the developer of the CPU-Z Validator.https://t.co/c7V5xKFq7N— Doc TB (@d0cTB) November 4, 2021
GIGABYTEまたはHiCookie氏は過去にもエラッタを利用していた疑惑
Toms Hardwareによると、GIGABYTEまたはHiCookie氏のオーバークロック記録が不正だった疑惑を持たれるのは今回が初めてではないとの事です。
過去にRyzen 9 5950Xが発売された際に、GIGABYTEではX570 AORUS MasterマザーボードとRyzen 9 5950Xの組み合わせで6362.16MHzのオーバークロック記録が報告されていました。しかしこの記録はRyzen 5000シリーズのエラッタを利用しており詳細を調査すると実際には5683.94MHzでの動作が行われていたとの事で、記録が無効化されているとの事です。
Hicookie`s CPU Frequency score: 6362.16 MHz with a Ryzen 9 5950X (archive.org)
Core i9-12900Kで8.0GHzが記録されたという話はかなり高い確率で偽装された記録だったようです。
この8.0GHzのオーバークロックを達成したという話はスペインのGIGABYTE公式Twitterでも宣伝されていたことや同じ様な事をRyzen 5000シリーズ発売時にも行っていたようですのでかなり悪質さがありますね・・・
LN2オーバークロックなどはかなりニッチな市場でこのオーバークロック記録が売り上げに大きな影響を与えるとは到底考えられないのに、偽装と言うメーカーのブランド価値を毀損するリスクを冒してでもでっち上げな記録を作ったのか謎でしかありません。
事が大きくなる前にGIGABYTE公式から何か発表が欲しい所ですが、今のところ何もありません。
なお、Core i9-12900Kのオーバークロックについて、現時点での最高記録は7543.95MHz(ユーザー:elmor’s)という事でCore i9-11900Kの7334MHzよりは高い値となっていますので、オーバークロック耐性自体はそこそこと言う所のようです。
コメント